2万例以上の夢日記を検索できるデータベース「DreamBank」とは？

By Robert Couse-Baker

睡眠中に見る夢の中には荒唐無稽で脈絡なくストーリーが進行するものがあり、夢の中でのできごとを他人と共有するのが困難な時もあります。そんな夢をテキスト化して集めてネット上から検索可能な夢のデータベースが「DreamBank」です。

A Sleep Researcher's Attempt to Build a Bank for Dreams | Atlas Obscura
http://www.atlasobscura.com/articles/the-stanford-doctor-s-attempt-to-build-a-bank-for-dreams

カリフォルニア大学サンタクルーズ校で心理学・社会学を専攻する研究教授であるジョージ・ウィリアム・ダンホフ氏は、「夢」を専門的に研究している人物で、夢の詳細を書き起こして収集するデータバンク「DreamBank」を立ち上げた人物です。

DreamBank
http://www.dreambank.net/

夢を研究するダンホフ氏は、周囲から「自分が見た夢の解釈」を求められることが多いとのことですが、人が夢を見る原因はそれぞれであるため、個別に夢を解釈することは難しいとのこと。そこでダンホフ氏は、大量の夢の記録を保管して「夢のビッグデータ」を分析するためのデータバンク「DreamBank」を立ち上げました。

DreamBankのもとになったのは、ダンホフ氏が師事した心理学者カルビン・ホール氏が独自のコード体系で分類していた夢の実例を集めた研究資料。1985年にホール氏が亡くなり、ホール氏が収集していた夢の研究資料にアクセスできない状態が続いていましたが、1999年にダンホフ氏が全ての資料をデータ化して検索可能にしたことで、DreamBankが誕生したというわけです。

以下の写真に写っているのがダンホフ氏(左)とホール氏(右)。

DreamBankは7歳から74歳までの人が見た夢の詳細を記載した研究資料や文書を収集しており、プライバシーを考慮して夢の体験者の実名は伏せて仮名が付けられています。例えば、「エド」という男性が22年間にわたって亡き妻が現われた143の夢を記録したデータや、1977年から53年間にわたって夢日記を書き続けた「ドロシー」の900以上の夢のデータなどが収録されています。

夢の正確性は本人にしかわからないため、夢のデータ収集はおのずと困難な作業になりがち。例えば、内気な性格の被験者から聞き出した夢の内容からは性的な描写がカットされるなど、被験者の性格や特性に左右される可能性があります。この点を考慮して、DreamBankには亡き妻の夢を記録し続けた例のように、「自分のため」に記録された夢のデータが集められています。

DreamBankは2015年現在で2万人以上の夢の詳細を保管するライブラリとなっており、格納されている夢はキーワードで特定の夢を検索したり、ランダムでいくつかの夢をピックアップして探し出すことができるようになっています。

例えば、「ネコ」と検索して出てくるのは12歳の「West Coast Girl」が書いた以下のような夢日記。

私は屋外が光っているのを見ました。それはUFOでした。ETがこっちにやってきて中指で私を指し「オウチデンワ」と話しました。私の妹がネコとやってきて悲鳴をあげました。するとETは私の妹を連れて行き、私はとても幸せでした。それからETはネコも連れて行ったので、私は激怒して巨大な岩をETに投げつけるとETは消滅しました。朝になると妹とネコは家に帰っていたので、私はスーパーに向かいました。そこにはビリー・ジョー・アームストロング(ロックバンド「グリーン・デイ」のボーカル)がいたのでサインを求めたけど、両親をその場に置き去りにしたまま逃げられてしまいました。

また、DreamBankのランダム検索で出てきた「日本人交換留学生」という人の夢は以下のような内容でした。

私は2人の日本人交換留学生と週末を過ごしています。みんなで何ができるか家の中で話し合っています。1人が包装された冷たいサンドイッチをいくつか取り出しました。パッケージにはサンドイッチを丸呑みする奇妙な食べ方の中国人がプリントされています。気がつくと部屋に水が入ってきて、まるで湖のようです。みんなでボートに乗っていると1人の日本人がボタンのついた黒い金属製の端末を見せてきました。その端末で水中が見通せるようになると教わり、部屋の底をのぞいてみると、水底は私が手に持っていた金属製の端末で覆われていました。そして水底に『私の父親』がいたため驚いて叫びました。そこで私たちはもっといっしょに時間を過ごすことで同意し、ミリー叔母さんのアパートに行きました。

By ▓▒░ TORLEY ░▒▓

このような膨大な夢のデータを集めることで「夢の解釈は可能なのか？」という問いに対して、ダンホフ氏は「イエスでもありノーでもある」と答えています。例えば「ジョーにサインをもらえなかったのは、あなたがジョーに『心残りがある、怒っている、とても愛している』と思っていると考えられます。その場合、ジョーは引き続き夢に登場するでしょう」と話していますが、夢には"ノイズ"が多く存在するため、例えば個人が見た夢の意味を正確に解析するには、1つではなくそのほかにも大量の夢が必要とされるとのこと。

ダンホフ氏は22年間亡くした妻の夢を見続ける「エド」のデータを分析して論文を発表するなど、さらに詳しい夢の分析に挑戦しています。なお、夢は「将来的な病気を予測する」といった可能性が期待されていますが、現状のところ、ダンホフ氏は夢を生活の中で抱く思考や懸念の発現であり、非常に現実的な現象と考えています。