遠泳・サーフボード・自家製潜水艦でベルリンの壁から国境越えを目指した男たち

ベルリンの壁が崩壊するまでの1961年～1989年にかけて、5600人を超える東ドイツ人がバルト海経由で40km先にあるデンマークや、西ドイツの海岸線を目指しました。亡命に成功したのはわずか1000人未満で、その他の亡命者は死亡したと考えられています。ベルリンの壁を通り抜けるためにトンネルを掘ったという話は有名ですが、これまであまり語られなかった遠泳・カヤック・サーフボード・自家製潜水艦などでバルト海から国境越えを目指した人々の物語が、The Guardianに綴られています。

Surfboards and submarines: the secret escape of East Germans to Copenhagen | Cities | The Guardian
http://www.theguardian.com/cities/2014/oct/17/surfboards-and-submarines-the-secret-escape-of-east-germans-to-copenhagen

ベルリンの壁が建設されてから、亡命を試みたことで多くの犠牲者が出たことが知られており、ベルリンから国境を横断しようとした138人が殺害されたことなどが記録に残っています。しかし、ドイツ全体では国境通過を試みた人々が何人殺されてしまったのか、正確な人数はいまだわかっていないとのこと。

そんな中、ベルリンのチェックポイント・チャーリー博物館では、独自に犠牲者数の計算を行っており、2015年現在では1720人に及ぶ犠牲者リストを作成しています。さらにベルリン大学の歴史家クラウス・シュレーダー教授の研究チームは、2012年からベルリンの壁の東西に残る記録を照合して学問的に確実な数字を見つけ出す試みを行っており、ベルリンの2つの機関により歴史の裏側が少しずつわかりつつあります。

調査を続ける中で、これまで伝えられていなかったものの、過酷な亡命ルートをたどった東ドイツ人たちの結末が明らかになりつつあります。当時の亡命者たちは直線ルートをとるよりも巡回船を回避するルートを選んだため、1000人近くの人がバルト海を横断して脱出しました。塩分濃度の低いバルト海は悪天候のときに高波が起こりやすく、バルト海で溺死した人の数は最低でも174人と判明していますが、900人近くの人々がバルト海を越えて亡命に成功しました。

◆24時間泳ぎ続けて亡命した男
1971年7月、ピーター・デーブラー氏は、東ドイツのキュールングスボルンから西ドイツのフェーマルン島までの48kmの距離を、24時間休まずに泳いで亡命しました。彼が持っていた荷物は、栄養補給のためのダイエット用タブレットとチョコレートバーだけだったそうです。

◆サーフボードを漕いで亡命した男たち
1986年11月には、東ベルリン人のKarsten Klunder氏とDirk Deckert氏は、ヒデンゼー島から手製の帆を立てたサーフボードに乗って海に入りました。沖に出たところで荒海に飲まれて2人は別々になりましたが、Klunder氏はデンマークの島にたどりつき、Deckert氏も24時間後にデンマークの漁船に救助されたとのこと。

◆自家製潜水艦を発明した男
1969年10月に最も風変わりな脱出を果たしたのがManfred Burmeister氏。エンジニアだったBurmeister氏は1968年の「プラハの春」の知らせを受けて以来、東ドイツからの脱出を決めていました。しかし、ベルリンのレーダー工場で働いていたBurmeister氏は、海路が厳しい経路であることを知っていたとのこと。そこで彼は海中を進むため、排気管・車の加熱冷却ユニット・古いモペッドのモーターを組み合わせた、シュノーケルで呼吸可能な自家製の潜水艦を数カ月かけて完成させました。

湖でのテストに成功した彼は、潜水艦を2つのスーツケースに分けて詰め込み、海岸リゾート地のヴストロへ旅に出ます。Burmeister氏は朝の早い時間に潜水を開始し、無事デンマークのGedser Revに到達、自らの発明品で自由を手にしたことを確信したとのことです。