インタビュー

「今一番はまっているのは虚淵玄」と語る3DCGアニメ「RWBY」のクリエイターが来日したので根掘り葉掘り聞いてきました


RWBY(ルビー)」はアメリカの新進気鋭の映像スタジオ「Rooster Teeth Productions」が制作する3DCGウェブアニメーションで、YouTubeで公開するやいなやじわじわと人気を伸ばし、Volume1の合計再生回数が7000万回(シリーズ・各サイト累計だと1億回以上)を突破したという驚異の作品です。日本の漫画やアニメの影響が随所に登場し、いわゆるアメリカのアニメーションとは異なる作風の「RWBY」は、日本でも多くのファンを獲得し、ついに全編日本語化されBlu-ray&DVDの発売が決定しました。また、発売に先駆けて劇場での先行上映も決まっています。その「RWBY」のクリエイターが来日しているとのことなので、実際に会って根掘り葉掘り聞いてきました。

3DCGアニメ「RWBY」公式サイト
http://rwby.jp/

「RWBY Volume1(日本語吹き替え版)」の予告編は以下のムービーから確認可能です。

【11/14~ 劇場上映決定】RWBY Volume1 C88 Japanese dub Trailer (日本語吹き替え版) - YouTube


インタビューに応えてくれたのは、Rooster Teeth Productionsのグレイ・ハドック氏とアラン・アブダイン氏の2人です。


GIGAZINE(以下、G):
本日はよろしくお願いします。早速ですが、お二人が「RWBY」にどのように関わっているのか、具体的に何を担当しているのか、詳しく教えてください。

アラン・アブダイン氏(以下、アブダイン):
グレイの方が僕より「RWBY」にとって重要な仕事を担当しているので、私から先にお話しします(笑)。 私は「RWBY」を制作した映像会社Rooster Teeth Productionsで販売やビジネスを担当していて、「RWBY」では日本のワーナーエンターテイメントジャパンとRooster Teeth Productionsのビジネスを円滑に進めるべく業務を担当しています。

グレイ・ハドック氏(以下、ハドック):
私はRooster Teeth Productionsのアニメーション部門の部門長をやっていて、「RWBY」のVolume1では編集や視覚効果を主に担当しました。Volume2では、それに加えてプロデューサーも担当し、Volume3(現地時間2015年10月24日からYouTube他にて配信開始)では共同監督を務め、作品全体としてはスーパーバイザー的なことをやらせていただいています。また、「RWBY」に登場するローマン・トーチウィックというキャラクターの声も担当しています。

G:
ありがとうございます。「RWBY」はキャラクターデザインなど、日本のアニメと共通する部分が多く、アメリカで作られるアニメーション作品とは違った作品になっており、なぜアメリカで「RWBY」のような作品が生まれたのか非常に気になるところです。「RWBY」のプロジェクトが始まったきっかけや経緯を詳しく聞かせてください。

ハドック:
私と「RWBY Volume1」の監督であるモンティ・オウム、共同監督のケリー・ショウクロスと脚本のマイルズ・ルナは、「RWBY」の前に「Red vs. Blue」という映像作品のシーズン10を一緒に制作していました。制作中はとても忙しくて毎日疲れきっていたのですが、ある日の朝、モンティが「昨日新しいアイデアを思いついたんだ!」とスタッフを集めて突然話し始めたんです。それは「色のコードネームを持つ4人の少女がバトルを繰り広げる」という内容で、まさにRWBYの根本となる設定でした。


G:
ほうほう。

ハドック:
モンティのアイデアは日本のアニメからインスパイアされている部分が多くあって、日本のアニメが大好きな僕たちスタッフ一同はすぐに「面白いアイデアだ!」と気に入り、いつ作ることができるのだろうかとワクワクしたのを覚えています。最初は発案者のモンティがアイデアを具現化できるようにスタッフでサポートしていましたね。ただし、モンティは「RWBY」の第1弾予告編をほとんど1人で作り上げたんです。その予告編と、スタッフみんなで作り上げたストーリー案を会社の上層部にプレゼンテーションしたところ、経営陣から承認されて正式に「RWBY」を作ることになりました。

G:
なるほど。

ハドック:
こういった経緯があって、先ほどお話しした「Red vs. Blue」のシーズン10が終了するやいなや「RWBY Volume1」の制作が始まったという感じです。

G:
オウム氏が持ち込んだアイデア、というのは具体的な設定などが決まっていたものだったんでしょうか?それとも、もっと抽象的な感じだったのでしょうか?

ハドック:
作品に関する具体的なことはほとんど決まっていませんでしたが、モンティの口調から想像するに、すでに作品のビジョンを頭の中に描いていたと思います。モンティがどうやって「RWBY」のアイデアを思いついたのかはわかりません。もしかしたら、眠っているときにすごい夢を見ていたのかもしれないですね。


G:
オウム氏のアイデアを聞いたときは、実際に正式なプロジェクトとしてスタートすることをある程度考えたのでしょうか?

ハドック:
いえ、このような事になるとはわからなかったですね。実際にこのようなアニメ作品の制作に携われるとは夢にも思っていませんでした。もちろん、「RWBY」のような作品を作れる可能性については、考えるだけで興奮しましたが、まさかこのような壮大なプロジェクトになるとは思っていなかったのが正直なところです。

G:
なるほど。では、制作チームのメンバーは何を基準にして選ばれたのでしょうか?また、制作チームの人数はどれくらいいたのでしょうか?

ハドック:
制作チームの人選は、ほとんどが「Red vs. Blue」のスタッフをスライドさせた形です。ただし、モンティが監督を担当したのは「RWBY」が初めて。Red vs. Blueではカスタムアニメーション制作を務めていましたからね。モンティのアニメーションスタイルはかなり独創的で、ほかのスタッフがほとんど使ったことがないソフトウェアを好んで使っていました。制作チームは決して大きくなく、全員合わせて15~20人くらいでアニメーターは10人以下だったと思います。

G:
オウム氏が使っていたソフトウェアの具体的な製品名を教えていただけますか?

ハドック:
モンティが使っていたのは「Poser」というソフトウェアで、アメリカのアニメーション業界ではそこまで一般的ではないものです。Poserは他の3DCGソフトウェアにはない、キャラクターの動きやパフォーマンスなどをサポートする機能があるのですが、「RWBY」の制作当時にPoserを使いこなせるアニメーターは非常に少なかった。でも、モンティは長い間Poserを使っていたので、作業がすごく早かったんですね。


G:
作品の中で「この部分は難しいだろうな」と思っていたけれども、結果的に「予想以上にうまくいった」というシーンはありますか?

ハドック:
「RWBY Volume1」で一番大変だったのはスケジュールですね。エピソードの後半になればなるほどスケジュール通りに完成させるのが難しくなっていきました。アップロード予定時間の数時間前にまだ完成していない、といったこともありました。最終話に近いエピソードに大きなイベントを登場させたかったのもありますし、最後のバトルのシーンではモンティがいろんなアイデアを思いついたおかげで、すごく大変でしたよ。でも満足のいくバトルシーンを作れたと思っています。

G:
1話あたりの制作時間はどれくらいだったのでしょうか?

ハドック:
Volume1の後半は、モデリングの時間を除くと1話あたりだいたい2~3週間くらいかけていましたね。というよりか、2~3週間しかなかったという感じかな。Rooster Teeth Productionsでは「RWBY」のような完全オリジナル作品を作ったことがなかったので制作期間中は大変でしたが、学んだことがたくさんありました。エピソードごとに僕たちスタッフも「RWBY」と一緒に成長するような感じで、すごく貴重な経験になりましたね。

G:
「RWBY」のキャラクターデザインには日本のアニメにインスパイアされている部分が多く見られます。「RWBY」の制作に関して影響を受けた日本のアニメ作品はありますか?

ハドック:
たくさんありますよ。例えば、アクションシーンは「ブラック ロックシューター」の影響を受けていますし、ストーリーテリングだと「天元突破グレンラガン」の影響を受けています。学園モノという設定は、日本のアニメでよく取り扱われる題材ですしね。

G:
「RWBY」の中でアメリカ人だからこそ表現できたことというのはありますか?

ハドック:
物語の大きな流れは西洋というか、アメリカのストーリーテリングの要素が多く含まれていると思います。

G:
ハドックさんが人生で初めて見た日本のアニメは何でしょうか?

ハドック:
一番最初に見たアニメは「科学忍者隊ガッチャマン」です。あと、「宇宙戦艦ヤマト」や「マッハGoGoGo」も見ていました。そこからいったんアニメから離れたのですが、高校生になったくらいでもう一度はまりまして。そのときは、ガンダムシリーズやファイブスター物語、ダーティペアを見ていましたね。それ以降は、手当たり次第に見まくっていましたよ。RWBYの制作スタッフはほとんどの人が最新のアニメをチェックしていいて、今年の作品でスタッフに人気なのは「ゲート」ですね。僕自身は渡辺信一郎監督の大ファンなので、「カウボーイビバップ」や「サムライチャンプルー」「坂道のアポロン」といった作品が大好きです。でも今一番はまっているのは虚淵玄さんの作品。1年ぐらい前に虚淵さんの存在を知って、それから「PSYCHO-PASS サイコパス」「翠星のガルガンティア」「アルドノア・ゼロ」「魔法少女まどか☆マギカ」などを見ました。

G:
いろんな作品を見ていらっしゃるんですね。RWBYは公開当初にアメリカで大きな反響を得ましたが、日本人ではなくアメリカ人が作った日本のアニメっぽいタッチの作品が国内で大きな人気を得ることは予想していたことでしょうか?

ハドック:
Rooster Teeth Productionsでは「自分たちがかっこいいと思ったものを作れば、それをかっこいいと思って見てくれる人がどこかにいるはず」という信念のようなものがありまして。ウェブで作品を公開することで、自分たちの作品をかっこいいと思ってくれるファンの人たちとつながることができました。これはインターネット特有の利点だと思います。ただし、公開した当初はアメリカ国内の作品で「RWBY」のようなアニメがなかったので、見てくれる人が実際にいるのかどうか不安に思うこともありました。誰かが見てくれるはず、という希望は持っていましたが、確信は持てなかったというのが正直なところです。

G:
でも実際にはアメリカで大きな人気を得て、日本でも「RWBY」を視聴する人が出てきました。

ハドック:
そうですね、大変ありがたいことです。エピソードをリリースしていくごとに日本からのアクセスが増えてきてものすごく驚きました。日本の視聴者に受け入れられたことはうれしいですし、大変光栄に思っていますが、日本に「RWBY」のファンがいるなんて今でも信じられないくらいです。日本のファンの中にはRWBYの二次創作を作ってくれる人がいて、仕事に疲れたときはpixivで二次創作の作品を見てリフレッシュするのが僕の日課です。ずーっと見ていると、驚くほど素晴らしい作品に出会うことがあって感動することもあります。こういうときにファンとつながっているんだな、と実感します。

G:
そうなんですか!ハドックさんが見ているとわかったら日本のファンも喜ぶのではないでしょうか。日本で多くのファンを得たことが今回の「RWBY Volume1日本語吹き替え版」のDVD&Blu-ray化や劇場先行上映につながったと思うのですが、日本でのリリースに至るまでの経緯を教えていただけますか?

アブダイン:
あるとき見慣れないアドレスからメールがきて、開けてみるとワーナーエンターテイメントジャパンからの「RWBYを取り巻く状況」や「日本でのリリース予定」に関する問い合わせだったんです。正直に言うと、他にも国外からのオファーがきていたのですが、ワーナージャパンという大企業からのコンタクトはものすごく興奮しましたね。


ハドック:
ワーナージャパンから問い合わせがあったことを僕を含めた制作スタッフが聞いたときは一瞬「え!?」となりましたが、「そんなことあるわけないよ!」と思って信じませんでした。

アブダイン:
もちろん僕もすごく驚きましたよ。日本の市場から興味を抱かれることなんて、正直なところ全く考えていませんでしたから。YouTubeの視聴回数やpixivでの二次創作しか日本からの反応がない中で、ワーナージャパンという企業から日本でのリリースに関する真剣な問い合わせを受けたことはRooster Teeth Productionsとしても非常にうれしいことでした。

G:
日本語版のキャスティングについて、「RWBY」の制作スタッフから何らかのリクエストはあったのでしょうか?

ハドック:
私たちからキャスティングについてリクエストしたことは一切ありません。ワーナージャパンから送られてきたキャスティングの候補リストを見たときにパーティーを開くくらいうれしかったですからね。いつもアニメで見ている実力のある方々がリストに挙げられていたこともうれしかった理由の1つですが、本当に感激したのは、そのリストからワーナージャパンが私たちの作品やキャラクターをものすごく理解してくれていることが伝わってきたからです。最初に候補リストを受け取ったときは、制作スタッフ全員を集めてリストの上から順番に名前を読み上げていったんですよ。1人1人の名前を読み上げるたびに、「えー!昨日アニメでみたあの人が!?」「え!?それってあの人じゃないですか!?」といった具合にみんな絶叫して喜んでいました(笑)

RWBYには物語の中心となる4人の少女が登場します。これは「赤ずきん」をモチーフとするルビー・ローズというキャラクターで早見沙織さんが声を担当。


「白雪姫」をモチーフとするワイス・シュニーは日笠陽子さんが演じます。


「美女と野獣」をモチーフとし、黒がメインカラーのブレイク・ベラドンナは嶋村侑さんが声を担当。


「3匹のくま」のゴルディロックスをモチーフとするヤン・シャオロンは小清水亜美さんが演じます。


ハドック:
僕は日本のアニメの英語吹き替え版で声を担当させてもらうことがあって、以前に三木眞一郎さんが演じるキャラクターの吹き替えをやらせていただいたことがあるんですね。その三木さんが、僕が「RWBY」で担当しているローマン・トーチウィックの声を担当することに決まって、本当にびっくりしたというか、信じられないことです。

G:
ものすごい偶然ですね。では、実際に日本語吹き替え版を見た感想はどうでしたか?

ハドック:
数週間前に日本語吹き替え版を見ましたが、完璧な完成度でした。「RWBY」のキャラクターたちが日本語で話しているのを聞くと、本当のアニメみたいに思えました。

G:
日本では「RWBY」を見たことがない人も多くいます。初めて「RWBY Volume1」を見る人にはどんなところに注目して見て欲しいですか?

ハドック:
クレイジーなアクションとキャラクター同士の会話ですね。後は、コメディタッチのシーンからすごくシリアスなシーンに切り替わるところかな。この部分は日本のアニメの影響を特に受けている部分ですから、日本の方にも注目してもらいたいです。

G:
「RWBY」のファンには日本語吹き替え版が出るのを待ち望んでいた人が大勢いるはずです。最後にそういったファンの人たちへのメッセージをお願いします。

ハドック:
本当に長い間待っていただいてありがとうございます。みなさんが早い段階から興味をもってくれたことが、日本でのリリースにつながっているので感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。

アブダイン:
ファンのコミュニティというのは、「RWBY」にとってもRooster Teeth Productionsにとってもすごく大事なことです。日本のファンの方々がコミュニティを作って私たちの作品をサポートしていただいているのは、本当に感謝しています。


G:
本日はありがとうございました。

なお、「RWBY Volume1」のDVD&Blu-rayは2015年12月9日から、それぞれ税抜4800円、税抜5800円で発売予定。


「オリジナルサウンドトラック SCORE ALBUM(CD2枚組)」「ロワ・ジュン氏描き下ろしオリジナルイラスト プレミアムアウターケース」「グレイ・ハドック氏のインタビューなどを収録したブックレット」「イラストポストカード 30種」を特典としてゲットできる「RWBY Volume1 初回生産限定版Blu-ray」も税抜8000円で発売予定です。RWBYのオリジナルサウンドトラック「RWBY Volume1 Original Soundtrack VOCAL ALBUM」は2015年11月11日に税抜2500円で発売予定。


また、新宿ピカデリー/シネ・リーブル池袋/109シネマズ川崎/109シネマズ名古屋/なんばパークスシネマ/MOVIX京都の全6劇場で、「RWBY」の先行イベント上映が2015年11月14日からスタート。チケットは2015年10月17日から発売が開始されていて、一般券が税込1500円、モンティ・オウム氏が生前に描いたイラストを使用した数量限定の4枚つづり券が税込6000円となっています。


数量限定の4枚つづり券を購入した人には「特製A4クリアファイル」が特典としてプレゼント。


さらに、「RWBY Volume1」の劇場限定版Blu-rayも税抜6000円で発売決定。


劇場内のみでの限定発売になりますが、「クマ氏描き下ろし特製スリープケース」「特製ポストカード“Dry Brush”4種封入」が特典として同梱されます。


そして11月19日発売の「ウルトラジャンプ」にて、三輪士郎氏が本編未登場の前日譚を描く「RWBY」の“MANGA”がスタートします。

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in インタビュー,   動画,   アニメ, Posted by darkhorse_log

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