ロボットにコントロールされる方が人間は働きやすく満足度も高いという結果が判明
By Jiuguang Wang
コンピューターの進化に比例してロボットや人工知能の進化が進んでおり、最終的には「人間の仕事を奪い尽くすのでは?」とする心配が現実味を帯びてくるようにも感じられるわけですが、マサチューセッツ工科大学(MIT)で行われた研究では、「ロボットが立てた計画に基づいて人間が作業する」という作業形態が最も効率がよいばかりか、作業を行う人間にとっても満足度が高くなるという興味深い結果が明らかになりました。
Want a happy worker? Let robots take control. | MIT News Office
http://newsoffice.mit.edu/2014/want-happy-worker-let-robots-take-control
検証では2名の作業員と1台のロボットが用いられ、検証用に設定された作業パターンを実施して効率と満足度を調査しました。その検証の様子と結果が以下のムービーにまとめられています。
Decision-Making Authority, Team Efficiency and Human Worker Satisfaction in Mixed Human-Robot Teams
この実験を行ったMITのマシュー・ガンボレイさんは検証にあたり、2つの仮定として「1.チームの作業効率は、自動化のレベルと比例する」「2.人間の作業員はチーム内で役割を与えられることをより好むものであるが、スケジュール策定に過度な負担を強いられたくない」をうち立てました。
写真に写っている3名のうち1番右がガンボレイさん。握手をする2人は実験に参加する被験者です。
そして、ロボットとも握手。2名の人間と1台のロボットがチームとなり、作業管理方法の違いによって作業効率と満足度がどのように変化するかの検証を実施します。
実験を行う作業場はこんな感じ。材料を左のFetching Station(ピッキング場所)から集め、右のAssembly Station(組み立てステーション)で組み立てるという作業が行われるのですが、その作業割り当ての担当を3パターンに分けて比較が行われます。
1.マニュアルチーム
作業員1が作業計画を立て、ロボットは材料をピッキングするのみ。
2.オートマチックチーム
ロボットが作業の割り当てとピッキングを行い、作業員は2名とも作業に徹する。
3.セミオートマチックチーム
作業員1は自分で作業計画を立ててピッキングと組み立て作業を行う一方、ロボットは作業員2の作業割り当てを行い、作業員2は作業に徹する。
上記3つのパターンを検証した結果を比較したグラフからは、ロボットによる自動化が多くなるほど作業効率がよくなっている様子が見てとれます。青いバーは作業時間、赤いバーは作業割り当ての時間を示しているのですが、右のオートマチックチームに近づくほど(=自動化の比率が上がるにつれて)バーが短くなっていることがわかります。
また、被験者の感想を集めたところ、「ロボットと私の間で理解しあえている気がした」や「ロボットは賢かった」といった意見が挙がっており、自動化によるメリットとして「チームの生産性を高めた」「可能ななかで最も短い時間で作業を終えることができた」という点が挙げられています。
仮定の段階では「チームの作業効率と作業員の満足度が最も高くなるポイントを見つける」とされていた狙いでしたが……
検証の結果からは、ロボットによる作業割り当ての自動化が進むほど、作業効率と作業員の満足度が正比例で増大していることが明らかにされました。
ただし、ガンボレイさんは「ロボット万能論」を唱えるつもりはなく、この結果はあくまでもロボットを動かすために人間が作るアルゴリズムが最も重要である点を強調しており、ポイントは「自分で計画を立てる代わりに、計画を自動で立てるツールを開発するということです」と語っています。
今回の検証ではごく基本的な単純作業がテストケースにされているため、さらに複雑な要件が加わる実際の現場での検証を待ちたいところですが、ツールとして優れるロボットと、人間がそれをうまく活用することが重要であるのは間違いなさそうです。
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