Amazonサービスの作業者が「私たちはアルゴリズムじゃない」とベゾス氏へのオープンレターを公開

By Kevan
Amazonはそのサービスの一環として「有能な人材を必要とする仕事のためのマーケットプレイス」と銘打った「Amazon Mechanical Turk(アマゾン・メカニカル・ターク)」を提供しています。コンピューターが苦手な作業をオンラインに登録したワーカーに割り振り、作業に応じて報酬を支払うという仕組みになっているのですが、ワーカーが「その待遇が低すぎる」として改善を求めてジェフ・ベゾスCEOに宛てたオープンレターを公開しています。
Amazon's Mechanical Turk workers protest: 'I am a human being, not an algorithm' | Technology | The Guardian
http://www.theguardian.com/technology/2014/dec/03/amazon-mechanical-turk-workers-protest-jeff-bezos
◆Amazon Mechanical Turkとは
直訳すると「機械仕掛けのトルコ人」という意味になるMechanical Turkの名称は、1770年に開発された自動チェス機「トルコ人」の名前からとられたものです。「トルコ人」はあたかも自動でチェスをプレイする機械のように見えましたが、実は後年に内部に人が入って操作していたという巧妙なイタズラ装置であったことが判明しています。1854年に焼失するまでに多くの試合に勝利し、その対戦相手の中にはナポレオンやベンジャミン・フランクリンなどの著名人も含まれていたとのこと。

By Wikpedia
Amazonのサービス「Amazon Mechanical Truk(mTurk)」も同じように「人間仕掛けの処理サービス」と考えればその内容が理解しやすいはず。コンピューター技術の発達はめざましいものですが、それでもなお人間の判断力が必要とされる現場は数多く残っています。そんな仕事をネット越しにAmazonが仲介することで、サービス利用者は手間のかかる仕事を安価で外注し、実際に作業を行うワーカーは報酬を得て、さらにAmazonはコミッションを徴収する、と言うサービスになっています。
Amazon Mechanical Turk ( クラウドソーシング用のマーケットプレイス) | アマゾン ウェブ サービス(AWS 日本語)
コンピューティング技術は向上し続けてはいますが、それでもまだ人間がコンピュータよりはるかに効果的にできることはたくさん残っています。例えば、写真や動画のオブジェクトの識別、データの重複除外、音声録音の転写、データの詳細のリサーチなどです。従来、このようなタスクは、一時的に大量の労働力を雇用するか(これには時間やコストがかかり、規模の拡大は困難です)、完了されないままになっているかでした。
Mechanical Turk は、シンプルで拡張性があり、費用対効果の高い方法で、有能な人材にアクセスすることを狙いとしています。タスク(Human Intelligence Tasks または「HIT」と呼ばれる)を完了する必要がある企業や開発者は、堅牢な Mechanical Turk API を使用して、何千人という高レベルで低コストの、かつ世界中にいるオンデマンドのワーカーにアクセスでき、そしてその完了した仕事をプログラム的に自社のビジネスプロセスやシステムに直接統合することが可能です。Mechanical Turk により、開発者や企業は、それぞれの目標を以前よりもより迅速かつ低コストで達成することができます。
◆AmazonのCEO、ベゾス氏に宛てられたオープンレター
Amazonが拠点を置く北米では2005年からサービスが提供されているmTurkですが、いわばその「実働部隊」として仕事をして報酬を得ているワーカー(別名:ターカー(Turker))が多く存在しています。カナダに住む35歳の女性、クリスティ・ミランドさんもそんなターカーの一人で、2005年に仕事を始めて以降に担当した作業の数は83万件以上におよび、1件あたり平均して20セント(約20円)の収入を得てきました。現在、ミランドさんのようなターカーは世界中で50万人いるとみられ、その多くは主要な収入源としてmTurkを活用しているとみられます。
しかし、その報酬プランに不満の声があがっています。担当する作業に対してAmazonは報酬の最低補償額を設定しておらず、作業1時間あたりに支払われた額が2ドル(約240円)を下回ることもあるとのこと。さらにAmazonは10%のコミッション料を徴収し、作業の出来具合が気に入らなかった依頼者が受け取りを拒否すると報酬が全く支払われないばかりか、場合によっては何の説明もなしにターカーのアカウントを無効にされてしまうこともあるとのこと。
ターカーの待遇改善を求める声を受け、スタンフォード大学のマイケル・バーンスタイン教授はターカーが協力して作り上げるサイト「DYNAMO」を立ち上げ、その中でAmazonのベゾス氏にオープンレターを送るキャンペーンを開始しました。
DYNAMO
http://www.wearedynamo.org/dearjeffbezos

DYNAMO上には多くのターカーからのメッセージが書き込まれ、同じ境遇に置かれて悩んでいる人が多く存在している様子をうかがい知ることができます。前出のミランドさんは「私は人間です。アルゴリズムではありません」と書き込んで状況の改善を訴えています。
I am a Turker: middle age, entrepreneur, university student, mom, wife, reliant on my mTurk income to keep my family safe from foreclosure. I don’t Turk for $1.45 per hour nor do I live in a developing country, I am a skilled and intelligent worker, and I Turk as my main source of income and it is currently my chosen career. I am a human being, not an algorithm, and yet Requesters seem to think I am there just to serve their bidding. They do not respect myself and my fellow Turkers with a fair wage, and in fact say that we should be thankful we get anything near to minimum wage for the “easy” work we do. Searching for work all day isn’t easy. Having to find and install scripts to become more efficient isn’t easy. Dealing with unfair rejections isn’t easy. Being a Turker isn’t easy.
私は30歳代のターカーであり、起業家でもあり、大学生、母親、妻、そして住む家を守るためにmTurkからの収入に頼っています。決して時給1ドル45セント(約160円)のためにターカーをやっているわけではなく、また開発途上国で仕事をしているわけでもありません。私はスキルと知識のあるワーカーで、mTurkが主な収入源であり、自分のキャリアとして仕事をしています。私は人間です。アルゴリズムではありません。ましてや、リクエスター(仕事を依頼する企業)が報酬を値切るための捨て駒として登録しているわけでもありません。リクエスターは私や仲間のターカーに対してフェアな報酬を提示しておらず、敬意を払っていません。それどころか、「楽勝」な仕事で最低賃金額に近い報酬を得ているのだから感謝するように、という内容を話しています。仕事の効率を上げるためにスクリプトを見つけて来たり、理不尽な切り捨てに対応したり、さらにターカーでいることは簡単なことではありません。
DYNAMOにはミランドさんと同じような書き込みが多く寄せられ関心の高さを伺わせますが、その内容はあくまで穏当なものが中心。サイトを運営するバーンスタイン教授は「これは不満をわめき散らす場所ではありません。多くの書き込みは無理難題を突きつけるものではなく、変化・改善して欲しいこと、そして何より『気付いてもらう』ことを求めているのです」と語っています。
なお、ミランダさんはDYNAMOへの書き込み以前にもベゾス氏のアドレス(jeff@amazon.com)にメールを送ったところ、直接答えが返ってきたこともあるとのこと。今回の件に関して、ベゾス氏とAmazonは反応を見せるのでしょうか。
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in メモ, ネットサービス, Posted by darkhorse_log
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