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CEATEC JAPAN 2015プレスデーの会場で見つけた面白そうなものまとめ


2015年10月7日(水)から10月10日(土)までの4日間にわたり「CEATEC JAPAN 2015」が千葉県の幕張メッセで開催されています。GIGAZINEでは開催前日の10月6日にプレス向けに公開された「メディアコンベンション」で会場に潜入して記事を掲載していますが、それ以外に会場のあちこちで見つけた面白そうなものをまとめてみました。

CEATEC JAPAN 2015 ( シーテック ジャパン 公式サイト )
http://www.ceatec.com/ja/

◆ispace
ベンチャー&ユニバーシティエリアにあるispaceのブースには、世界16チームで月面ロボット探査を競う総額3000万ドル(約36億円)の国際賞金レース「Google Lunar XPRIZE」で、トップ5入りを果たしている民間チーム「HAKUTO」が開発した2輪ローバー「Tetris(テトリス)」が出展されていました。


Tetrisは片手でも持てるほど軽量かつ丈夫なCFRP(炭素繊維強化プラスチック)をボディに採用。


さらに月面からの熱が伝わらない素材のホイールをつけているため、昼は100度以上、夜はマイナス150度以下にもなる月面環境にも耐えられるつくりで、搭載している360度カメラにより、月面の写真と動画を高画質で地球へ送信可能とのこと。また、HAKUTOの最終目標は「月面の縦孔探査」であり、2台の探査ロボットを組み合わせることで、人類が長期滞在できる可能性のある、月面の縦穴の秘密が解き明かされるかもしれません。


「Google Lunar XPRIZEでは勝ち残れますか?」と質問したところ、「技術的にはナンバー1なので、いけると思います」と心強い返答。夢のあるミッションを現実にしようとしているHAKUTOは、以下のウェブサイトで応援を募っています。

HAKUTO | 日本発、月面探査を目指す民間宇宙開発チーム
http://team-hakuto.jp/


情報処理推進機構(IPA)
IPAの展示ブースでは、「ブースプレゼン/SEC先端技術入門ゼミ」を4日間開催する予定で、安全・安心なIoT時代を支えるためのIPAの取り組みをIPA職員やIPAの推薦する若手クリエイターが説明するとのこと。また、初日となる7日(水)のみ登場予定の動作拡大型スーツ「スケルトニクス」がすでに展示されていました。


動作拡大型スーツ「スケルトニクス」を操縦している様子は、以下のムービーから見ることができます。

動作拡大型スーツ「スケルトニクス」がダイナミックに動いているところ - YouTube


ユカイ工学
「ロボティクスで世の中をユカイにする」をテーマに、ネットとリアルを繋ぐプロダクトをつくるユカイ工学では、コミュニケーションロボットの「BOCCO」などを展示。


BOCCOは、自宅に置いておくことでインターネット経由のコミュニケーションが可能になるデバイスです。本体には音声の「再生」「録音」ボタンがあり、スマートフォンと音声メッセージをやりとりできるほか、家庭内に設置したセンサーの情報をスマートフォンに通知することが可能。家族の生活の様子を外出中でも知ることができたり、家族と何気ないメッセージのやりとりを楽しむことができるとのこと。ちなみに、顔についている赤い鼻はボリュームつまみとのこと。


付属のセンサーを取り付けておくと、ドアや冷蔵庫の開閉を感知することで子供の帰宅などの様々なアクションをBOCCOがセンシングし、ネットを経由してスマートフォンのアプリへ情報を送信するようになっています。


アプリの画面はこんな感じ。「ドアに反応がありました」と開閉を知らせる通知が届いたり、アプリを介して音声をやりとりすることが可能です。


BOCCOのは、音声メッセージを双方向でやりとりすることが可能なほか、テキストメッセージを送信しておくと音声で読み上げてくれるようにもなっています。


BOCCOの使用イメージムービーはこんな感じ。BOCCOを介して家族がコミュニケーションをとる様子がわかります。

BOCCO 〜 家族をつなぐコミュニケーションロボット 〜 - YouTube


◆テスラ
USA SHOWCASEのエリアには、EV(電気自動車)のテスラ「モデルS」が置かれていました。


骨格だけの車体も置かれており、動力源となるバッテリーの置き場所やモーター・インバーターの配置が一目でわかるようになっています。


みらい翻訳
日本語から外国語、外国語から日本語への翻訳を、クラウドのデータベースを使うことで精度の高い翻訳を行う機械翻訳ソリューションを提供する「みらい翻訳」のブースでは、リアルタイム翻訳の実演や、ロボットを使った翻訳サービスの実演が行われています。


人間以外のコンピューターなどが翻訳を行う「機械翻訳」は特に新しい技術というわけではありませんが、近年の機械翻訳ではクラウド技術を取り入れ、膨大な翻訳事例の中からマッチするものを自動で選ぶことで翻訳の精度を高めているのがポイントとなっています。


ネットなどで翻訳した時に困るのが「この翻訳って本当に正しいの?」と疑問を持ってしまうことがある点ですが、みらい翻訳のシステムはこの疑問を翻訳した外国語をもう一度日本語に翻訳しなおすことで解消しているとのこと。以下のように日→韓に翻訳した場合だと韓国語が読めなくてチンプンカンプンになることも多いのですが、自動翻訳された韓国語をもう一度日本語に戻してやることで、実際にどのような翻訳が行われているのかを効果的に把握できるというわけです。


このほか、ブースでは特許文書のリアルタイム翻訳などのデモを見たり、タブレットなどを使った音声翻訳を試してみたりすることが可能。


また、現在開発が進められている、翻訳ができるおもてなしロボットのデモを見ることもできます。2020年に東京オリンピックが開催される頃には、このようなロボットが多く活躍しているのかも。


構造計画研究所
空間情報技術と通信技術、ソフトウェア技術を組み合わせて「新たな価値の創造」を目指すデザイン&エンジニアリング企業の「構造計画研究所」は、空間をレーザーで3Dスキャンしながら写真を撮影し、「屋内Googleマップ」のようなデータを生成できるNavVisなどの機器やソリューションを展示。


ドローンを使った「空飛ぶ無線中継局」ともいえそうな「ドローンdeリレー」のコンセプトモデル。ドローンに無線中継機能を搭載することで、山奥や災害現場など人の立ち入りや通信インフラ構築が困難な場所でも、簡単にプライベート通信回線を作り出すことのできるオンデマンドシステムで、現在は技術の確立に向けて開発が進められているとのこと。


ドローンの本体には、揺れを防いで角度を保つジンバルに搭載されたWi-Fiアンテナが2基取り付けられています。この状態で上空に飛び上がり、一方から受信した電波をもう片方から再送してリレーすることで、自由度の高い通信網を実現して「空のプライベートネットワーク」を作るための技術です。


目標とされる転送距離は、1機あたり1km以上と言うことで、かなりの範囲までカバーできることになりそう。また、アンテナの角度を自由に調節できるので、必ずしも全てのドローンが直線上に並ぶ必要がないところも面白い点と言えそうです。特に放送メディアからの関心が集まっているようで、遠隔地からの中継や、火山など近づくことができない災害現場の調査や撮影などに役立てることができそうです。


ブースでは実際にカメラのHD映像を転送するデモも行われています。


また、NavVisが作製した屋内3Dマップの様子や、これを使ったソリューション例の展示などもなかなか興味深いものがありました。


埼玉大学・辻研究室
各種センサーを駆使して力覚・触覚情報を可視化する新たなコンテンツ技術を開発している埼玉大学・辻研究室のブースでは、足や腕にかかる荷重を検知して画面にリアルタイムで合成して表示するシステムが展示されています。このシステムはリハビリの現場に役立てられることが考えられているほか、開発次第によってはスポーツの分野にも拡大できる可能性を含んでいそうです。


力可視化平行棒「FOVI-Bar」と呼ばれるこのシステムは、歩行リハビリの際などに使われる平行棒に荷重センサーを組み込むことで手にかかる力を把握すると同時に、体の関節の角度から足裏にかかる力を推定するというもの。


取得された情報はコンピューターで解析され、実際の画像に骨格モデルと荷重量を示すバーグラフがリアルタイムで合成されて目の前のスクリーンに表示されます。実際にやってみると、自分で感じている足裏や手のひらにかかる重さがほぼそのまま画面に表示されるので驚くこと間違いなし。


FOVI-Barの面白いところは、台の下には荷重センサーの類いが一切置かれていないことです。足裏にかかる力は、人の前に置かれた色距離画像センサ、つまりKinect センサーで取得された体の位置情報から得られた骨格データを解析することで推定されます。「推定」ではあるのですが、先述のように自分で実際に立ってみると自分の感覚と画面の表示がかなりの精度でシンクロしている様子がわかります。


Kinectセンサーと平行棒のセンサー、PCだけで実現できるこのシステムは、従来は難しかった「負担の可視化」を可能にしていることが大きなポイントですが、「コストの低さ」も重要なポイントとのこと。ヘタをすれば数百万~1千万円レベルの予算が必要なリハビリ専用器具も、この仕組みを使えばグッと費用を抑えることが可能になるとのこと。


Kinectセンサーを使うことで、腰やヒザの関節にかかる負担を可視化することも可能となっています。直立状態だとこんな感じですが……


少しヒザを曲げるだけで、腰とヒザの部分の丸がオレンジ色に変わり、この部分に力がかかっていると判定されました。写真で見ているだけでは伝わりにくいですが、実際にやってみると「あ、こんなに力がかかってるのね」と目で見て確認できる面白さはなかなかのもの。


PCからはワイヤレスでタブレットに情報を転送することもできるようなので、アプリケーションの現場にあわせたいろいろな使い方が考えられそうです。


こちらの装置は「足首筋肉トレーニングロボット」と呼ばれるもので、その名の通りに足首の筋肉をトレーニングする際に用いられるロボット。足を置く台には、荷重を検知する3次元センサーが2か所に取り付けられているほか、黒い筒状のモーターに内蔵された角度センサーを組み合わせて解析することで、足首にかかる力を測定すると同時に足首やヒザの角度を推測できるという、少し聞いただけでは理解できないけれど実はかなり高度な機能を備えた装置です。


各種センサーを総合的に解析することで、足裏の力だけではなく、脚の筋肉それぞれの力の入れ具合までもが推測できるようになっているとのこと。これまでは脚に電気センサーを取り付けないとわからなかった筋肉の動きが、この装置を使うと服を着たままでも把握できるようになるというわけです。さらに、トレーニングの補助を行うトレーナーにとっても、「もう少しここの筋肉に力を入れてみましょうか」と具体的な指示を出せるようになるので、より効果的なリハビリが可能になるというものです。


埼玉大学・辻研究室が開発する技術はリハビリの現場で役立ちそうな技術であると同時に、これら2つの仕組みを応用することで、ひょっとすればピッチャーが投球する際やゴルフのスイングでの重心や体の動きを解析してムダを洗い出したり、ロードバイクの筋肉の使い方をより具体的に可視化して把握できるようになるかも……といろいろな妄想がわき起こってくる内容となっていました。

村田製作所
村田製作所のブースでは、IoT関連のウェアラブル機器や、センサー類が展示されていました。


最も注目を集めていたのは「めがねの聖地」と呼ばれる福井県鯖江市と共同で試作したスマートグラスコンセプトモデル「Cool Design Smart Glass」。鯖江市ならではの眼鏡デザイン技術・製造技術により眼鏡本来のファッション性とかけ心地を実現するとともに、レンズ部のARディスプレイを搭載し、ふちのテンプル部分に取り付けられた世界最小サイズの回転・プッシュスイッチモジュールが付けられています。生活に溶け込むスマートグラスで、家電やスマートフォンなどのさまざまな機器を操作する、というコンセプトとのこと。


ブースにはミニチュアの家屋セットが置かれています。照明・テレビ・扇風機・のれんをスマートグラスで操作するデモンストレーションが行われていました。


使い方はミニチュア家屋の下に書かれており、ARディスプレイに映る表示を切り替えて、ボタンを押すことで家屋内の家電に変化を起こすことができるわけです。


実際にスマートグラスで家電を操作している様子は、以下のムービーから見ることができます。

村田製作所のスマートグラスで家電を操作しているところ - YouTube


こんな感じで、CEATECの会場ではこれら以外にもさまざまな興味深い技術が展示されています。著名企業のブースなどももちろんあり、一日かけて会場をゆっくり回ると思いがけない技術や体験に遭遇することになるかもしれないので、会場を訪れる前に事前申請して無料で楽しんでみるのも良さそうです。

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in 取材,   ソフトウェア,   ネットサービス,   ハードウェア,   乗り物, Posted by darkhorse_log

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