外部電源なしで歩く効率を上げる外骨格装置が開発される
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人間の歩行を助ける器具はいろいろなタイプが開発されていますが、より高い効果を得ようとする場合には電気の力を借りることは不可欠であるといえます。効率を上げるためには電気など外部のエネルギーに頼る必要があるというのが半ば常識となってしまっているわけですが、科学誌Natureで発表された論文では、電気の力を一切使わずに最大で10%も歩行時の効率アップを実現した外骨格型装置の開発に成功したことが明らかになっています。
Reducing the energy cost of human walking using an unpowered exoskeleton : Nature : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature14288.html
An unpowered exoskeleton decreases the energy required for walking | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2015/04/an-unpowered-exoskeleton-decreases-the-energy-required-for-walking/
開発された外骨格装置の外見はこんな感じ。カーボンファイバー製の本体は通常の義足とよく似た構造となっていますが、かかとをすっぽり覆う土台部分からは1本のアームが後方に伸び、スプリングとロープ、そして特殊なクラッチを介してふくらはぎ部分とつながれており、これが高い効率を生む上で最も重要な機構となっています。
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実際に装着した写真などがこちら。写真右のように、後ろ側の足を伸ばした状態で最もスプリングが伸びた状態となり、バネが戻る力で地面を前に蹴る動きをサポートする構造になっている様子です。膝の裏側あたりに位置するクラッチは、一定方向にのみ回転を許容するラチェット機構が備わっており、スプリングの伸びと縮みをコントロールしてエネルギーの蓄積と解放を制御するようになっています。
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この装置による歩行実験の様子を収めた映像は、YouTubeで見ることが可能です。
2013 01 01398D Supplementary Video 1 Walking with the exoskeletons - YouTube
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ウォーキングマシンの上を歩く男性の被験者。これから左足を前へと蹴り出す瞬間です。
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左足を前へと持って行くと……
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かかとが地面に着くタイミングでラチェット機構がオンになり、ロープの巻き取りのみ可能な状態になりました。
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ロープが少し巻き取られることで……
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ラチェットがロックされ、ロープとスプリングがピンと張った状態になります。この時、かかとは完全に地面について体重のほとんどが乗っている状態。
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そして足が後ろに向かうにつれ、バネが伸ばされて張力がかかった状態になります。
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一番後ろまで足がストロークした段階でスプリングの張力は最大に達します。この力を利用することで、つま先で地面を蹴ってかかとを持ち上げる動作をサポートするというわけです。
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かかとが持ち上がると、ラチェットのロックが解除され、フリーの状態になります。
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そうすると、バネとロープには一切の力がかからない状態になるので、歩く動きをまったく邪魔することがありません。この一連のサイクルを繰り返すことで、この装置は人間が歩く動きを助け、効率のよい歩行を実現するという仕組みになっています。
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研究チームは、この外骨格装置によって人間の代謝エネルギー消費量がどの程度削減されるかを検証。その結果、本体の重量が十分に軽量である場合に良い結果が得られることが判明しました。また、スプリングの強さも効率性に大きな影響を与えることが分かったとのこと。スプリングを最弱の状態から徐々に上げていくと、一定のレベルまでは代謝率が減少して効率が上がったのですが、さらにスプリングを強くすると今度は逆に代謝が増加してしまったそうです。これは、強くなりすぎたスプリングを伸ばすために余分なエネルギーが消費されたことを意味しており、効率的な歩行のためにはスプリングの強さを最適化することが重要であることを意味するものとなっています。
実験の結果、この装置によって歩行に必要なエネルギーは平均で7.3%(±2.6%)軽減されたことがわかっており、これは電源を用いた一般的な補助器具に匹敵する装置だとのこと。よく考えれば、外部のエネルギーを使わずに効率を上げるということは、永久機関にも通ずる究極の装置というふうにもとれるわけですが、これは人間の歩き方にまだまだ非効率的な部分が残されていたということを証明しているのかもしれません。
今後、いかに歩く効率が改善されているのか関心のわいてくる研究結果となっていました。
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