自転車フレームへ不正にモーターを内蔵しているのをサーモカメラで発見

ベルギーで開催されたシクロクロス選手権に出場した19歳のベルギー人女性選手の使用した車体から隠しモーターが発見されたことが、2016年1月に大きなニュースになりました。発見されていないだけで、他の選手もモーターを自転車に内蔵しているのではないか？というウワサは後を絶たず、そんなウワサを検証すべく、イタリアの新聞社とフランスのテレビ番組が「自転車レースをサーモカメラで撮影する」という方法で調査を行いました。

Secret Thermal Camera Footage Allegedly Shows Seven Pro Cyclists Using Illegal Motors In Bikes
http://fittish.deadspin.com/secret-thermal-camera-footage-allegedly-shows-seven-pro-1771492666

2016年1月に隠しモーターが選手の自転車から発見されたことに関して、「自転車にこっそり取り付けられる電動アシスト」がどんな感じで取り付けられていたのかは、以下の記事から確認できます。

ロードバイクに「隠しモーター」をこっそり取り付けるとこんな感じ - GIGAZINE

事態を重く見たUCI(国際自転車競技連盟)は大きな試合の前には選手の自転車を定期的にスキャンするようになりましたが、記事作成時点で、UCIの事前チェックによってモーターを搭載した自転車は見つかっていません。そんな中、イタリアの新聞社Corriere della Seraとフランスのテレビ番組Stade 2が協力して独自に調査を行った結果、イタリアで行われた2つのレースに出場した7人の選手が、いわゆる「機材ドーピング」をしていたことがわかりました。

VIDEO. Un moteur dans le vélo - YouTube


まず番組が訪れたのはイタリアで1つ1万ユーロ(約120万円)の自転車用モーターを作るAlessandro Bartoli氏のもと。以下の自転車は特におかしなところがないように見えますが、フレームの中にモーターが仕込まれているとのことです。

モーターはこんな感じ。

誰も自転車をこいでいないにも関わらず、モーター音を立てながらペダルが回転していました。

モーター内蔵の自転車を入手した番組は、まず「サーモカメラを使ってモーター内蔵の自転車の様子を見てみると、どんな感じに見えるのか？」ということを実験。

自転車をこいでいる男性。特に異常はないように見えますが……

足の位置が変わると、フレームの一部の温度が極端に高くなっているのがわかります。これが、モーターが内蔵されている場所。

ということで、実際にレースの様子をサーモカメラで撮影。

走ってくる選手の多くは、体や、地面との摩擦があるホイール部分の温度が少し上がっているだけですが……

一部の選手が乗る自転車が、不自然に高温になっていることをサーモカメラが捉えました。

これをサーモカメラを開発するFLIRのエンジニアに見てもらったところ……

スプロケットにモーターが、フレームの部分にバッテリーが内蔵されているのだろう、という推論に至ります。サーモカメラを使ってレースの選手を撮影した結果、5人の選手が自転車にモーターを内蔵していたとのこと。

2016年1月に機材ドーピングが発覚してから、UCIは大会の前に自転車のスキャンを行っていますが、巧妙に隠されたモーターはなかなか発見されません。

また、番組はブダペストのエンジニアVarjas氏にも取材を敢行。Varjas氏はプロの選手に電動ホイールを販売しているというウワサのある人物です。

Stefano Vargas氏が作っているのはより緻密な隠しモーターの仕組みで、リアホイールの中にネオジム磁石を仕込むというもの。

シート下のフレームにバッテリーとコイルを内蔵し……

電磁力でパワーを生み出しているわけです。

Varjas氏にサーモカメラが捉えた映像を見てもらったところ、2つのレースで、2人の選手がこの方法で機材ドーピングを行っている疑いがありました。なお、Varjas氏の販売する電気ホイールのセットは5万ドル(約550万円)なので、よっぽど稼ぎのいい一部の選手しか購入できません。

Varjas氏は「電磁気の探知機は高価だが、UCIの現在の検知方法では機材ドーピングを見つけられない」と語っています。