サイエンス

太陽表面の模様がなくなる現象「ブランク」が1か月で2度も出現、ミニ氷河期に向かいつつある兆候とも


太陽の表面にあらわれる黒点や、それに準ずる表面の模様は太陽の活動の活発さを示していると考えられており、過去数百年にわたって観測が続けられています。そんな中、2016年6月には太陽表面の模様が完全になくなる「ブランク(Blank)」と呼ばれる現象が観測されており、専門家の間では地球が「ミニ氷河期(小氷期)」に入ろうとしているとする見方も出ています。

10:15 AM | *The sun goes blank again during the weakest solar cycle in more than a century* — Vencore Weather
http://www.vencoreweather.com/blog/2016/6/23/1015-am-the-sun-goes-blank-again-during-the-weakest-solar-cycle-in-more-than-a-century

The sun has gone blank twice in June 2016: Mini ice age?
http://www.news.com.au/technology/science/space/the-sun-has-gone-blank-twice-this-month-this-is-what-it-means/news-story/d775ecf894ab68415ed0108ced31a4e2

「ブランク」の状態にある太陽の様子を収めた写真がこれ。まるで画像を加工したようにツルンとした状態になっていますが、これは観測された太陽の姿そのものだとのことで、ブランクが確認されたのは2011年以来およそ5年ぶりの出来事とのこと。


一方、「通常の」状態にある太陽の表面はこんな感じ。オレンジ色の明るい部分と暗い部分が点在し、表面からはフレアと呼ばれる巨大な火柱のようなものが飛び出している様子がわかります。


この現象についてブログで公表したのは、アメリカの防衛および政府関係に各種データを提供している民間企業「Vencore」の関連企業で、気象に関するデータを観測・提供している「Vencore Weather」のポール・ドリアン氏です。ドリアン氏によると、最初のブランク状態は2016年6月4日に確認され、4日間にわたってブランク状態が続きました。その後、数週間は黒点が散在する状態が続き、6月23日には再び完全なブランクの状態が現れたとのこと。太陽に出現するブランクは、これから太陽の活動が低下することを示していると考えられており、最初は数日間だけだったブランク期間が今後は数週間、数か月というふうに徐々に期間が長くなるものと考えられています。

太陽表面にあらわれる黒点の数は、周期的に増減を繰り返していることがわかっています。その周期は約9.5年から12年といわれており、直近では2014年後半に黒点の数が最も多い「黒点極大期」を迎えていました。今後は、2019年から2020年には黒点の数が少なくなる「黒点極小期」を迎えると予測されており、矢印で示した2016年はその下り坂の途中に位置するタイミングとなっています。なお、この周期は1755年から始まる活動の山を1サイクルとしてカウントされており、2016年時点では24サイクルめ(Cycle 24)の下降段階に属するものと考えられています。


1600年ごろからの400年間の黒点の様子を示したのが、NASAが作成した以下のグラフ。1650年ごろから1710年ごろまでは極端に数が少ない時期が続いていますが、これは観測ミスではなく実際に黒点の出現回数が極めて減少した時期。マウンダー極小期と呼ばれるこの時期は世界各地で厳しい寒冷化が進み、ロンドンのテムズ川が完全に凍結したほか、一年のうち夏が訪れない年が出現して作物にも大きな影響を与え、餓死する人が多く発生したとのこと。


2016年時点の太陽は黒点極小期に向かって活動を弱めていると見られているわけですが、専門家の間ではより大きな時間軸で見た活動減退期に入っているとする見方も出ています。前述のグラフを拡大してみると、2009年ごろの黒点極小期に観測された落ち込みの様子は、その1つ前の1996年ごろ、そしてさらに以前の1986年ごろに比べ、グラフが低いレベルに落ち込んでいることがわかります。


この様子は、1849年以降で黒点出現がなかった日をカウントした以下のグラフにも表れているとのこと。明るいピンク色で示したのが「サイクル24」に属する2007年・2008年・2009年のデータですが、過去の例では1サイクルあたり複数の年がランクインするケースはほとんど見られないことからも、直近の黒点極小期には太陽の活動が特に目立って弱まっていたことが示されているといいます。


太陽の活動と地球の気候変動についてはまだ解明されていない部分も多く、現在の兆候をもってそのまま「小氷期に突入する」と断言するのは早計といえますが、直近の過去の流れからは少し異なる様子を見せている点は注目すべきところかもしれません。

なお、太陽の活動によって生みだされている太陽風と磁場は、宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線をブロックする働きがあるのですが、太陽の活動低下が起こるとこれらの働きが弱くなり、地球には多くの宇宙線が到達することがわかっています。この影響で、宇宙空間を飛ぶ人工衛星が影響を受けるほか、地上でも電子機器やラジオの電波が影響を受けることになります。さらには、人体でもDNAが宇宙線によって分断されるという影響が及ぶほか、黒点極小期にはなぜか性的能力が増加することも統計から明らかになっているとのことです。

現在の太陽の様子や過去のデータは、定期的な観測を行っている以下のサイトでも詳しく見ることが可能で、6月4日前後と6月23日前後の無黒点の様子も克明に記録されていました。

宇宙天気ニュース
http://swnews.jp/

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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