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全二重通信でのスループットを2倍にする革新的な技術の開発が進行中

By Christopher Chan

モバイル通信などの双方向通信においては、同時に双方からデータを送受信できる必要があり、上り・下り用に回線を用意する全二重通信が用いられています。日本や欧米の携帯電話会社が提供する高速モバイル通信・LTEでは、FDDという、周波数帯を分割する通信方式が採用されており、下りにより多くの帯域を割り当てられるためダウンロードに比べるとアップロード速度が遅いという状況が生まれています。しかし、新たにFDD方式でも上り・下りにフルで帯域を確保できる技術の開発が進行中です。

Full duplex: A fundamental radio tech breakthrough that could double throughput, alleviate the spectrum crunch | ExtremeTech
http://www.extremetech.com/extreme/187190-full-duplex-a-fundamental-radio-tech-breakthrough-that-could-double-throughput-alleviate-the-spectrum-crunch

モバイル通信に使われる高周波には、同一の周波数で送信・受信を行おうとしても、送信波が受信機に干渉してしまい、うまく受信波をつかめないという「hearing」と呼ばれる制約があります。

現在、帯域を切り分けることで同時送受信を行うFDD方式では帯域を分けることにより、時間軸で送信・受信を高速に切り替えることで同時送受信を行うTDD方式では時間で分けることで、hearingの不具合を回避しているわけですが、必然的に、FDD方式・TDD方式のいずれの通信方式であっても、ネットワークを最大限に活用できていないと言えます。


このような高周波の持つ物理的性質による制約を回避して、ネットワークを最大限に活用することに、スタンフォード大学の教授陣が2012年に立ち上げたスタートアップ企業・Kumu Networks(Kumu)が成功しました。

Kumuは、送信波・受信波が干渉するのを防ぐために、ハウリングを防止するエコーキャンセラーの技術を応用したとのこと。Kumuのジョエル・ブランド副社長は、「受信機が高周波の電波環境を調べ、その電波環境によって受信波がどのように干渉を受け変化するかを予測した上で、その影響を打ち消すように高周波を出すことで、送信波を干渉なく受信できるという形で、同時送受信を実現しています」とその仕組みを説明しています。


Kumuの開発した干渉波キャンセリング技術を用いることで、FDD通信で複数搭載することが必要なデュプレクサを統合することが可能で、例えば、850MHzのLTEバンド5/6/18/19/26/27と900MHzのLTEバンド8を一つのデュプレクサで対応できるようになるとのこと。

さらに、Kumuの干渉波キャンセリング技術は無線通信だけでなくケーブルTVなどで使われている有線通信・DOCSISにも適用できるため、回線をより効率的に使うことで有線回線の速度を向上させることも期待されています。

By włodi

Kumuは会社名こそ明らかにしなかったものの、すでにアメリカ・欧州の大手モバイル通信事業者との試験を済ませており、電波キャンセリングのアルゴリズムや通信方式の基本設計について2014年11月までに決定し、2015年初頭から実証実験をスタートする予定とのことです。

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in メモ,   モバイル,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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