就活の未来は面接結果よりもビッグデータから導き出されるデータが重視されることになる?
By bpsusf
インターネットやネットワークに接続可能な電子端末が増加してさまざまなデータを収集できるようになったことで、近年活用法が注目されるようになったのがビッグデータです。そんなビッグデータを活用して「より企業に適した人材を見つける」ことや「企業の労働力を最適化」するための試みが行われています。
Job hunting is a matter of Big Data, not how you perform at an interview | Technology | The Observer
http://www.theguardian.com/technology/2014/may/10/job-hunting-big-data-interview-algorithms-employees
「職業」は職務経歴書と面接の結果により得られるものですが、幸運にも天職に就けたという人がいれば、能力に見合わない職業に就いてしまっている人もいるもので、不確定な要素がつきまとうものです。そんな中、人々のコミュニケーションなどを追跡し、個人の才能・スキル・特性・癖・教養・経験や、興味の対象、趣味などあらゆる情報をデータ化し、さまざまな要素間の相関関係を導き出して個々人にとって最適な職業を斡旋可能になったとしたら、就職活動はどのようなものになるのでしょうか。
By bpsusf
◆ビジネスで成功するチームを作るためのアルゴリズム
サウサンプトン大学の卒業生であるAlistair Shepherdさんは、2009年に自身の立案した波力に関するイノベーションをベースに起業しようとしていました。しかし、ハーバード・ビジネス・スクールのNoam Wasserman教授による「起業したばかりの会社の83%が倒産し、それらの会社が倒産する理由の3分の2はアイデアそのものの善し悪しではなく、単に資金不足からくるものである」という助言を聞き、計画していた起業を諦めてソーシャル・エンジニアリングに関する研究を始めたそうです。
その後、Shepherdさんは「労働力を最適化する」ためのアルゴリズムを編み出します。これは人間のパフォーマンスに関するビッグデータを解析し、生産性を最適化して職場での成功と幸福を導き出そうとする試みとのことで、彼が大学在学時に発見した「仕事における人間の相互作用」に関する典型的な競争心理モデルを応用して導き出した手法とのこと。
カール・グスタフ・ユングの心理学的類型論を基に開発されたMBTIなど、これまでにも個人の情報を解析して活用しようとする動きはありましたが、これまでの自己解析メソッドは現実のビジネスで成功を収めるために有効なツールであると証明することはできていませんでした。
By JD Hancock
新しくShepherdさんが発見したのは「ビジネスで成功するチームを作る」ために重要なデータが何かを突きとめるためのアルゴリズム。彼はこのアルゴリズムを何と「オンラインデート」から導き出したそうです。Shepherdさんいわく「オンラインデートは非常に素晴らしい場で、これを使えば簡単な質問に対する回答をたくさんデータとして得られ、『どの2人をペアにすれば素晴らしい関係を築くことが可能か』を導き出すには最適でした」と言います。Shepherdさんは「最も成功したペア」の定義として、オンラインデートサイトでペアになった組み合わせの内、デートサイトのアカウントを削除することを約束したペアと設定。
そして「最も成功したペア」を見つけ出すために、被験者に対して「ホラー映画は好きですか?」や「最初のデートでセックスをしますか?」などの質問を書き連ねたアンケートに回答してもらい、可能な限り恋愛に関する要素を丸裸にしたそうです。その後、これらの質問に対する回答データと行動科学における最新の学術的思考とを組み合わせることで、ビジネス上で成功する関係性、つまり「ビジネスで成功するチームを作る」ための基本的なアルゴリズムを導き出したとのこと。
By anyjazz65
その後、Shepherdさんは自身の作成したアルゴリズムが正しい結果を導き出すのかどうかを検証するために、ブリストル大学のSpark!というビジネスコンペに足を運びました。このコンペは面識のない8人で1組のチームを形成し、8チームが1週間にわたってアイデアを出し合って最終的に投資家の前でプレゼンテーションを行い優劣を競うというもの。Shepherdさんはこのコンペが始まる前に、参加者に自身の作成したアルゴリズムに沿った25個の質問に答えてもらい、質問結果から8つのチームをランク付けしてその結果をメモしたものを封筒に入れてコンペの審査員に「コンペの結果が出た後にこの封筒を開けてください」とお願いしました。
Shepherdさんはコンペ参加者の持つスキルや経験、教養などについて全く情報を持っていませんでしたが、「大量のスペルミスに対してイライラするかどうか」などに対する回答をもらいます。その結果、コンペ開始前に作成したメモは、コンペの優勝者を当てるだけでなく、詳細な順位まで正確に当てることに成功したそうです。この検証の後にもShepherdさんは自身のアルゴリズムの正確さを証明するために、何度もさまざまなコンペの順位予想を行い、順位予想の正確率が95%以上であったことも明らかにしており、さらにShepherdさんのアンケートが導き出す個人個人に対する評価が、企業の幹部職員が面接から導き出す評価よりもはるかに優れたものとなることも判明しています。
By bpsusf
ノースウェスタン大学の社会学者であるLauren Riveraさんは、2006年から3年間に渡って世界的な投資銀行や経営コンサルタント、法律事務所などの新人募集を調査し、新入社員を雇う際の意志決定において最も決定的な要因となるのは「余暇の過ごし方」であることを明らかにしています。これがどういうことかというと、ゴルフをたしなむ採用担当はゴルフを好きな人を採用し、テニスを趣味としている採用担当はテニスが好きな新人を採用したということです。しかし、Shepherdさんによると「他人と一緒に働いて成功を収めるには、基本的な価値観が違う者同士を組ませるのが良い」とのことで、この理論からすると既存の面接形式の採用方法は、より良いビジネスパートナーを選ぶには不向きな方法であることが分かります。
◆従業員分析事業を展開する「Evolv」
これまで企業とマネージャーは従業員を数字化し、さまざまな要素を解析してきました。シリコンバレーを拠点に急成長中のEvolvは、企業のビッグデータを活用して、従業員の労働力を最適化するための分析を行ってくれるサービスを提供しています。同社の創立者であるMax Simkoffさんと彼のビジネスパートナーは、小規模な民間保健福祉企業で働いていた際に「大多数の従業員がパートタイムであり、初級練度のまま1年未満で辞めてしまい、経験のあるパートを会社にとどめておくことができない」という問題を抱えていました。
この時Simkoffさんは従業員データを分析し、より長い期間仕事に従事してくれる従業員を探し出すためのパッケージソフトが存在するに違いない、と考えていたそうです。しかし、彼がソフトを探した2006年当時にはそういったものが存在していなかったそうで、「これまでは、例えば誰がどれだけの期間仕事をしてきたのか、どういった従業員が生産的で長期間働いてくれるのか、といったことを全て直感に頼っていた」とSimkoffさん。このように数値化されないまま放置されていた要素を、SimkoffさんはEvolvを立ち上げることで計測しまくり従業員分析事業に着手し始めることになりました。
Evolvでは「これまでどういった企業でどれだけの期間職業に従事してきたか」「どのような実績を残したか」「マネージャーは誰か」「給料の増加率はどれくらいだったのか」などの情報を集め、これらと国の経済情報や地方の労働市場情報、さらには住宅価格などを加味して分析が行われるとのこと。また、Evolvによると「我々の機械学習エンジンは同一企業内に蓄えられた何億もの報告書を調査することができ、さらには文化的な違いや地域格差によって説明できる個人差を学習することも可能。さらにシステムには顧客企業で働く従業員がいつ頃辞めそうかをある程度正確に予言することもできる」とのことです。
By Eduardo Merille
これらを基にEvolvでは顧客企業に「起こりうる事態別の分析結果」を提供しており、顧客企業が従業員に対してボーナスを与えるべきなのか、だとかトレーニングを行うべきなのか、といった行動指針を示してくれるそうです。Evolvは「同社のサービスを使用すれば、従業員損耗率を15%縮小可能」という広告を出しており、同社のクライアントにはFortuneが選出するBest Companies to Work For 2014の中の20%も含まれているとのこと。
◆Googleの採用方針
Googleは世界一働きがいのある企業に選出されるくらいに働き心地が良いとされている企業ですが、これは年次の従業員調査書である「Googlegeist」と、過ごしやすい企業を作るために心理学者や行動主義経済学者を雇って全ての従業員が「社内での生活をどう感じているか」や「食事はおいしいか」や「使用するPCのスクリーンサイズは適切か」などのさまざまな要素を調査し尽くしている成果であると言えそうです。
By Trey Ratcliff
Googleのグローバル採用担当の副責任者を務めるSunil Chandraさんは、Googleでは採用が最も重要な要素のひとつであるとコメントしており、採用プロセスに多くの従業員が関わることを明かしています。また、Googleは年間300万件以上の求職希望を受け取っており、これらひとつひとつを組織的に分析することで、過去は10~12回も行われていた面接の回数が現在では4、5回にまで縮小することに成功したとのこと。他にも、Googleの集めた大量の採用関連データから、テストの結果は実際の入社後のパフォーマンスとは全く別物であることも分かっている、とビッグデータの活用により明らかになった要素を教えてくれています。
Chandraさんは採用で使われている“秘密のアルゴリズム”はないと語りましたが、面接テクニックに秀でた人よりも、テストの結果が良かったり謙虚なリーダーとしての資質を持っていたりチームワークのできるような人材を探し求めている、とコメント。さらに、全ての審査を一部の担当者のみで行ってしまうことにより生じるであろう偏りが生じないように注意を払っていることを明かし、「我々は認識能力や学習能力、リーダーシップなどを求めており、いわゆるGoogleらしさを大事にしているのです」と述べています。
By Alex France
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