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存在しない架空の町がいつのまにか実在、そして再び消え去っていたことが明らかに

By Cosmovisión

この世には、地図には記載されているにもかかわらず本当には存在しない「ペーパータウン」と呼ばれる架空の町があります。その多くは、地図出版社が他社による著作権侵害を防止するために作り出すものなのですが、アメリカではそんなペーパータウンがいつ間にか本当に存在していたことが発覚し、しかもその後には再び姿を消してしまっていたことがわかりました。

An Imaginary Town Becomes Real, Then Not. True Story : Krulwich Wonders... : NPR
http://www.npr.org/blogs/krulwich/2014/03/18/290236647/an-imaginary-town-becomes-real-then-not-true-story

その町は「Agloe」という名前のペーパータウンで、アメリカ・ニューヨークの北に位置する小さな町「ロスコー(Roscoe)」の近くに存在することになっていました。


Agloeは、アメリカの地図出版社「General Drafting」(GD)社の地図にのみ記載されていた町です。地図を作成する際には非常に多くの手間とコストがかかるものなのですが、他社がすでに作成した地図を違法に流用して自社製品として販売する業者が続出。そのため、違法コピーが行われてもすぐに判別ができるようにあらかじめ架空の地名を書き込んでおくという手法がよく使われていました。

以下の地図は1930年代に作成されたものなのですが、そこには「Agloe」が地名として書き込まれていたことがわかります。ちなみに、町の名前は同社の役員であるOtto G. Lindberg氏と、その秘書のErnest Alpers氏のイニシャルをもとに作られたとのこと。


Agloeが架空に誕生した数年後、大手地図出版社のランドマクナリー社から出版された地図には、なんとあるはずもない町「Agloe」が記載されていることが発覚。これを知ったGD社のLindberg氏は、ここぞとばかりにランドマクナリー社の不正を裁判で訴えました。

GD社のワナにまんまと引っかかり、ランドマクナリー社には弁解の余地ゼロと思われた事件ですが、しかしランドマクナリー社はこれを全面的に否定。弁護士は「この地図は同社のスタッフが実際に現地を訪れて調査を行ったものである」として真っ向から対立する姿勢を見せました。その反論の中でランドマクナリー社は、Agloeと呼ばれている場所にはある建物が建っており、しかもその建物に入っている店の名称が「Agloe General Store(アグロー雑貨店)」であったと証言して正当性を主張。そこで実際に調査を行ったところ、なんと本当にその名前が書かれた建物が存在していることがわかったのです。

By Micaela Go

Lindberg氏らによって架空に作り上げられたはずの地名「Agloe」が、どういうわけか実際に存在する店舗の名称になっているという謎めいた話になっており、「反論するためにランドマクナリー社が後から作ったのでは」という疑いもわき起こりそうなミステリーなのですが、実際には別の理由が存在していたことがわかっています。

この雑貨店の店主が店舗を建てて営業を開始することになったとき、店につける名前を考える必要に迫られました。「この土地の名前をつければいいのでは」と考えた店主はガソリンスタンドのEssoでもらった地図を広げ、該当する場所の名前を調べます。よく地図を調べたところ、その場所には「Agloe」と書かれていたため、店主はそのまま自分の店に「Agloe General Store」と名付けたそうです。

そしてその店主がEssoでもらった地図は、EssoがGD社から地図を買って作成したもの。つまり、手から手へと地図がわたっていく間に、Agloeは本当に存在する地名として姿を変え、あろうことかその場所に建つ店舗の名前に使われるにまで至ってしまったのです。この経緯が明らかになったことで、後にランドマクナリー社の疑いは晴れることとなりました。

By ssalonso

その後、アグロー雑貨店は店をたたみ、建物も取り壊され、誰も住まなくなった状態で何十年という月日が過ぎました。しかし、2014年2月にFrank Jacobs氏のブログで紹介された時点では、Googleマップで「Agloe」と検索するとちゃんと元の場所が表示され、地図の上ではAgloeが存在し続けていることがわかっていました。Jacobs氏はブログの中で「今でもAgloeと検索するとLindbeg氏らが書き込んでいた場所に、しかも店舗はもう存在していないその場所にピンが立つままとなっています。GD社は1992年に別の大手地図出版社であるAmerican Map社に吸収合併され、元の地図もそのまま現在でも使われています」と語っています。


誕生から約80年、実際には存在しない地名がいつの間にか実在のものとなり、空想が現実になったと思われていたエピソードですが、ついにそのストーリーも終わりを迎えたのかもしれません。2014年3月、ジャーナリストのRobert Krulwich氏が同じ名前をGoogleマップで調べてみたところ、ついにAgloeの名前が地図に表示されなくなっていることが発覚しました。


Googleは3月中ごろにAgloeの地名をデータベース上から削除した模様。元は存在しなかったはずの街がいつのまにか実在のものとなり、それも次第に廃れることに。しかし地図の上だけでは生き残っていたAgloeもGoogleマップ上からはついにその最後の姿を消してしまうことになったという、なぜか寂しく感じてしまいそうなエピソードとなっていました。


なお、Agloeが存在していたはずの場所は、Googleマップでは以下の地点となっています。

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