サイエンス

Googleのエリック・シュミットが考える人工知能の行く末

By CHRISTOPHER DOMBRES

Googleのエリック・シュミット会長が、BBCの人工知能(AI)関連の連載である「Intelligent Machines」上で、自身の考えるAIの今後について語っています。

Intelligent machines: Making AI work in the real world - BBC News
http://www.bbc.com/news/technology-34143171

「人工知能」という単語が誕生したのはなんと60年前の1955年8月31日のことで、ジョン・マッカーシーが電子頭脳を開発するために提案した研究計画の中で初めて登場したそうです。単語が誕生してから何十年もの間、AIはSFの中にだけ存在する架空のものであるかのようでした。しかし、近年になって爆発的に進化し、日常世界のさまざまな部分に溶け込もうとしています。

By JD Hancock

その爆発的な進化の理由のひとつは「ディープラーニング」です。通常、技術革新は今日につながるまでの非常にハードな研究結果がもたらすものです。例えば、人工ニューラルネットワークの権威のひとりであるジェフ・ヒントン氏は、1980年代に重要な洞察をいくつも思いついたそうです。しかし、当時のコンピューターは処理速度が今ほど速くなかったため、その重要な洞察を形にすることができませんでした。

1980年代からヒントン氏は20年間にわたって人工ニューラルネットワークに関する研究を続けてきました。そして2009年、長年温めた洞察を基に開発した最先端の音声認識技術を発表しています。これを開発できるに至った経緯には、何千台というコンピューターを同時に動作させたり、コンピューター1台の処理速度が向上したりしたことで、ディープラーニングが実際に使えるレベルのものになった、ということも大きく影響しています。

なお、Googleは即座にヒントン氏の発表した方法を採用し、Googleの音声認識アプリで起きていたエラーを25%カットしたそうです。

By downloadsource.fr

さらに、現実世界の問題に取り込むことでAIの進化は加速します。「58カ国語に対応した音声認識」など、消費者が求める最新のシステムは、AIの基礎研究を新しい分野にフォーカスさせたシステムと言い換えることができます。これらは、過去十数年間にわたって行われてきたAI関連の研究よりも非常に困難ですが、チャレンジしがいのあるものである、とシュミット会長。

それ故、シュミット会長はGoogleでは毎年大学から才能ある研究者を何人も採用しています。さらに、Googleの研究者には自身の研究内容をオープンに発表させている、とコメント。現実世界はとても大きく乱雑なため、AIは多くのことを学ぶ必要があるわけですが、それを乗り越えていくために外部からのアプローチも必要になってくると考えるからこそ、さまざまなデータをオープンにしているとのこと。

By Guillaume Paumier

「今後、我々はより調和したAI研究を行う必要がある」とシュミット会長。次世代のソフトウェアでは、機械学習は単なるアドオンのひとつになり、パフォーマンスを数%向上させるための追加機能になるかもしれません。例えば、十数年前にデジタル音楽サービスがスタートしましたが、その中でユーザーは新しい音楽を探すために何かしらの機能やサービスを使っていたはずです。しかし、最新の音楽サービスではよりシステムが賢く進化しており、「ユーザーが次にどのような音楽を再生してほしがるか」や「どのようなジャンルの音楽を好むのか」をユーザーの利用状況に合わせて自動で推測&提案できるところまで進化しています、とシュミット会長は語ります。

なお、シュミット会長はAIが長期的に社会の可能性を広げていくには、「限られた予算の中で、2人の子どもを連れて数日間の旅行に行く際の最高のプラン」や「メールやSNS、自分自身のスケジュールに至るまで、身の回りにあるノイズを取り除くための、より賢いフィルター」、「遺伝子やエネルギー、気候など、膨大なデータを処理する必要がある科学者の助けになるようなシステム」など、現実世界のニーズを第一に考え続けることが必要、としています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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