サイエンス

どうやってクモは体長の6倍もの距離を助走なしで正確にジャンプできるのかという研究

by Artur Rydzewski

ハエトリグモの一種であるPhidippus regiusは、得意なジャンプを生かして獲物を捕らえることで知られています。イギリス・マンチェスター大学の研究チームが「ハエトリグモはどうやってジャンプを行っているのか」について、Scientific Reportsで発表しています。

Energy and time optimal trajectories in exploratory jumps of the spider Phidippus regius | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-018-25227-9


How a spider jumps on its prey - science has the answer - BBC News
http://www.bbc.com/news/science-environment-43996959


実際にPhidippus regiusがジャンプする様子は、マンチェスター大学によって公開されている以下のムービーから見ることができます。

Scientists train spider to jump on demand - YouTube


ハエトリグモの一種であるPhidippus regiusはオスが全長およそ6~18mm、メスが全長およそ7~22mmという小型のクモ。Phidippus regiusは、リーガル・ジャンピング・スパイダーという英名の通り、獲物を捕まえるために体長の何倍もの距離をジャンプできることが知られていました。

マンチェスター大学の航空工学者であるモスタファ・R・A・ナバウィ氏は、クモの驚異的なジャンプ力をロボット工学へ応用することはできないかと考え、マンチェスターのペットショップからリーガル・ジャンピング・スパイダーを4匹購入しました。しかし、買ってきた4匹のうちで言うことを聞いてくれたのはたった1匹だけだったそうで、この素直なハエトリグモにはナバウィ氏率いる研究チームから「キム」という名前が贈られました。


研究チームは、以下のような装置を使ってキムにジャンプさせました。左右のプラットフォームは距離を変えることができるだけではなく、高低差も変更することが可能となっています。さらに、毎秒3200フレームで撮影できる超高速カメラを使って、キムがジャンプする様子をスローモーションで撮影しました。


スローモーションムービーを見ると、キムは助走することなく、後方の4肢をぐんと伸ばすようにしてジャンプしていることがわかります。


キムは、脚の力だけで最大で体長のおよそ6倍ほどある距離をジャンプすることができました。なお、人間が立ち幅跳びを行った場合、ジャンプできる距離は平均でおよそ自分の身長の1.5倍ほどとのこと。


ジャンプ時には自重のおよそ5倍もの力がクモの脚に加わっていることも判明したそうです。


クモは筋肉の他に体液の圧力によって脚を動かしているといわれていますが、ナバウィさん率いる研究チームは今回の実験を通して「ハエトリグモはジャンプに体液圧を用いていないのではないか」と推測しています。ただし、ジャンプの際にクモの体液圧が筋肉の動きにどのような影響を与えているかはまだ解明されていないため、証明するまでには至っていないとのこと。研究チームは、クモの解剖学的構造を分析するためにキムの体を0.0072mmという精度で3Dスキャンを行って3DCGモデルを作成しました。


また、着陸目標の高低によって、キムが姿勢を変えていることも判明しました。研究チームによると、ハエトリグモはより精度の高いジャンプを行うために体の角度を大きく変えているとのことで、離陸までにかかる時間や初速度にも違いがあったと指摘されています。


さらに、ジャンプする瞬間のキムのお尻に注目すると、ジャンプする時に離陸用プラットフォームへお尻から糸を出し、命綱のように扱っていることがわかりました。


この糸には、ハエトリグモが空中を跳んでいる間の姿勢を安定させる役割もあるとのこと。


マンチェスター大学の研究チームは今後「ハエトリグモの体液圧がジャンプにどのような影響を与えているか」や「ジャンプがハエトリグモの生存戦略にどのように役立っているのか」を研究し、最終的にはクモと同じサイズ・構造のロボットを開発したいという目標を掲げています。

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