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世界最速のBitcoinマイニングチップを販売する「HashFast」が四面楚歌状態になった理由とは?


世界最速・低電力とうたうBitcoinマイニングASIC(集積回路)を販売する「HashFast」は、2013年の夏以来、顧客から次々と訴訟を受けている四面楚歌状態の企業。2014年に入ってからも2件の連邦裁判所への告訴が相次ぎ、5件の分割調停を受けている状態ですが、一体なぜそのような事態に陥っているのかが報じられています。

Meet HashFast, another Bitcoin miner manufacturer accused of fraud | Ars Technica
http://arstechnica.com/tech-policy/2014/05/meet-hashfast-another-bitcoin-miner-manufacturer-accused-of-fraud/


Ars TechnicaによるとHashFastのいざこざは、違法闇サイト「Silk Road」の崩壊や、世界最大のBitcoin取引所「Mt. Gox」が倒産したことで右肩上がりに増加を続ける訴訟問題に関連づけられているとのこと。

HashFastは製品の購入者に対して納品が行えず、ずるずると納期が延びていった経緯があり、「HashFastの虚言リスト」が作成されるほど。2013年8月にHashFastのサイモン・バーバーCTOは、Bitcoin Forumで「BTCの注文が殺到しています。ありえない話ですが(BTCで製品の支払いを行った)顧客へのBTCの全額払い戻しができるでしょう」と約束。しかしこの宣言が実現されることはなく、2013年9月に納期が遅れていた400GH/秒のBTCマイニングASIC「Baby Jet」を発送すると発表していますが、これも実現していません。

List of Lies - HashFast Wiki
http://hashfast.org/List_of_Lies


発送スケジュールは遅れ続け、「2013年11月中頃に製品の発送予定」という発表を最後に近況報告はストップ。払い戻しを求める顧客からのクレームを無視する形になり、最終的に製品の発送は2014年1月までずれこみました。エドゥアルド・デ・カストロCEOから正式に「お客様への謝罪」というタイトルのブログが投稿され、納期の遅れを謝罪するとともに払い戻しにも応じる旨を発表。

An Apology to Our Customers | HashFast
http://hashfast.com/an-apology-to-our-customers/


当時HashFastは、長期の納期遅延にも関わらず800GH/秒でマイニングを可能にするとうたう「Yoli Evo」を最低価格8888ドル(約90万円)という高価格で販売していたとのこと。しかし、時間がたつにつれてマイニングは困難になっていき、BTC取引価格は下がり続けたため、高性能のチップを使っても、顧客はマイニングで利益を得るどころか損失を出してしまう状態に。この時顧客が起こした5件の調停の内3件を担当していた弁護士は、「HashFastがいつ支払い不能になってしまうのかが唯一の心配事で、なぜ彼らがドルによる払い戻しすら行わないのかわかりません。クライアントは迅速な仲裁裁定書を求めています」とHashFastの当時の状況を推測しています。


HashFastの財政状況は悪化の一途をたどり、2014年5月に「私たちが詐欺師ではない理由」というブログポストの中で、財政難を乗り切るため従業員を半分解雇したことを発表。「HashFastの誰もが、あなたのお金でビーチに横たわってマイタイを飲んでいる訳ではありません」と、1号機ASICの失敗分を回収できていないことや、開発費に多くの資金を費やしたことなどを公表。また、「BTCを自社採掘しているのではないか?」という疑いについて、「内部的には開発のためのプロトタイプを動作させているだけで、BTCの残高は保持していない。もし自社採掘を行っていれば資産を残せていたのかもしれない」と述べています。

On Why We’re Not Scammers | HashFast
http://hashfast.com/on-why-were-not-scammers/


2014年5月12日にHashFastの経営陣は、2013年後半に同社の運命を大きく変えた失敗を犯した経緯について、Ars Technicaのインタビューに答えています。現状のHashFastはできる限りの払い戻しに応じているため、何万におよぶチップの在庫を抱えており、現金はほとんど残っていないとのこと。カストロCEOは「私たちは現在、教会のネズミのように貧乏です」と話しています。

Embattled CEO of Bitcoin miner firm: “We are as poor as church mice” | Ars Technica
http://arstechnica.com/tech-policy/2014/05/embattled-ceo-of-bitcoin-miner-firm-we-are-as-poor-as-church-mice/


左がバーバーCTO、中央がジョー・ラッセル経理マネージャー、右に立つのがカストロCEO。一様に疲弊した表情がうかがえます。


「最大の失敗とは?」という記者の質問に対しては、「2013年9月の後半に、請負業者に回路の設計を依頼してしまったことが始まりです」と、CEOとCTOの2人が同意して伝えました。請負業者は製品テストの難解な部分を隠匿していたとのことで、「もし彼らを雇用していなければ、一連の納期遅延も起こらなかったかもしれない」とコメント。その後、2013年12月末日に製品販売を一時的に全てストップしたものの、顧客は激怒して訴訟および調停が起こり始めたということです。


なお、Ars TechnicaがHashFastのオフィスを取材した様子は以下から見ることができます。

Gallery: Inside HashFast, a struggling Bitcoin chipmaker startup | Ars Technica
http://arstechnica.com/business/2014/05/gallery-inside-hashfast-a-struggling-bitcoin-chipmaker-startup/

HashFastのオフィスは、1929年に建てられたサンフランシスコの歴史的ビルの6階に入っています。


オフィスの入り口には看板。


従業員は半分になっていますが、こぢんまりとしたオフィスのようです。


「世界最速のマイニングソフト」がうたい文句のスタートアップ企業HashFastは、「販売をストップしたこと」および「顧客とのコミュニケーションを断ってしまったこと」が最大の誤りだったと認めており、「我々はあの地獄の中だったとしてもコミュニケーションを取り続け、情報を発信し続けるべきだったのです」と話しました。現在も製品の販売を続けていますが、得られる利益のほとんど全てを払い戻しや返済に回しているとのことです。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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