メモ

ドローンの「殺す対象リスト」に名前が載るというのはどんなことか当事者が語る


いわゆる「テロ組織」の撲滅に向けて、無人で空を飛んでミサイル攻撃を加えるドローン(無人航空機)が中東地域に多く投入されていると言われています。そんな「殺人ドローン」の標的としてリストに掲載されていたという男性がイギリスのラジオ番組に登場し、4度にわたるドローンによる攻撃の実態や、問題解決に向けた提案の声をあげています。

I'm on the Kill List. This is what it feels like to be hunted by drones | Voices | The Independent
http://www.independent.co.uk/voices/i-am-on-the-us-kill-list-this-is-what-it-feels-like-to-be-hunted-by-drones-a6980141.html

Malik Jalal: Man on 'Kill List' appears on BBC radio asking the UK Government not to kill him | UK Politics | News | The Independent
http://www.independent.co.uk/news/uk/politics/malik-jalal-man-on-kill-list-appears-on-bbc-radio-asking-the-uk-government-not-to-kill-him-a6979626.html

「私はいわゆる『キル・リスト』に名前が載っています」と語ったのは、パキスタン北西部の辺境でアフガニスタンとの国境沿いにあるワズィーリスターン地域在住のマリク・ジャラル(Malik Jalal)氏。イギリスを訪れたジャラル氏は、BBCラジオで自らの置かれた環境を語りました。

Listen 2 @BBCr4today @ 0830. @Reprieve client Malik Jalal on why he is trying to stop US from killing him. #drones pic.twitter.com/a8FP5K39OO

— Jennifer Gibson (@jennifermgibson)

ジャラル氏は地域の平和を実現するための指導者による組織「北ワズィーリスターン平和委員会 (North Waziristan Peace Committee: NWPC)」の指導者の1人。NWPCは現地のタリバンと権力者との衝突を避けることに取り組む、パキスタン政府公認の組織です。

「キル・リスト」は、アメリカ軍などが運用している無人航空機「プレデター・ドローン」の標的のリストであり、本来は非公表の情報。ジャラル氏は、その情報を誰から得たかは言えないものの、自分の名前がリストに含まれていて、これまでに4度にわたって狙われたことを明かしました。

最初の攻撃は2010年1月、自分の車を甥のサリムラ氏に貸し、タイヤチェックとオイル交換のために出かけていたときに発生したとのこと。その日は晴れで、上空でドローンが旋回している様子も見えていたそうです。サリムラ氏が車の中でメカニックと話をしているとき、後ろを走っていた自動車が攻撃を受けて突如爆発。車内に乗っていた現地の炭鉱作業員4人は全員死亡し、重傷を負ったサリムラ氏も31日間にわたって入院を強いられたとのこと。ジャラル氏の自動車を標的にした攻撃だったわけですが、実際には甥のサリムラ氏が乗っており、死亡した炭坑作業員はいずれも関係のない人物だったそうです。


2度目の攻撃は、2010年9月に発生。ジャラル氏は組織の長が集まる会議「ジルガ (Jirga)」に参加するために赤色のトヨタ・ハイラックスを運転していたのですが、同じ色でほとんど見分けのつかない自動車が40メートル後方を走っていたとのこと。すると、ある街にさしかかった瞬間、後方を走っていたその車が攻撃を受けて爆発。ジャラル氏はその場から逃げおおせましたが、攻撃を受けた車に乗っていた4人は即死だったそうです。

最初は「その車に乗っていたのは軍の関係者では?」と考えたジャラル氏でしたが、実際には現地に住む一般の住民だったことが判明。良く似た車が狙われたということで、ジャラル氏は自らがターゲットになっていることを意識するようになったとのこと。


そして3度目の攻撃が2010年10月6日に発生。友人のサリム・カーン氏から夕食の誘いを受けて現地に向かい、電話で到着を告げた直後、建物がミサイルの攻撃を受けたとのこと。ジャラル氏は攻撃を免れたとのことですが、子どもを含む3名が死亡。いずれも、過激派などの活動には無関係な人物ばかりだったそうです。

その4か月後の2011年3月27日、アメリカ軍のミサイルが、ジャラル氏も参加する予定になっていた会議「ジルガ」の会場を攻撃したとのこと。現地にいたジャラル氏の友人や一般市民が攻撃に巻き込まれ、40人以上が殺されるという事態になったそうです。

By Irish Typepad

その日、ジャラル氏は後悔と怒りの念にさいなまれ、攻撃に対する報復を誓ったとのことですが、同時に、はたしてどのようにして行動に出ればいいのか分からなかったとのこと。地域の指導者であるジャラル氏ですが、人々を守るための手段が何もないことを痛感するに至ったそうです。

一連の攻撃の後、ジャラル氏は自動車を実際の目的地よりも離れた場所に停め、他の人が攻撃の巻き添えを受けないようにしたり、家族と離れて眠るようにしているとのこと。しかしある日、ジャラル氏の6歳の息子が、上空を飛ぶドローンの音が恐ろしくて眠れないために一緒に寝ようと近寄ってきました。ジャラル氏は「子どもはターゲットにならないから大丈夫だよ」となだめようとしたのですが、息子は「ドローンは子どもだって殺すよ」とジャラル氏の言葉を受け入れようとしなかったとのこと。この言葉を聞いたジャラル氏は、もう家族にこんな暮らしをさせるわけにはいかないと思うに至ったとのこと。

ジャラル氏は「アメリカ軍は私をドローン戦争の標的だと考えています。それはたしかに正解です。彼らはターゲットとなる人を選び、子どもを含む罪のない9人の命を奪うという、言葉に尽くせないほどの犯罪を犯しています。アメリカ軍の作戦は、事態を収めようとしている人を攻撃して過敏に反応させているという、愚かともいえる犯罪行為です」と、怒りの声をBBCの中で語っています。ジャラル氏はまた、「アメリカ軍などの軍隊は、NWPCはテロ行為の最前線であり、パキスタン・タリバンのための居場所を提供していると考えているようですが、それは誤りです。ワズィーリスターンに訪れたこともないのに、なぜそんなことが分かるのでしょう?」と、所属する組織とテロ行為との関連を否定しています。

By Morning Calm Weekly Newspaper Installation Management Command, U.S. Army

そしてジャラル氏は、「西欧諸国が考える『テロリストとの交渉を行うべきではない』という考えは甘いといえます。これまで、話し合いなしにテロリストが矛を収めたことは皆無です。北アイルランドで活動していたIRA (アイルランド共和軍)のことを思いだしてください。かつてはイギリスの首相を殺害しようとしましたが、現在では議会の一員であり、和平合意に達しています。このことからも、殺し合いではなく、話し合いが重要なことであると言えます」と語り、一方的に攻撃を加えるのではなく、テロの背景を含めた話し合いを行うことの重要性を語っています。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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