メモ

町の理髪師が「最高の経営者」である理由

by pawpaw67

「目標にしている人」や「尊敬している人」にスティーブ・ジョブズビル・ゲイツといった名前を挙げる人も多いはずです。しかし、自ら起業したドン・ポッティンガーさんにとっての「最高の経営者」はとある町の理髪師だとのこと。偉大な発明をしたわけでも、巨万の富を生み出したわけでもない理髪師をなぜ「最高の経営者」と呼ぶのか、自身のブログでその理由を明かしています。

The Best Entrepreneur I Know | by @donpottinger
http://donpottinger.net/blog/2015/01/19/the-best-entrepreneur-i-know.html

ポッティンガーさんが理髪師のデニスさんと出会ったのは、両親が離婚した13歳の時でした。その時ポッティンガーさんは「既に子どもではないものの、かといって大人とはほど遠い」という微妙な時期で、父親の不在は2つの意味で大きな喪失だったとのこと。1つは父親という役割の人間を失ったというそのままの意味ですが、もう1つは「慣れ親しんだ理髪師」を失ったということ。これまで髪の毛を切ってくれていた父親がいなくなり、ポッティンガーさんは母親と一緒に理髪師探しに繰り出しました。

その時に訪れた、デニスさんがいるクリパー理髪店は、彼の人生を大きく変えます。さまざまなことに熟達していたポッティンガーさんの父親ですが、髪を切るのだけは下手で、いつも左右非対称の髪型を学校の子どもたちにからかわれていました。しかしプロの理髪店に通うようになってから、からかわれることはなくなり、それどころか、「髪を切ってもらう」以上のことを理髪店で経験することになったのです。


ポッティンガーさんが初めて訪れてから16年たった今でも、クリパー理髪店に変化はほとんどありません。壁にはハリエット・タブマンマーティン・ルーサー・キング・ジュニアマルコム・Xなどの偉人のポスターが貼られ、ホワイトボードには日替わりで名言が書かれており、そして部屋の角には背が高く肩幅が広い、浅黒い肌の男性が立っています。それが店主のデニスさんです。はさみを持たず、エプロンをしていなければ、多くの人がバスケットボールプレイヤーか何かと間違うだろう容姿で、お客さんがドアを開けて店に入ると、低い声ですぐに歓迎の言葉を口にします。もしお客さんが急いでいたら、デニスさんは「そうあせるなよ」と言って席に座るよう勧めるとのこと。


ポッティンガーさんは「彼の前に座ると、世界が消える」と語ります。そこにはデニスさんと自分しかおらず、彼は日常のこと、つまり家族や政治・スポーツ・起業家としての仕事について話し出します。互いに知識やアイデアを交換しあい、黒人コミュニティが面している問題について話し合い、ポッティンガーさんがエンジニアや起業家として経験したことを共有します。デニスさんは熱心に耳を傾け、時に思慮深い質問やアドバイスを行うことも。彼はセラピストであり、理想の父親であり、友人でした。誰かがすばらしいことを成し遂げた時、最初に賞賛してくれる人間であり、何か間違いを起こしそうになった時は最初にそれを指摘してくれる人。大学を卒業したとき、面接の前、そして結婚式の日、彼は無料で散髪を行ってくれ、ポッティンガーさんの息子に自転車をプレゼントしてくれたりもしたそうです。デニスさんは散髪を終えると、いつも「奥さんや母親や息子を抱きしめるように」と言い、店を出る度にポッティンガーさんは散髪よりも大きなものを得たような気分になりました。


デニスさんがお店を持とうと決めたのは20年前。彼はお店を開く場所として、お世辞にもすばらしいとは言えない「南ディカルブ」を選びました。南ディカルブは貧しい労働者階級の黒人が多いエリアで、有名なものと言えばラップと深夜の発砲事件ぐらい。町のランドマークは寂れたモールだけでした。それでもデニスさんは「町の人々が彼を求めていた」という理由で、その場所を選びました。

デニスさんは理髪店が町にとって灯台の光のようなものになることを思い描いていたそうです。そしてそれは現実となり、ポッティンガーさんと彼の弟は幼い頃、そして今になっても恩恵を受けにクリパー理髪店に通っています。


南ディカルブで育ったポッティンガーさんは「デニスさん以外の尊敬すべき男がほとんどいなかった」と語ります。一度は町を離れたポッティンガーさんですが、高校を卒業後、再び南ディカルブで暮らし始めます。「母親がまだ町にいたから」という理由もありますが、もう1つの理由はデニスさんに髪をカットしてもらうため。家の近くには別の理髪店もありますが、ポッティンガーさんは彼に髪を切ってもらいに車で30分の距離を通うのです。それは、2人の間には客と店主よりも深い関係があり、理髪店に行くと「髪を切ってもらう」という単純な作業が比類ない経験に変わるから、とのこと。デニスさんはポッティンガーさんに「自分のルーツから逃げるな、それらを受け入れろ」と語り、父親・夫・コミュニティのアクティビスト・起業家がどうあるべきかを伝えます。町の理髪師でありながら、デニスさんは「マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの精神を体現している人間だ」とポッティンガーさんは語りました。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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