メモ

人生を円滑に送るために知っておきたい「ネットワーク効果」と、優れた人間関係を築くための「人生の岐路」とは?

by Natalya Zaritskaya

人間には人生を導く目には見えない力「ネットワーク効果」が働いており、これらを考慮した上で「7つの人生の岐路」を正しく選ぶべきである、とベンチャー企業のNFXでプロダクトデザイナーを務めるジェームズ・キュリエ氏が語っています。

Your Life is Driven by Network Effects
https://www.nfx.com/post/your-life-network-effects

人間は自分の住む土地やデートする相手、職、着る服に至るまですべてを自分自身で選択していると考えがちです。しかし、実際のところはあらゆる選択肢は人間が考えるよりもかなり制約されたものであり、この選択肢を制約する目に見えない力の正体こそが「ネットワーク効果」である、とキュリエ氏は語っています。


ネットワーク効果は、人生における人間同士のつながりが形成するネットワークが生み出す力で、キュリエ氏によると「何百もの小さな相互作用が生み出す、必ずしもあなたの意図に沿った道へとあなたを導くわけではない力」だそうです。ネットワーク効果は時間と共に悪化するという側面も持っており、人間関係を構築するコミュニティが長く続けば続くほど、ネットワーク効果はその影響を受ける人物の運命を勝手に形作ってしまうとのこと。

例えば、ある人が都市Aに転勤することになったとすると、その影響で同じ会社に勤める同僚が都市Aから別の都市へと転勤しなければいけなくなるケースがあります。このように、「どの土地に住むか」は人間がそれぞれ自由に選択しているように見えますが、実際のところは「ネットワーク効果により選択肢が制限されている」ケースが往々にしてあるというわけ。同じように、個人の収入は仕事における成果以上に同僚がどの程度収入を得ているかに左右されており、国のGDPも他国のGDPに大きく依存しているため、社会現象の多くがネットワーク効果と密接にかかわっていることがわかります。

by Alina Grubnyak

人間同士のつながりによって成り立つネットワークにおいて、ノードはネットワークの構成員である「人間」を指します。ノード同士はアイデアや資本、仕事、地位、願望、言語、期待、肯定、批判、物理的空間といったあらゆるものを通信することが可能。そして、ノード同士の物理的な距離や親密度、信頼性や類似性によってもノード間の通信頻度(交流)は大きく変化します。

そして、当然ですが各ノードには優劣が存在します。例えば金銭的に豊かであったり、地位や名声を獲得していたりなど、他のノードよりも通信を優先すべき「Preferential attachment(優先アタッチメント)」が存在します。なお、ほとんどのケースにおいて優先アタッチメントとして働くのは「愛着」であり、同じ条件のノードがいる場合に、愛着の強い方を優先しがちであるというのがその事例だそうです。なお、これは「マタイ効果」としても知られています。

by Jacek Dylag

夕食の席で1つの会話をしたい場合、適切な人数は「6人」で、最大でも「8人」が限度となります。これは、会話をするグループを構成するノード(人)の間に存在するリンク(双方向会話)の数に基づいたものです。例えば6人で会話する場合、双方向会話の数は15個になります。それに対して、7人で会話する場合、双方向会話の数は21個となり、すべての会話を抑制することがより難しくなることは明らかです。このように、グループが大きくなるとリンクの数は指数関数的に変化するため、ネットワークの構成人数が増えれば増えるほど、ネットワーク内の個人への影響ものとなります。

個人個人の持つネットワークは構成ノードが異なり、ノード間の関係も異なるため、その性質も大きく異なってきます。ネットワークは以下の5つの条件を満たすことで、形成される「深さ」と「速度」が変化するという特徴を持ちます。

・新しいグループの人々と、頻繁に相互作用のあるコンテキストのやり取りを行う
・自身の抱えるネットワークのうち、重複度の高い関係の数が多くなること
・アイデンティティを変えたり進化させたりすることに開放的である時期であること
・地理的およびネットワークにおける「近さ」の密度がいかに高いか
・何か難しいことや、心配事を一緒に抱くこと


高校や大学、社会に出てから最初の就職先などは、上記の5つの要素を多く満たすため、人生において重要なネットワークとなり得るそうです。

by javier trueba

交友関係のネットワークには3つのレベルが存在します。「SNS上で関わりのある人」のような、インターネット上でのつながりをベースとした「デジタル上の人とのつながり」をベースとしたもの、家族や学校、職場のような実際の人間関係をベースとした「人間同士でのつながり」、そして近所の住人や同じビルで働く物理的なつながりを持つ「物理的なつながり」をベースとしたものの3つです。

そして、各ネットワークを構成するノード(人)の数やノード間のつながり(関係性)の強度は、「ダンバー数」に従って設定することができます。「ダンバー数」とは、人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限を示すものです。キュリエ氏は例として、「5人」の家族のように親しい友人、「15人」の親密な友人、「50人」の友人、「150人」の面識のある人を挙げており、ネットワークの構成人数がこれ以上になると、「うまくネットワークが機能しなくなる」と指摘しています。

そして、キュリエ氏は「(ネットワークの構成ノードは)人生をナビゲートする際にダッシュボードに表示されるものと思ってください。ノードが与えてくれる価値が、確率や報酬、コスト、摩擦といったあらゆる要素として表示され、ネットワーク(つながり)が提供してくれる価値がチェックできます。あなたには決断力と自由意志があり、各決定項目は数字で表示されるため、あらゆる面から可能な限り最高の決断が下せるようになっています」と語っています。

by Marvin Meyer

さらに、人生における7つの岐路の選択も、人生を円滑に進めるためのネットワークを形成するには重要です。キュリエ氏は「ネットワーク効果があなたの人生に与える影響を考えると、7つの岐路で重要な決定を下す際に、ネットワーク効果そのものの効果をしっかりと頭に入れておくことは重要です」と述べています。

◆岐路1:生まれた家族

by Jessica Rockowitz

唯一選択することのできない岐路が、自分の生まれる家族です。家族は個人の形成するネットワークにおける基本的な層であり、ノード間のやり取りの頻度や早さ、関係性なども他のネットワークよりも強固になりがちです。

家族間での相互作用時に生じる摩擦は非常に小さなものであるため、家族というネットワークは人生において大きな影響力を持つものとなります。ほとんどの人は人生における重要な決断を下す際に、この家族ネットワークに近い選択を選ぶ傾向にあります。そのため、自分の人生における行き先を意識するならば、家族ネットワークの影響に「注意すべき」とキュリエ氏。

◆岐路2:高校

by Eliott Reyna

高校は、若者が自身のアイデンティティや世界観を形成する上で、非常に大きな役割を担うステージです。そのため、高校生の際に形成されるネットワーク(高校ネットワーク)は、学業成績や大学進学などとも相関関係のある、重要なものとなります。

高校選びにおいて重要になるのは、以下の4つ。

・高校の大きさ
「高校の大きさ」により、卒業生が形成するネットワークが大きくなり、大学や就職など、将来築くこととなるネットワークに大きな影響を与える可能性が大きくなるとのこと。

・学校の多様性
「学校の多様性」が高ければ、ネットワークを構成するノードの種類も豊富になります。

・卒業生の親和性
「卒業生の親和性」が高くなると、ノード間のリンクが強くなり、高校ネットワークが卒業生にとってより価値の高いネットワークになります。

・優秀な学生にとっての学業における成功がどれほど重要か?
「学校の人気と学生の学業的な成功が正の相関をみせるほど、短期的な社会的インセンティブが、長期的に見るとあなたにとって役立つ成果と一致するようになります」とキュリエ氏。

なお、どの高校に通うかについて選択の余地がない場合、「誰と友達になるか」が重要になるとのこと。

◆岐路3:大学

by Vasily Koloda

高校時と同じように、大学でも人生において重要なネットワークを築くことができます。それでいて、大学は高校よりもはるかに多くの選択肢から、進学先を選ぶこととなります。そして、大学ネットワークは高校ネットワークよりも長い時間(4年)をかけて形成されるため、より強力なネットワークを生み出すことが可能です。また、同じ大学ネットワークの人と同じ業界で働くという傾向が強いため、大学ネットワークも就職後に形成されるネットワークに好影響を及ぼす可能性があります。

少しでも良い大学ネットワークを形成するには、進学先の大学について以下の点を検討する必要があるとのこと。なお、「学校の大きさ」や「卒業生との親和性」については、高校選択時と同様に重要な要素となります。

・大学の卒業生がどこに住んでいるか?
大学の選択は地域ネットワークの選択にも深く関わります。例えばカリフォルニアの大学に進学すれば、友人や求人はこの地域から選ぶことになります。実際、キュリエ氏が大学を卒業して就職活動を行った際には、多くの同級生が大学ネットワークの影響を受け、大学のある地域で就職先を探していたそうです。

・大学の卒業生がどのような業界で働いているのか?
キュリエ氏の友人が進学したトリニティ・カレッジは、卒業生の多くがニューヨークもしくはボストンの金融機関で働くそうで、友人も同じ道をたどったそうです。これについてキュリエ氏は「彼がこの仕事を選んだのは、彼のユニークな能力と興味によるところではなく、単にネットワーク効果によるもの」と指摘。友人は自身の持つネットワークの中から、最良の選択を選んだ結果、金融機関で働くことになったとしています。

・他の生徒と自然に関わりを持つことができるか?
進学先の大学に通う生徒たちが、あなたが望む願望・ライフスタイル・興味を有しているかどうかも重要です。どれだけネットワークが強力でも、実際に他のノードと結合しなければネットワークを形成することはできず、各ノードに興味を持てないというのは致命的な問題となり得ます。

◆岐路4:最初の仕事

by Marten Bjork


学生時代を終え、最初に就く就職先も、人生を円滑に進めるネットワークを形成するには重要です。職場では毎日8時間以上も同僚と会うことになり、下手をすると家族よりも多くのやり取りを同僚と行う可能性があります。一般的には収入や自身の興味関心、スキルなどから就職先を選びますが、キュリエ氏は「これはすべて間違っています。最初の就職先ではキャリアパスを真似したい人と仕事を共にすべきです」と述べています。これは、最初の就職先は職務内容・収入・経歴といった点よりも、キャリアを通じて武器となるスキルセットにこそ重きを置くべきだからだそうです。

そこで、就職先を決める際には「自分が毎日やりたい仕事を教えてくれるか?」「収入に関して最高のオファーだったか?「履歴書上の見栄えは良いか?」「望むだけの休暇を得られ、無料のケータリングや豪華なオフィスで仕事ができるか?」といった要素はすべて無視し、以下の点を考慮すべきとのこと。

・この仕事は適切な都市で行われているか?自身が長期的に住みたい街はどこか?
・同僚を好きになり、尊敬できるか?そして同僚から好かれ、尊敬されることができるか?
・いつか上司のようになりたいと思えるか?
・キャリア志望が同僚と一致するか?
・最高の仕事がしたいと思えるか?
・強い文化と仲間意識はあるか?
・ネットワークを構築するために、会社の同僚に自分自身をアピールする機会があるか?
・従業員は会社とブランドを誇りに思っているか?仕事以外でもお互いを求めあっているか?
・強力なネットワークの構築を脅かすような政治が職場に存在するか?
・スタートアップの場合、競合他社、特にネットワーク効果に対する強力な潜在的防御力があるか?

◆岐路5:パートナー選び

by Juliette F

結婚、または人生におけるパートナーを選ぶことは、人生において最も重要な決断のひとつです。この決断は個人的なレベルで大きな喜びや苦しみの源となる可能性があります。また、ネットワークという意味でも、他人が形成してきたネットワークが自身のネットワークと重なり合うようになるため、非常に重要です。しかし、元々親しい友人と結婚する場合、結婚相手の友人・知人は自身にとっての友人・知人であるケースも多いため、ネットワーク形成においては特に有効なものではありません。

もちろん親しい友人同士での結婚には何の問題もありませんが、新しくパートナーを探したいという場合には、以下のような点に気を付けることをキュリエ氏はオススメしています。

・自分の知人の中で、最も多くの人を知っている可能性が高いのは誰か?
人間関係においても、多くの知人を持つという人物はいるもの。そのような人物は、自分が全く知らない新しい人に出会う役に立ちます。ただし、こういった人物は顔が広くても人物間の結びつきは希薄で、ただ人を紹介することに喜びを見出しているというケースが多いそうです。

・友人と仲が良いか?
将来を真剣に考えている相手の場合、自分の友人とも仲良く接してくれるかは非常に重要で、良好な関係を築けている場合はより長期にわたって関係が続く可能性が高くなります。

・家族と仲が良いか?
友人と同じく、家族と仲良くできるかどうかも重要な判断要素のひとつとなります。

・同じ地理的ネットワーク上にいるか?
カップルにとって地理的に離れた場所で関係を築くということは、非常に大きな負担となるため、地理的に近くにいることも重要な要素のひとつです。

・上手くいかない場合にブローバックがあるか?
例えば同僚と恋仲になるという場合、別れたあとも職場やプライベートで定期的に会う可能性があるというリスクを考慮する必要があります。また、離婚にまで発展してしまった場合、自身の持つネットワークの一部を失う危険性も生じるため、「このリスクを過小評価するべきではない」とキュリエ氏は指摘しています。

◆岐路6:住む場所

by Breno Assis

どこに住むかは、家族の就職先や、進学先にも影響する非常に大きな判断のひとつ。どこに住んでいるかが「知人を決め、人生の豊かさや情報へのアクセス度を大きく左右することになる」とキュリエ氏は語っており、地理にコミットしてネットワークを開発することで、必要なすべての経験やリソースへのアクセス性が向上すると指摘しています。

自身が暮らす土地を決める場合に重要なポイントとしては、以下を挙げています。

・この町の人々は自分のようか?
都市によって特徴があり、自分と似通った性質を持った人々が暮らす土地を選ぶべきとのこと。

・自分がこの土地に留まるのはいつまでか?
引っ越しすれば、それまで築いてきたネットワークはリセットされることになります。これは銀行の口座をリセットするようなものとキュリエ氏は指摘しており、長く同じ土地に留まることの重要性を説いています。

・自分にとって自分自身のキャリアはどれだけ重要か?
GDPは都市の人口規模に応じて非線形にスケーリングするため、都市部では収入が他の土地よりも急速に増加します。また、都市部では業界トップの才能に出会う機会が多くなるという利点もありますが、こういった利点を自身が良しとするかをしっかりと自問自答すべきとのこと。

・速いペースでどれだけ楽しめるか?
大都市ではすべてが速く進みます。人々は早く歩き、チャンスも多く発生します。これはネットワークサイズと密度が大きくなることによる、避けられない結果ですが、これを楽しめるかどうかにより暮らす土地を考えることも重要です。

・新しい人との出会いをどれくらい楽しめるか?
上記2つと同じように、新しい出会いが多いのも都市部の特徴。

◆岐路7:再評価
ネットワーク効果は、ネットワークが誕生して以降、時間の経過と共に強力になり続けます。しかし、ネットワークを追加・統合したり、ネットワーク効果が及ぼす影響を変更したりすることは当然ですが可能です。その最も簡単な方法は、ネットワークの構成単位である人そのものを変えるというもの。

逆に、自分の人生が順調で満足のいくものである場合は、ネットワークがどれほど重要かを理解して、その関係を倍に増やすことをキュリエ氏は推奨しています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「人生の意味」を理解する年齢が調査で特定される - GIGAZINE

「人生に対する不満」を癒やす方法とは? - GIGAZINE

「人生の目的」を持つかどうかがあなたの寿命に関係している - GIGAZINE

幸福や健康のカギとなるのは「自分の人生に意味がある」と感じることだとする研究結果 - GIGAZINE

十代の間に広がる新たな人生観「陽気なニヒリズム」とは? - GIGAZINE

in メモ, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.