サイエンス

毎月15時間以上携帯電話で通話すると脳腫瘍の発生リスクが2倍から3倍に増えるという研究結果

By Marjan Lazarevski

2011年に世界保健機関(WHO)が「携帯電話は発がん性を持つ危険有害物質である」と発表、その後も携帯電話と発がん性の関連や真偽については様々な研究が行われていますが、その中で、携帯電話のヘビーユーザーは脳腫瘍の発生リスクが2倍から3倍に増加するという最新の研究結果が発表されています。

Intensive mobile phone users at higher risk of brain cancers, says study | Society | theguardian.com
http://www.theguardian.com/society/2014/may/13/intensive-mobile-phone-users-higher-risk-brain-cancer-study


携帯電話の電波とガンの関係については、さまざまな研究が行われています。過去15年の中でいくつかの研究は、携帯電話の集中的な長期間使用と神経膠腫の間には因果関係があることを指摘していましたが、ほとんどの研究は決定的な成果を上げていません。そんな中、フランス・ボルドー大学の研究チームが、携帯電話の安全性に関して行ってきた長期間の調査結果をBritish JournalのOccupational and Environmental Medicineに発表しました。

この研究では、5年間平均して毎月15時間以上携帯電話を使用することで、普段あまり電話を使用しない人に比べて、脳腫瘍の一種である「神経膠腫」と「髄膜腫」の発生リスクが2倍~3倍も増加することが明らかになりました。神経膠腫はほとんどが悪性腫瘍ですが、髄膜腫は脳腫瘍の中ではわりとポピュラーな良性腫瘍です。

2011年にWHOの外部組織である国際がん研究機関(IARC)が、「携帯電話は発がん性を持つ危険有害物質である」と発表していますが、この証明のためには、実生活における喫煙等のその他の発ガン要因を排除した上で、正確に携帯電話の使用頻度を把握する必要があり、実証が難しい状態だったとのこと。

By Kollaps

今回発表された最新の研究では、2004年~2006年にかけてフランスの4県で253例の神経膠腫患者と194例の髄膜腫患者の合計447人の患者が報告されています。研究チームは脳腫瘍の発生傾向を調査するため、患者グループと、一般集団から選出した健康な人などで構成された892人のグループで比較調査を実施し、相違点を探りました。

その結果、平均して5年間で毎月15時間(1日37.5分)以上携帯電話を利用している人の脳腫瘍発生率が増加していることが判明。当てはまる人は営業マンなどの職業に就く人たちが多かったとのこと。また、この調査により、腫瘍は普段携帯電話を当てる耳とは反対側に発生する傾向があるということも発見されています。

今回、ボルドー大学の研究者は、携帯電話と脳腫瘍との関連性を見いだしたわけですが、「近年の携帯電話市場は目まぐるしい発展を続けているため、携帯電話による発ガンの危険度を定義するのは難しい」と話しており、今後は近年の技術発展を考慮した長期的観察が必要になるとのこと。この研究結果からは「顔の近くで携帯電話を長期使用することが脳腫瘍の発生リスクを増加させる」ということが言えますが、日本ではスマートフォンの普及によって携帯電話での通話が減少傾向にあるため、同様のデータは当てはまらない可能性があります。

By Lee Barrows

なお、ボルドー大学の研究論文は以下のページに掲載されています。

Mobile phone use and brain tumours in the CERENAT case-control study -- Coureau et al. -- Occupational and Environmental Medicine
http://oem.bmj.com/content/early/2014/05/09/oemed-2013-101754.abstract

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in モバイル,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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