インタビュー

あのモンスターPC「VAIO Z」の「究極の道具」たるゆえんはなにか、VAIO Zの開発責任者にいろいろな疑問をぶつけてみました


圧倒的なハイパフォーマンスを誇るモンスターPC「VAIO Z」は、長野県安曇野市のVAIO安曇野工場で、随所に熟練した「匠」の手が介在する手間暇かけたこだわりのMADE IN JAPANクオリティによって製造されていることが、工場取材で分かりました。そのVAIO Zがどのようなコンセプトで、一体全体どのようなユーザーエクスペリエンスを実現するために生まれたのかについては、生みの親に話を聞くのが最も分かりやすいはず。ということで、VAIO Zの開発責任者に、いろいろ話を聞いてきました。

インタビューに応じてくれたのはVAIO株式会社の笠井貴光さん。VAIO Zのプロダクトマネージャーです。


GIGAZINE(以下、G):
いきなりなんですが、VAIO株式会社とソニーとの関係はどうなってるのですか?イベントやソニーストアでの協力態勢などからは良い関係に見えますが。

笠井貴光さん(以下、笠井):
ソニーはVAIOの株主でもありますし、「VAIO」の商標を持っています。それをソニーからお借りしている状態なのです。いろいろソニーからのバックアップもあり、すごく良い関係だと思います。例えば、VAIO Zのカメラもソニー製ですしね。VAIO製品の販路に関しても、従来からファンの多かったソニーストアを活用させてもらっています。

G:
開発陣の方たちは、VAIO分社化を聞かされたとき、どういう感じだったのですか?「まさか……」なのか「やっぱり……」なのか?

笠井:
急な話だったのでびっくりでしたね。何も聞かされてませんでしたし。

G:
「ソニー時代1100人だった社員数が独立後、240人に減少」とのことですが、開発陣の人数も減ったのですか?

笠井:
減っています。

G:
少数精鋭というか、動きやすくなったということも?

笠井:
それは間違いなくあります。Zの開発チームなど強い商品を作ってきたメンバーが残っているので。そこは、大きいですね。

笠井さんとVAIO Z開発メンバーの織田浩敬さん。


G:
VAIO株式会社になって、ソニー時代と違う新しいことは何ですか?

笠井:
例えば、先日の発表会ではVAIO Zと同時に「VAIO Z Canvas」も発表しましたが、ソニー時代であれば発売前の製品をユーザーに使ってもらうということはありませんでした。Canvasはクリエイターと一緒に作り上げるという商品なので完成前に発表することになりました。「クリエイターのためのタブレット端末」という製品の特性を考慮して発表前にも多くの人に使ってもらい、製品化するという手法を採っているのを見て分かる通り、より自由なスタイルになったと思います。

G:
製品開発する上でも自由度が広がりましたか?

笠井:
ええ、それは間違いないですね。まず、スピードが上がったというのがあります。大きい会社だと、関係者が多すぎて調整に時間がかかる。それに対して今は、「やりたいな」と思ったらトップに「こうします」と報告して即、取りかかれる。そういう意味で開発のスピードが上がったのは大きいですね。

G:
具体的な製品について聞かせて下さい。新生VAIOの第1弾の商品として2in1タイプのVAIO Zを開発されましたが、純粋なクラムシェル型(ノートPC型)から出していくという案は考えませんでしたか?

笠井:
まったく考えませんでした。クラムシェル型であればすでに「VAIO Pro」「VAIO fit」という製品がありますので。私たちが「Zシリーズ」というVAIOのフラッグシップとして提供したいものは、クラムシェルのUXというのを大事にしつつ、それに「タブレットとペン」という価値を追加することによって、お客様に新しい可能性を広げてもらうということなのです。可能性を広げるという価値を提供するのがフラッグシップの役割だと考えていますので、VAIO Zを作る上で迷いはありませんでした。


G:
クラムシェル型に比べるとタブレットにも変形する形は軽さや耐久性で不利ではないですか?

笠井:
軽さについては不利ですね。けれど、耐久性に関しては、もつように設計していますから。新製品発表会でお見せしたとおり、5kgのおもりをぶら下げてもOKですし、開閉も数万回試験しています。


笠井:
2in1タイプということでタブレットとしての使い方がクローズアップされていますが、クラムシェル+タブレットを求めたというわけではなく、「ペン」が大切だと考えています。ペンを使ってもらいたいので。例えば、気になることをペンでメモしたり、カメラで撮影したものに書き込んでシェアしたりなど、これまでのクラムシェルタイプのPCではできないことがペンでできる。

これまでは資料を作るなど何か作業をする場合は、紙のノートである程度まとめて、それを最終成果物としてPowerPointなどにまとめていたと思います。でも、紙のノートでやっていたこともペンでできるだけでなく、「アナログとデジタルの融合」を目指して、紙ではできない情報を付帯させることがペンでできると考えています。そういう意味でのいわゆる「タブレットモード」です。決してiPadなどのタブレットの代わりになる、ということではないのです。


G:
そのペンについてですがWacomのような細かな筆圧感知機能を搭載する予定はありますか?

笠井:
ソフトウェア的にはWacomと同様の1024段階を扱えるようになっています。しかし、筆圧感知のレベルはすでに「これ以上、必要なのか?」という領域に入ってきています。ある意味、数値だけのスペック競争、という領域です。これは、かける力をどれくらい細かく分解できるのかという問題で、分解能はこれ以上細かくする意味がない領域になっています。そこで、次は味付けをどう変えるかという問題にもなります。VAIO Zは好みで設定変更できるようにしています。

書き味については、人によって好き嫌いというのがあるのです。どの程度の強さで、どの程度の太さの線になるのかについて、かなりの人数のデータを取ってみたところ、約9割の人が「軽いタッチの領域で(細かく)検知して欲しい」というような書き方でした。そのため、VAIO Zのデフォルト状態では、一般的に好まれる領域ということで下の領域(筆圧の低い領域)でスーッと書きやすくて、筆圧も検知できるようにして、逆に強く力を入れている領域では反応しないような味付けにしています。

例えば、専用ソフトウェアでこのカーブを寝かせれば寝かせるほど、あまり筆圧を感じないようになるとのこと。


G:
なるほど。残り10%くらいの人は、ソフトで自分好みに調整してほしいということですね。

笠井:
やはり、全ての人を満足させるというのは非常に難しい事ですから。

G:
タブレットモードで使える2in1タイプは他社の場合、ヒンジ部分で360度折り返す、いわゆる「鯖折り」タイプが多いですが、なぜVAIO Zは中央でクルリと回転するマルチフリップヒンジを採用しているのですか?

笠井:
それはシームレスに使えるからです。ペンで操作しているときに、ソフトウェアキーボードで文字を打つのは面倒じゃないですか。鯖折りタイプだと形状を何回も変えるのは大変ですよね。例えばノートPCとしてタイピングしている。その状態で、すぐにメモを書きたいというような使い方を考えると、シームレスに形を変化させられるかが重要です。だからこのスタイルなのです。


笠井:
さらにリアカメラも大切です。いわゆるタブレットスタイル、タブレットの形状になったときに、タブレット以下じゃダメなのです。360度鯖折りスタイルだとリアカメラは使えませんし、何より裏側にキーボードがきてしまう。これではタブレット以下じゃないですか。利便性を満たすことは当然なのですが、使うときにスタイリッシュだと感じてもらえないとダメだと考えています。


G:
ディスプレイについてですが、VAIO Zのディスプレイは他社の一般的なディスプレイとはどう違うのですか?

笠井:
色域を引き上げるLEDやフィルムなど、あくまでVAIO専用にカスタマイズされています。

左が従来モデルで、右が「VAIO Z」


G:
13インチサイズに2560×1440という高精細ディスプレイはやりすぎではないですか?

笠井:
たしかに高精細すぎて文字が小さくなったり、タッチパッドでのマウスカーソルの移動量が多くなったりなどはあります。しかし、それらの問題はデフォルトの設定を変更してもらえれば解決できる問題です。

今や多くの人はスマートフォンやタブレットで高精細なディスプレイになれているので、フルHDのディスプレイでも文字のぎざぎざ感が目立ってしまい「汚いな」と感じてしまう。むしろそっちの方がストレスになるのではないかと思います。アイコンひとつとってもきれいさは違いますから。


設定を変更することで文字やアイコンの大きさを変えたり、カーソルの移動量を増やすことはできるけれど、解像度を上げること、つまりきれいさ自体を変えることはできないので、WQHDは必須だと考えました。そういう(解像度にまつわる)ストレスを私自身も感じていたので。各社のフラッグシップ機も2560幅が一般的になってきていますしね。

G:
実際に製造現場を見るとものすごい量の部品ですが、各部品の調達はどういう基準で選んでいるのですか?

笠井:
一般的なPC部品の調達の仕方というのは、ラインナップされているものから選んで買ってきて、それを組み立てる、というものです。そこから一歩進むと、こういうスペックで作って欲しいという要望を提示してカスタムしてもらうという方法になります。けれど私たちは、きれいさや電力など求める性能を満たすために、例えばディスプレイを構成するパーツをどう組み合わせればどういう性能のものができ上がるか分かっているので、「コレとコレとコレを組み合わせるとこんなパネルができるので作ってね」という形のオーダーメイドでディスプレイを作ってもらいます。


笠井:
このような部品の調達の仕方は、実際にモノを作って価値に変えるという行為をしていないとできないのです。いきなりやろうとしてできるものではなく、明確な意思を持って、他が開発できないようなものを作ろうという行為をやり続けてきたVAIOだからできることだと考えています。そこは大きな違いですね。

G:
それはバッテリーについても言えそうですね。


笠井:
そうですね。バッテリーが専用設計のVAIO Zではバッテリーライフが長くなっているので、これまでのPCとは使い方が大きく変わってきます。私自身も去年からずっとVAIO Zを使っているのですが、2日か3日に1回しか充電しません。そういうバッテリーライフを考慮すると、ACアダプターのジャックの取り付けも優先順位が変わるので「抜けやすい設計」にしています。レビュー記事で指摘されていましたが、実はそういう意図なのです。


G:
記事で「ACジャックは抜けやすいのが玉にきず」と書いたのですが、この部分は迷いました。形状・大きさから、わざと抜けやすくしているのかも、と。

笠井:
足をひっかけたりして壊してしまうよりも、あえて抜けやすくしたほうが良いだろうということです。

G:
VAIO Zで採用している「Z ENGINE」について教えてください。Z ENGINEは放熱処理+高密度基板実装技術の組み合わせですよね。高密度にすればするほど熱に強くなるということなのですか?


笠井:
いいえ、そうではありません。一般的なUltrabookのCPUはTDPが15Wで、最近のモバイルPCの中にはTDP4.5Wのものもあります。それに対してVAIO ZのCPUはTDPが35Wなので、一般的なUltrabookに比べてはるかに高い冷却性能が求められます。実際のところ熱量が低いと、ファンは"ショボい"ものでもいいのです。小型化しても十分冷やせるのですが、発熱量が多くなるとより冷却性能が求められる。


笠井:
下は従来のTDPが15W品のVAIO(Fit 13A)の基板ですが、このサイズで作るとファンは1つしか載せられません。一方、上がVAIO Zの基板。単純に、基板を小さくすることでファンを2つ載せられる。


G:
なるほど、ファンを2倍載せるために高密度実装技術が必要ということなのですね。

笠井:
はい。私たちはこれまでも安曇野で設計から製造まで一体となってものづくりをしてきたのですが、VAIO Zでは安曇野だけでなくもっと裾野を広げなくてはいけないということで、競業のベンダーさんにも一緒に「本当に強い商品を作りたい」と呼びかけた結果、日本電産さんとファンを、フジクラさんとヒートパイプを開発しました。

昨今、よく「台湾・中国・韓国のベンダーが強い」と言われますが、「日本の技術の強さ」というのは確実にあるのです。けれど、パッケージする(製品化する)段階で弱くなるという状況も確かにある。「日本の技術力でデバイスを売るのではなく、完成形として本当に強いモノを作りたい」ということを、他社さんとも話し合ってVAIO Zを開発しました。「(日本の)意地を見せようよ」と。そういう思いを共有してくれるベンダーさんと手を組んだということです。


G:
他にも「日本の素材メーカーと手を組み、強化ガラスは旭硝子製、ボディーは東レと共同開発した」とのことですが、これは「ソニーからVAIO株式会社になる」となったら集まってきたということですか?

笠井:
これまでもZの安曇野モデルはVAIOのフラッグシップとしてやってきているので、パートナー企業さんからすると、そこに入り込みたい、という思いはあるのだと思います。実際に「部品を採用してくれ」という話はたくさんあります。けれど、販売量だけの話をすると、「儲け」だけで言うなら(数がそれほど多くない)VAIOは組みたくない相手なんです。

VAIO Zを作るにあたってパートナー企業さんと話をしたことは、「とにかく強い商品を作りたい」ということ。強い技術を持っている企業が一緒に製品を作ることによって、強い技術を商品に落とし込んでいける。パートナー企業さんも「VAIO Zという尖ったモデルを一緒に作ることで、ここ(VAIO Z)では儲からなくてもいいから、強い商品を作ることに協力したい。そこで得た技術や経験を活かせば他で儲けられるから」ということで、お互いにWin-Winな関係になっていると思います。


G:
先ほどVAIO Zを作るMADE IN AZUMINO JAPANの製造現場を見学させてもらったのですが、海外生産と比べて安曇野で生産するメリットとデメリットは何ですか?

笠井:
メリットは、安曇野でしか作れない商品に転化できることですね。品質もそう。Z ENGINEやバッテリーもそう。一般的なPCや電気製品は、まとまった形でパーツベンダーからパーツを購入してそれを工場で組み立てるというのが一般的なのです。

例えばVAIO Fit 13Aでは海外のメーカーさんに作ってもらった部品を現地で組み立ててから納品してもらっていました。ですが、私たちは今、この部品を構成しているパーツを全部バラバラの状態で納品してもらって、安曇野で組み立てています。それによってどんな差が出るかというと、例えば安曇野工場の技術であれば薄くても強い部品が作れる。普通は厚いほど強度が高いはずですが、海外で作る厚い部品よりも安曇野で作る薄い方が強度が高い。これでコストが上がるかというとそうではないのです。他の会社で組み立ててもらう費用というものがかかるので。自社でできるので、特長を出せるし、結果として値段も高くならない。だったらその方が良いよね、ということです。


G:
なるほど。ではデメリットは?

笠井:
あるとすると……作り手のプレッシャーじゃないですか(笑)強い工場を持っていて、商品力を上げてきている。毎回そうなのですが、ある商品が終わると「次、何やろう?」となる。「(これ以上のものが)できるのか?」と。毎回、「さらに上の、前作を超えた物を作っていく!」というプレッシャーはありますね。うれしい反面、精神的には良くないかも。

最初、リーダーとしてやり始めたときは、「もう次はないな」と思いました。けれど、回数を重ねるうちに感覚がバカになるというか、「まだ全然イケるな」という感じになってきましたね。


G:
(PDFファイル)VAIO meeting 2015」で「VAIO Zの中身は99%新規」と話していましたが、残り1%の新規ではない部分はどこですか?

笠井:
基本的にメカのパーツは100%新規です。コネクタとか流用できるものは一部、既存のパーツです。基本的には100%新設計ですけれど、厳密に言うと99%ということですね。


G:
同じくVAIO meeting 2015で、VAIO Zのコードネームは「神龍(シェンロン)」で、7つの宝を「薄さ」「軽さ」「スタミナ」「ビジュアル・オーディオ」「レスポンスパフォーマンス」「ペン」「マルチフリップ リアカメラ」と表現していましたが。

笠井:
それが「究極の道具」であり、それが私たちの強みであり、お客様に提供したい価値がその中にあるということです。

G:
7つということですが、「マルチフリップ リアカメラ」には2つあるような……。

笠井:
ビジュアル・オーディオも(笑)そこは、ほら数の話ですから……(笑)

G:
7つの宝はこの順に重視しているということですか?

笠井:
そういうわけではないです。今回は「軽さ」を重視しているわけではないですし。

G:
今後は、この7つを軸に、改良していくということですか?

笠井:
このモデルについてはそうです。何を追求するのかはモデルによって変えていきます。

G:
VAIO ZはPCI Express(x4)接続の「3倍速SSD」やレーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)技術が導入された感度と実効速度が抜群のWi-Fiアンテナを採用しているとのことですが、なぜここまで感度と実効速度にこだわったのですか?

笠井:
無線にしろ高速なSSDにしろ、スペックをただカタログに載せたいのではありません。使っている人に「気持ちいい」と感じて欲しいだけなんです。使っていただいた上での「気持ちいい」という要素を、それぞれのパーツで突き詰めています。実は、「気付かずに使えている」ということが気持ちよかったりするのです。


G:
先ほどおっしゃった「究極の道具」とは、ひっかからずに自分のやりたいことに集中できる道具ということですか?

笠井:
まさにそうです。ファンの音も、キーボードの音もできる限り小さくしたのは集中をさまたげたくないため。暗い場所でも見えるバックライトもその一つです。

VAIO Zって、最近のモデルにしてはベゼルが広く見えませんか?特に上の部分が広い。実はここにLEDバックライトを内蔵しています。バックライトは普通は下につけるのですが、VAIO Zはタブレット状態でペンで使う製品。すると、使うときに手が自然とディスプレイの下にあたる。LEDライトのような発熱源があると、触っていると結構熱いのですよ。それって、不快なんです。縦に使うときも、ディスプレイに角度が付くので、ほぼ全員のユーザーが、この向きで使うんです。横使いでも縦使いでも、一番使われない領域に発熱源をもってきているんです。


笠井:
さまざまな面で、VAIO Zではスペックなどの数字以上に「触ってもらって気持ちいい」ということを追求しています。


G:
数字化しにくいところが強みというのはアピールというか宣伝が難しくはありませんか?

笠井:
使ってもらって違和感を覚えないことが「気持ちいい」ことなので、そこのこだわりを気づいてもらえないこともあり得ます。いかに魅力を伝えていくかは確かに課題ではあります。

でも、逆に言うと、そういうものを作った上でないと、VAIOというブランドがこれから先、成長していかないと思います。時間がかかろうが、そういうものをお客様に提供していかないと、お客様は絶対についてきてくれないと思うのですよ。ものとしてあるべきものをきちんと作るとともにしっかり伝える必要があります。ですから、ぜひご協力を(笑)

G:
ちょっと横道にそれますが、昔からVAIOシリーズは壁紙とかのデザインにえらく凝っていて、明らかに他社よりもかっこよかったので、壁紙だけでGIGAZINEで記事化したこともあったのですが、なぜあそこまで凝っているのですか?

無料でダウンロードできるハイクオリティなVAIO壁紙まとめ - GIGAZINE


笠井:
確かに壁紙にもこだわっています。「機能美」というわけではありませんが、私たちが求める本質+αとして、この商品にマッチする壁紙ということでデザインしています。製品の外観と壁紙はすべて1対1でデザインしています。せっかく外観デザインが格好良くても中のデザインが格好悪かったらもったいないじゃないですか。

G:
デザイン面で言えば、あえて黒くしたUSB 3.0端子はカスタム部品だそうですが、そもそもなぜ端子を黒くしたのですか?

笠井:
カッコイイからです(笑)ここは黒でやらないと、と思いましたね。昔、VAIOで「red edition」という商品がありまして、それを見たときに「あちゃー」と。なぜ、(USB3.0端子が)青なの、と。外装も壁紙もこだわるなら、ちゃんとそこまでこだわらないといけませんよね。

G:
こだわりというと、「カードの飛び出す長さやロックの感触にもこだわったSDカードスロット」というのは、どこをどのようにこだわったのですか?


笠井:
他社製品ではSDカードが5mmくらい出っ張るモデルとかありますよね。でも、それって持ち運ぶときにぶつけて壊しちゃう。あり得ないことですよね。なるべくひっこめたい。けれど、プッシュ・プッシュなので、あまりひっこめ過ぎちゃうと、今度は引っかからない可能性があります。このコネクタはSDカードスロットのコネクタなんですが、半田づけされている部分を、0.3mmくらいずつずらしていって、どれが一番感触が良いか確認しながら試作しました。もちろん、人によって指の肉付きが違うので、ものすごい細い指の女性から、大きな手の男性まで試してみて、「ここが一番良いね」という所まで探しています。


G:
随所にものすごいこだわりが伝わってくるのですが、笠井さんはどういう経緯で設計・デザインをする仕事をすることになったのですか?

笠井:
元々、「なるべく多くの人に喜んで欲しい」という思いがありまして。それは、ある特定の人というよりも、多くの人に喜んでもらいたいという思いで会社に入ったのです。その思いのまま仕事を続けていたら、結果的に、今、こういう仕事になったということで、何か特別な転機があったというわけではないのです。階段を上ってきたらここに着いた。ただ、「思い」はずっと変わってないですね。

結局、人に喜んでもらいたくてやっていることですからね。例えば、ここ5年くらいは製品に関係するTwitterはすべて見ています。朝起きてすぐ、そして寝る前にも。1日に2時間くらいTwitterを見ているんじゃないでしょうか。お客さんが喜んでくれているのを見るのはもちろんうれしいことですけれど、それよりもご不便をかけている「声」を見ています。

私たちも製品アンケートを採るんですけれど、あそこでは本音は見えにくいんですよ。特定の質問から得られた「解」よりも、自由にお客さんがつぶやいている言葉の中にこそ本質があるので、その声を見ながら、聞きながら、おかしなところをもっとこういう風に改善していくべきだなというのを理解して商品に盛り込んでいっています。


G:
2時間ですか……。

笠井:
2時間では済まないかもしれません(笑)

G:
VAIOの製品についてのみですか?他社製品のTwitterも見ますか?

笠井:
僕はVAIOはマスト。他社の製品はあまり見ませんね。特定の製品というよりも、PCとかタブレットとかスマートフォンとか、もっと大きいくくりの中で、皆さんがどんなことを望んでいるのだろうかということは見ますね。あとは、自分がこれまでに開発に携わってきた製品の中で、まだ足りていない項目などを具体的に見ていますね。


笠井:
「USキーボード載せてよ!」などの声はすべてVAIO開発陣に届いているので、バンバン書いてもらえるとありがたいです。

G:
開発者の方はみなさんTwitterを見ているものなのですか?

笠井:
多分、みんな見ているんじゃないでしょうか。後輩には「見ろ」と言ってますね(笑)

G:
私たちが思っている以上にTwitterなどでの発言は伝わっているということですね。

笠井:
そうです。どんどん言ってもらえればと思います。最近、ビッグデータのようなネット上の声を集めて分析するという手法がクローズアップされていますが、それよりも作り手がユーザーの「生の声」に触れて、それを基に自分で考えるというのが大事だと思います。

G:
本日はお忙しい中ありがとうございました。

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in 取材,   インタビュー,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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