2015年の科学の躍進を4分半で解説したムービー「Breakthrough of the Year 2015」

アメリカ科学振興協会によって発行されているScience誌が、読者投票によって決定された「2015年の最も偉大な躍進」を発表しました。ムービーでは読者投票の1位となった研究の内容が、次点となった9つの研究とともに解説されています。

And Science’s Breakthrough of the Year is … | Science/AAAS | News
http://news.sciencemag.org/scientific-community/2015/12/and-science-s-breakthrough-year

ムービーは以下から確認できます。

Breakthrough of the Year 2015 - YouTube

まずは惜しくも読者投票1位を逃し、次点となった研究の解説から。登場したのは酵母を使って複数の遺伝子を統合させる技術。

遺伝子操作された酵母があればアヘンやヘロインを自作できるのではと危惧されていますが……

一方で、砂糖を強力な麻薬性鎮痛剤に変えることも可能です。

続いての功績はヒト属新種の発見について。2013年に南アフリカのアマチュア探検家が洞窟の奥深くに入っていったところ……

ヒト族と見られる骨を発見。

持ち帰った骨について研究が行われ、2015年9月にヒト族の絶滅種である「ホモ・ナレディ」であることが発表されました。

また、心理学研究者のグループが直近の心理学研究論文100本の再現を試みたところ、実験結果を再現できたの39本であったとのこと。元の報告が間違っていてたとは必ずしも言えませんが、科学分野では再現性に関する問題が多く残されていることが明らかにされました。

アメリカ・ワシントン州ケネウィックでは1996年に先史時代の人骨が発見されました。

ケネウィック人と呼ばれた人骨はヨーロッパ人なのかアメリカ大陸の先住民なのかで論争を巻き起こします。

もし発見された骨がアメリカ大陸の先住民のものでなければ、ケネウィック人が正真正銘の先住民である、として大きな話題となったわけですが、DNA調査によって2015年7月に先住民であることが発表されました。

エボラ出血熱のワクチンが開発されたのも、2015年科学の大きな功績です。

2014年3月にギニア南東部の小さな村で感染者が発見されてから瞬く間に拡大していったエボラ出血熱ですが、さまざまな研究機関が総力をあげ、臨床試験での効果が100％のワクチン「VSV-ZEBOV」が開発されたことで、事態は収束していきました。

これまで「リンパ系は脳内には存在しない」という考えが常識とされていましたが、2015年6月に発表された論文によって、350年にわたる医学の常識が覆ることに。

「脳にリンパ系は存在していないのに、なぜ悪性リンパ腫のような脳の病気が存在するのだ」という点は長年の謎でしたが、バージニア医科大学が偶然発見した脳のリンパ管のおかげで、謎が解けたわけです。

2015年7月に探査機「ニューホライズン」が冥王星に最接近し、鮮明な写真を撮影することに成功。

氷に覆われた地表が明らかにされました。

また、衛星のニクスやヒドラなども観測されました。

2015年は40年近く論争となっているマントル・プルームについても新たに論文が発表されました。過去に起こった273の大きな地震をモデル化して分析した結果、28のプル―ムの存在が明らかに。その多くはホットスポットの下にあったそうです。

また、1つの粒子が一瞬にして遠くにある別の粒子に影響を及ぼす、という遠隔作用が実際に存在することも確認されました。

ジョン・スチュワート・ベルが提唱したベルの不等式を具体化した実験が行われたわけです。

そして、2015年で最も発明的であったのはゲノム編集ツールの「CRISPR-Cas9」

CRISPR-Cas9はDNA二本鎖を切断して、ゲノム配列の任意の場所を削除・置換・挿入できる技術。

ゲノム編集でマラリア原虫に耐性を持つ蚊を生み出し、抗マラリア耐性の遺伝子を99.5％という高い確率で遺伝させていくことにも成功しており、マラリア被害が撲滅される日も近いものと見られています。

既に動物実験が行われ、サルでの成功例もありますが、倫理的な問題から人間の遺伝子操作に対しては反対の声が世界中から上がっているという状況です。