取材

1日に20人しか見られない絶景「ザ・ウェーブ」の抽選会に参加してきた


世の中には様々な抽選(くじ引き)がありますが、アメリカには絶景を見るための抽選会があるというのをご存知でしょうか。

こんにちは!世界新聞特命記者の雑色啓晴です。僕は今、アメリカのラスベガス(星印)に居ます(赤線は陸路、青線は空路で移動)。


世界一の絶景とも称される美しい流線模様の岩「ザ・ウェーブ」を見るために毎日、当選者10名という抽選が行われていて、多いときには150人以上が応募するそうです。今回、僕はその抽選会に参加し当選した後、ザ・ウェーブを見てきました。

◆ザ・ウェーブとは
WikipediaのThe Waveの記事によると「ザ・ウェーブとはアメリカのパリアキャニオン・ヴァーミリオンクリフス自然保護区内のユタ州とアリゾナ州の境界近くに位置する砂岩層である。写真家や旅人の間ではその美しい波模様とともに、辿り着くまでの険しい道のりが有名である」と記載されています。その景観を守るため、ザ・ウェーブがある地区には1日の入場人数制限があります。その数はなんと20人。10人は4か月前の申し込みによるオンライン抽選によって選ばれ、残り10人は現地で前日に行われる抽選会で決定します。

◆抽選会場がある街
抽選会場はユタ州のカナブという街にあります。静かな田舎町です。道路のバックに大きな赤い岩山が見えるのはさすがアメリカといったところでしょうか。


会場はツーリスト用のビジターセンター。簡単な自然博物館にもなっています。


場所はここ。


◆抽選する必要がない?
扉に抽選の受付日時が書かれています。受付は8時半~9時までです。数分過ぎて入場した女性は断られていました。僕はシーズンオフの2月に行ったので土日は閉まっていましたが、3月半ば~11月半ばまでのオンシーズンは毎日開いています。


中に入ると受付があります。ここで、僕の大変な勘違いが発覚しました。


なんと時差のせいで、すでに抽選が終わっていました。ラスベガスから車で来た為、うっかりしていましたが、アメリカ本土では4つのタイムゾーンがあり、ラスベガスから少し東にある州境界を跨ぐと1時間早くなっていました。


しかし、なんとこの日は応募者が4人しかおらず、6人も枠が余っているとのこと。つまり抽選会なしでザ・ウェーブに行けます。これはラッキーとすぐに申込みをしようとしましたが、掲示板を見てその理由がわかりました。


翌日のザ・ウェーブの天気が雨予報になっていました。雨になるとその絶景がかすれるだけでなく……


その道中がぬかるみ、タイヤが泥にはまってしまったり、車がスリップしてしまう恐れがある為、ビジターセンターでは行くことを推奨していません。また、希望者は一度ザ・ウェーブへの許可証を手に入れてしまうと、2週間抽選に参加出来なくなります。従って、日程選びにも慎重にならなくてはなりません。その為、僕はこの日に申し込む事を辞めました。


◆いざ、抽選会場へ
翌日、今度はしっかり8時半前に到着しました。続々と抽選希望者が集まってきました。


9時前になり、抽選部屋に移動します。


部屋は病院の待合室のような、こじんまりとしたものでした。


席に着くと、応募フォームに名前・住所・希望日・人数・車種などの情報を書き、提出します。


応募フォームはスタッフが集計し、合計人数や抽選番号を紙の隅に書きこみます。


この日、集まった人数は30人弱。代表者のみ来るグループもいるので応募人数は全部で48人でした。しかも、この日は金曜日。オフシーズンはビジターセンターが土日休業の為、金曜にまとめて土・日・月曜日の3日分の抽選を行います。つまり30人分の当選枠があることになり、倍率は単純計算で1.6倍という、超低倍率。期待に胸が膨らみます。

テーブルには僕らの夢を乗せた抽選器が静かに出番を待っていました。完全にビンゴ大会ですね。


◆夢を託したナンバー9
9時になり、スタッフが注意事項やそれぞれの抽選番号を発表していきます。僕のは9番でした。


そして、説明が終わるとすぐに抽選器を回し始めました。鼓動が早くなります。


初めは土曜日の10人分が回されます。最初の11番を皮切りに7番と奇数が続き、なんと早くも9番が呼ばれました。しかし、土曜日は降水確率が50%。日曜・月曜の予報が晴れだった為、泣く泣く手放すことにしました。しかし、日曜日の10人には呼ばれず、あっという間に、残るは月曜日の10人だけ。その後、呼ばれた最初の1組が6人グループだった為、早くも残り4人になってしまいました。

もはや絶望かと思ったその時……幸運の女神が微笑んでくれました。9番が出ました!思わず、声を出して喜んでしまいました。僕以外の当選者は声を出すことなくクールに決めていましたが。


◆手に入れた宝の地図
抽選後は当選者だけ残されて、行くに当たっての注意事項やルートの説明がありました。このエリアでの遭難者が後を絶たない為、24時間分の食糧確保や10mおきに振り返って来た道の写真を撮るなど、遭難対策に念を押されました。


説明が終わると、グループ毎に名前が呼ばれ、1人たった7ドル(約830円)と引き換えに、許可証とザ・ウェーブの場所が書かれた宝の地図が手渡されます。抽選会の参加料金は必要ないので、当選して7ドル払えば見に行く権利をもらえるわけです。


これが許可証です。当日、車のフロントガラスとカバンに付け、当選者の証にします。


そしてこれが宝の地図。日本語もあります。この裏側に地図や緯度経度と通過ポイントの写真が11枚添付されています。当日はこの地図とGPSを頼りに自ら進みます。大抵の人はガイドは雇いません。


◆冒険へ出発
当日は日の出とともに宿を出ました。天気は晴れ。ラスベガスで借りたトヨタのRAV4で、1時間ほどオフロードを走ります。心配した程の悪路ではありませんでしたが、一か所だけ泥にハマりそうなポイントがありました。もし、抜け出せなくなると、専門業者を呼ぶのに1000ドル(約12万円)ほどかかるとスタッフが言っていました。超えるときは抽選並にハラハラでした。


トレッキングのスタート地点に着くと、遭難者発見用のノートに名前を書き、許可証を付け、すぐに出発です。


◆2時間のトレッキングの末、ついに……
初めは湿地に足跡を残しながらザクザク進みます。その後は乾燥した砂が足を掴み体力を奪いに来ます。砂漠ではないので、岩の上も歩きます。似たような岩が並ぶので、立ち止まると来た道がわからなくなります。これが怖かった。


しかし、手に入れた地図とケータイのGPSを駆使して何とか2時間程でザ・ウェーブに到着しました。その波模様は素晴らしかった。


絶景と言われるものには、しばしば写真マジックがありますが、このザ・ウェーブは本物でした。その滑らかな流線模様を見ていると、それを作り出した自然の優しさを感じました。


また、このエリアにはザ・ウェーブだけでなく、ブログや地図には載っていない未開拓の絶景ポイントがいくつもありました。入場制限がくれたプレゼントです。


2億年前、恐竜がいた時代、この辺りは強風が砂丘の砂をかき乱す大きな砂漠地帯でした。


その後、その砂丘の上を新しい堆積物が覆い、ミネラルによって砂丘のまま岩として固められました。


そして、1500万年前の地層の隆起によって、元の砂丘が露わになりました。その際の侵食と、砂岩が含むミネラルの違いにより、現在の綺麗な流線模様が出来ました。


さて、いかがでしたか?ザ・ウェーブを見るために、毎日現地ではこのような運試しが行なわれています。抽選会場では日本人もちらほら見かけ、中には1年越しのリベンジを果たして当選した日本人の方もいました。所詮は運に任せるしかない抽選ですが、選ばれたとなるとザ・ウェーブだけでなく辺り一帯の見える景色も特別に感じました。

もし、この記事を見て興味を持った方は、2月に行くことをお勧めします。低倍率の抽選に加えて、トレッキングの気候が寒すぎず暑すぎず、最適でした。強運の持ち主の方は連休にでも、ふらっと抽選会に参加して、この地球上で唯一無二の景色を眺めてみるのもありではないでしょうか。

・追記
カナブ近郊に住んでいるという読者からタレコミがあったので追記します。

この方によると、今年の2月は過去最高気温を記録した1971年と同じぐらいの暖かさですが、例年は2月から3月にかけて積雪によりダートコースがぬかるんでおり、万が一スタックしてしまうと抜け出すのは困難で、ロードサービスも高額になるとのこと。また、抜け出せなかった場合、夕方からは氷点下になって非常に危険なことから、夏よりも冬の方が倍率が低いという事情があるそうです。


もし2月~3月の低倍率を狙うのであれば、万全の準備をした上で出かけて下さい。

文・取材:雑色啓晴 http://zoshiki.com/wp/

監修:世界新聞 sekaishinbun.net


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in 取材, Posted by logc_nt

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