ボリビアからチリに抜ける「宝石の道」は世界の果てを感じさせる絶景の連続

赤く染まる湖に、ボコボコと沸く間欠泉。ボリビアのウユニからチリのアタカマに抜けるルートは、変化に富んだ景観から「宝石の道」として旅行者に人気となっています。見事な山々を眺めながら、標高4000mを越える高原を走っていきました。全行程がオフロードで補給箇所も少ないことから、日常の旅はちょっとした冒険に変わります。フラミンゴの姿もありました。
こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。ウユニ塩湖では塩にまみれたのですが、宝石の道では砂にまみれてきました。ふかふかの砂浜を自転車で進めるわけがありません。1日走って30kmという日までありました。
こんな感じで宝石の道を走りました。
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◆エディオンダ湖のフラミンゴまで
「ウユニ塩湖は地平線まで真っ白で乾季なら自由に走行可能」という記事の中でウユニの町を紹介しましたが、郊外は閑散としています。

ウユニ→サンクリストバル→アロタまでの未舗装路は、整備されているのでアスファルトなみのスピードが出ます。ただ午後を過ぎると西から強い風が吹き付けるので、午前中に距離を稼いでおくのが無難です。

小さな集落で下校中の女の子たちを捕まえました

サンクリストバルの石造りの教会

気持ちのよい景色の中を駆け抜けます

整備されているので、ガンガンと走れる未舗装路。

アロタの村で分岐となるのですが、南下しようと決めていたのにも関わらず、美しい山々に誘われてしまってルートを変更。山の合間の谷を抜けました。

進むに連れて見せる姿を変えていってくれた美しい山の頂

途中の湖

アロタの村からエディオンダ湖まで、すれ違ったのは一台の車のみ。

そして、エディオンダ湖(Laguna Hedionda)に到着。

この湖にはたくさんのフラミンゴの姿がありました。片足を立てる姿を想像していたのですが、ここにはそんなフラミンゴは居ません。でも淡いピンク色した体は、イメージ通りのフラミンゴ。



首を動かしながらテクテクと歩く姿は、公園にいる鳩の姿と重なります。湖とにらめっこしながら、餌を探し求めていました。


他の湖にもフラミンゴは居たのですが、エディオンダ湖に一番集まっています。


けっこうな大群でした。

エディオンダ湖で出会ったフラミンゴ - YouTube
自分は利用していませんが、エディオンダ湖畔にはホテルがあるので宿泊も可能です。

エディオンダ湖の近くにある別の湖も綺麗な形をしていました

◆赤く染まるコロラダ湖まで
標高4000mを越える高原を越えていきます

色が重なりあう山肌

苦労してたどり着いた奇岩地帯

ここはアルボルデピエドラ(Arbol de Piedra)という風化して木のようになった石が有名です。ただ、アメリカのアーチーズ国立公園と比べてみると、大げさな気がしてなりません。

くびれている場所に注目すると、ちょっと凄い気もしますが。

道中のくたびれた標識が雰囲気を出していました

コロラダ湖(Laguna Colorada)が見えてきました

北部からコロラダ湖に入ると、最初の集落に国立公園の管理局があるので、そこで150ボリビアーノ(約2250円)の入場料を支払います。

血の池のように赤く染まっていたコロラダ湖。赤い色は藻類の赤い堆積物や色素だそうです。




コロラダ湖を後にして。

◆チリに入国
コロラダ湖を過ぎて、山を一つ越えます。標高4800mのあたりにソルデマニャーナ(Sol de Man~ana)という間欠泉が湧いているので立ち寄りました。

間欠泉のあるエリアは異世界のような色をしています。鼻につく卵が腐ったような硫黄の匂いは、日本の温泉のよう。



穴の中では絶えずグツグツ、ボコボコと何かを吐き出しています。「地球も生きている」と感じさせてくれる場所です。



フジツボのように地面に張り付いた噴出口

温泉のあるサラダ湖畔(Laguna Salada)

美しい円錐形のリカンカブール山(Volcan Licancabur)が見えると、長かった宝石の道もクライマックス。

走ってきた道を振り返ります

ヴェルデ湖(Laguna Verde)は緑の湖

標高4000mを越えるアンデスの高原地帯に世界の果てを感じる - YouTube
国境まであと少し

ボリビアのイミグレーションオフィスで出国手続きを済ませたら……

チリに入国。

標高約4500m地点にある国境。リカンカブール山の隣にならぶフリケス山の脇を越えました。

チリ入国から約6kmを走ると念願の舗装路に。

アスファルトの硬さを忘れてしまうほど、ずっと未舗装路を走っていました。

標高約4650mのこの辺りにはボリビア、チリ、アルゼンチンの国境線が重なっています。

標高約2400mのアタカマの町まではほぼダウンヒル。町の入口にイミグレーションがあるので、そこでチリの入国手続が必要。

標高を落として裾野が広がるリカンカブール山。

◆道について
ウユニの町を出てからアロタの村までは固く締まったオフロード。アロタの分岐からコロラダ湖を抜けるまでは、深い砂の区間もあって進みませんでした。コロラダ湖からチリの舗装に出るまでは、重機が道を均しているのでそこそこのスピードが出ます。砂が深いところは前後のギアを一番軽くして、ペダルの回転数を上げて突破。それでも無理な場合は降りて、自転車を押して歩いていました。
1日目は81.8km、2日目は65.3km、3日目51.1km、4日目は39.8km、5日目は41.2km、6日目は29.8km、7日目は45.4km、8日目は101.0kmという走行で、1日あたり平均して7~8時間は自転車を漕いでます。全部で455.4kmを走破。
振動が心配になる岩だらけの道

小さな川も越えました

苦しかった深砂区間

このように砂だらけの場所では、なかなか自転車に乗れません。

こちらは重機が道を均してくれたおかげで、両端を走ることができます。

道が均してあると、こんな坂でも降りずに上っていけました。

こうした道になれば、下り坂でもスピードを出せます。

道を均してくれる重機はチャリダーの味方。

雪が残る山なみに見とれながら。

こんな感じで走っています。

一人きりでの走行でしたが、前方を誰か自転車で走っていて、残された轍には勇気付けられました。

ほら、車線変更した後が!!

ボリビアとチリの国境付近では、これから宝石の道に突入するというポーランドのサイクリストとすれ違いました。

一般の旅行者の場合、ツアーに参加という方法になります。

ツアーの車は全部トヨタのランドクルーザー。

水と思っていた青いポリタンクは、予備のガソリンを入れているということでした。

◆寝床と補給
7泊8日を費やした宝石の道は2泊が安宿、5泊がキャンプという内訳でした。ボリビア通貨の手持ちが少なかったので、自然とキャンプが中心に。
ウユニを出た1泊目

3泊目は夜中に一台の車も通ることなく、この場所を独り占めしていました。

4泊目はペルーの記録を更新して、これまでの旅で一番高い標高になる4625mでキャンプ。

コロラダ湖が見えていた5泊目

6泊目はコロラダ湖を抜ける手前にあった風を凌げそうな場所で。

ゴーストタウンのようですが、ちゃんと人は住んでいるアロタの村。

2泊目の安宿

7日目にしてたどり着いた天然の温泉は、疲れた体にはたまりませんでした。

温泉から少し走るつもりでしたが、力が抜けてしまい7泊目は併設するホテルに宿泊。

キャンプでは自炊の毎日

アルゼンチン産コンビーフの缶詰をぶっ込んだスープパスタ

宝石の道は食料の補給が厳しいと聞いていたので、ウユニの町では缶詰を中心に大量の食料を購入。

最後にまとまった補給できるサンクリストバルの市場では、生鮮食品を中心に買い足しました。

コロラダ湖を過ぎたHuayllajaという集落で、最後の食料補給。

10年前にはなかった新しい集落のHuayllajaに住んでいるのは22家族だけ。ツアー客の相手をしながら生活しているそうです。

最後は食料が尽きそうで、クラッカーにマヨネーズを塗って食べていました。

◆青い空
チリに入ると標高が下がって空の青が薄くなるので、ボリビアの深い青の空が懐かしくもあります。夜になると広がる星空も格別で、一人では抱えきれないほどに煌めいていました。
11月2日の青空

11月3日の青空

11月4日の青空

11月5日の青空、この日だけ空に雲。

11月6日の青空

夕暮れも空を赤く染め上げてくれました

温泉があったサラダ湖畔の夕暮れ

標高4500mを越える不毛地帯の岩陰に育つ緑

後はこのツンツンとした草が生えているばかりでした

ウユニを出てからしばらくは姿を見せるリャマ

無人区間に入ると家畜の姿は見当たりません。代わりに野生のビクーニャが駆け回っています。エクアドル、ペルーのビクーニャに比べると、体つきががっしりとしていました。野生なので警戒感が強く、すぐに逃げ出してしまうのは寂しいところ。


トラブルも続出して厳しい走行となった宝石の道でしたが、次々に飛び込んでくる大自然は見応え充分でした。
ボリビア出国の際にイミグレーションオフィスで確認すると、1日あたり100人あたりの旅行者が訪れているという話で、その数は年々と増加しているというから驚きです。何もないところから観光が盛り上がり、それがそこに住む人たちの生活の糧になるのですから、ここでは凄いことが行われています。
それだけ魅力的なエリアになりますから、ボリビアを旅する際には足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?人を寄せ付けない大自然の迫力に、世界の果てを実感できると思います。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)
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