結婚相手に肯定・否定など相反する感情を持っていると健康に打撃を与える可能性あり

by Sean Molin

人は結婚することで未婚の人々よりも健康で長生きできると言われていますが、新しい研究によって、健康上の利益を得るためには、ただ結婚すればいいだけでなく「結婚の質」が大事になってくることが分かっています。結婚の質とは一体何で、どのような夫婦であれば健康的に長生きでき、どのような夫婦関係が健康に打撃を与えるのか、The New York Timesがまとめています。

The Ambivalent Marriage Takes a Toll on Health - The New York Times
http://well.blogs.nytimes.com/2015/10/26/the-ambivalent-marriage-takes-a-toll-on-health/

アメリカ・ユタ州の末日聖徒イエス・キリスト教会が運営するブリガムヤング大学は結婚がもたらす健康上のメリットについて研究を行っており、現在までにも「しっかりとした考えに基づき結婚したカップルは、未婚のカップルに比べてより健康に長生きできる」ということを明らかにしてきました。では結婚はただすればいいものなのか？ということで、さらに調査を進め、新たに「互いのサポートレベル、暖かさ、関係における支配などが夫婦の健康にどのような影響を与えるか」ということを調査しました。

「これまでの研究は夫婦の関係を表面的に測定していた」と語るのは研究を率いたウェンディ・C・バーミンガム教授。既存の研究は一次元的な質問を用いて調査を行っていたが、それでは実際の関係は測れない、というのがバーミンガム教授の考えです。

最新の研究では上記を踏まえ、ソルトレイクシティ在住の異性間カップル94組を対象に、互いが与え合うネガティブあるいはポジティブな影響について調べられました。被験者となった夫婦は「結婚してから1年」という人たちから「結婚生活が41年」という人たちまでさまざまで、10年以上結婚していたのは全体のうち15％ほど。全体としての平均結婚年数は5.4年だったとのことです。また、いずれの夫婦も共働きで、子どもや同居人などは存在せず、純粋に夫婦が互いに与える影響だけが調べられました。

by Photoflurry

被験者である男女はそれぞれ、「配偶者が助言や理解を必要としている時に自分が肯定的であるか」や「自分が助言や理解を必要としている時に配偶者が肯定的であるか」ということが質問され、反対に「日常的に相手に対して否定的であるか」ということも質問されました。その結果、夫婦全体のうち23％が相手に対して否定的でない「支え合う夫婦」であるものの、残りの77％は相手に対して肯定的な気持ちと否定的な気持ちが混ざり合った両面的な感情を持ち合わせている、という結論に。

次に、研究者らは被験者である男女の血圧を朝から夜までモニタリングしました。血圧を測るタイミングは1時間に2回、ランダムで、その時被験者が何をしていて、どんな気持ちで、配偶者に対してどのような感情を持っていたかも日記を使って正確に記録されました。

すると、互いに対して否定的・肯定的な感情が入り交じっている夫婦は一貫して基準となる値よりも血圧が高くなっており、「結婚によってより健康になる」という傾向が見られないことが判明。夫婦関係は複雑であり、結婚が人々に対して健康をもたらすとは一概に言えないようです。

by Evan Forester

もちろん今回の実験は同じ都市に住む、白人を中心とした異性間のカップルを対象にしており、結果は限定的と言えます。また、高血圧が「不健康」と直接結びつくわけでもありません。

しかし、ブリガムヤング大学と同様の研究結果は他にも存在します。ユタ大学の研究では、夫婦間において支配的な関係が存在したり暖かさがなかったりすることは、喫煙並みに心臓に負担をかけるということが分かっています。また、オハイオ州立大学の研究では、敵対関係にあり論争を繰り広げている夫婦はそうでない夫婦に比べて傷の治りが遅いという結果も出ているとのこと。

研究者の中には「常に適度にサポートすることと、サポートする時があったりなかったりすることは、全く意味合いが異なります。誰かが『自分をサポートしていない』という場合であれば、人はその状態に順応できますが、相手の態度がその時々で変化している場合、状況はより困難です」と語る人もいます。

by D. Sarle

しかし、今回の研究結果が明らかになったからと言って、パニックになることはない、とのこと。バージニア大学のジェームズ・A・コーン教授は「結婚は株式市場のようなもので、短期的に見ると強い市場や弱い市場がありますが、長期的に見るとだいたいの投資は成果を上げるものです」と語りました。

なお、自分や配偶者が否定的・肯定的な感情が入り交じった夫婦であるかどうかは以下のページの質問に答えることで調べられます。

Do You Have an Ambivalent Marriage? - The New York Times
http://www.nytimes.com/interactive/2015/10/23/health/ambivalence-test-quiz.html

質問は以下の通り。

01：あなたがわくわくしていたり幸せを感じている時、または何かに自信を持っている時、配偶者はどのくらい肯定的ですか？

02：あなたがわくわくしていたり幸せを感じている時、または何かに自信を持っている時、配偶者はどのくらい否定的ですか？

03：日々のやり取りや会話・活動の中で、配偶者はどのくらい肯定的ですか？

04：日々のやり取りや会話・活動の中で、配偶者はどのくらい否定的ですか？

05：あなたが助言や理解、やさしさを必要としているとき、配偶者はどのくらい肯定的ですか？

06：あなたが助言や理解、やさしさを必要としているとき、配偶者はどのくらい否定的ですか？

07：あなたの配偶者がものすごくわくわくしていたり、幸せを感じていたり、何かに自信を持っている時、あなたの反応はどのくらい肯定的ですか？

08：あなたの配偶者がものすごくわくわくしていたり、幸せを感じていたり、何かに自信を持っている時、あなたの反応はどのくらい否定的ですか？

質問に6段階のチェックマークで答えたら、「SEE MY SCORE」というボタンが現れるので、これを押せば結果を見られるようになっています。