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外国語で話すと論理的かつ冷静な決断ができるという「外国語効果」とは?

by World Bank Photo Collection

「『相手が理解する言葉』で話せば、言葉は相手の頭にまで届くでしょう。でももし『相手の言葉』で話したら、言葉は相手の心にまで届きます」という言葉を残した元南アフリカ大統領のネルソン・マンデラ氏が無意識に使っていたと言われるのが「外国語効果」です。交渉力に優れていたマンデラ氏が使っていた外国語効果とはどんなものなのか、Mapping Ignoranceがまとめています。

Mandela was right: the Foreign Language Effect | Language | Mapping Ignorance
http://mappingignorance.org/2014/02/03/mandela-was-right-the-foreign-language-effect/



マンデラ元大統領は1964年に国家反逆罪で終身刑の判決を受け、ケープタウンから12kmの沖合に浮かぶロベン島に27年間にわたって収監されました。収監された当初はアフリカ系の人々を侮辱する白人の看守に対して怒りを抱いていたマンデラ氏ですが、彼らの話すアフリカーンス語を学び始め、看守たちと会話するうちに怒りを抱くことは無意味だと気づき始めます。

その獄中生活は映画にもなっており、マンデラ氏の故郷の言葉である「コサ語」を話せるグレゴリーという看守がマンデラ氏の息子の死に対してお悔やみを言ったことから、2人の間に友好的な関係が作られていく……というエピソードが描かれています。

by BK

アフリカーンス語を話しだしたマンデラ氏に対し、多くのアフリカ系の活動家たちは怒りをあらわにしました。しかし、当時の南アフリカ共和国大統領フレデリック・ウィレム・デクラーク氏と極秘の会談を行った際、マンデラ氏はデクラーク大統領の母国語を使って会話することで、図らずも「外国語効果」を利用して、会談を自分にとって有利に運ぶことができたのも事実です。

2011年に行われた「The Foreign-Language Effect」という研究によると、人は外国語を使って何かを決断する時、母国語を使った決断と同じ判断はできないとのこと。決断を下す際には多くの要素が混ざり合うものですが、決断によって「持っている物を失うことに対する嫌悪感」は「これまでなかったものを手に入れる喜び」よりも大きな割合を占めると考えられています。しかし、外国語を使う時、この「持っている物を失うことに対する嫌悪感」が消えるのです。

たとえば、「これまでになかった新種の病気が流行して、薬がなければ60万人もの人が死ぬ」という状況が発生し、その病気に対する薬として、20万人の命を助けることができる「薬A」と、3分の1の確率で全員を助けることができる「薬B」の2種類の薬が存在していたとします。

この状況を説明する際、「持っている物を失うことに対する嫌悪感(損失)」の立場で捉えると「『薬A』を使えば40万人の人が死ぬが、『薬B』を使うと33.3%の確率で全員が生き延びることができ、66.6%の確率で全員が死ぬ」となるのに対し、「これまでなかったものを手に入れる喜び(獲得)」の立場での見方では「『薬A』を選べば20万人の人が生き延びられるが、『薬B』を選べば33.3%の確率で全員が生き延び、66.6%の確率で全員死ぬ」という捉え方の違いが生まれます。

by ThomasThomas

2つの説明は同じことを別の視点から捉えたものなのですが、「生存者の数(獲得)」に焦点が当てられた時、多くの人はリスクの少ない薬Aを選び、「死者の数(損失)」に焦点が当てられた時はリスクのある薬Bを選ぶ傾向にあります。

この現象を確かめるために、研究チームは検証に参加した学生を「母国語は英語だが平均で3年間にわたって日本語を学んだ121人のグループ」と「母国語は韓国語だが10年ほど英語を学んだ144人のグループ」そして「母国語は英語だがパリでフランス語を約6年間学んだ103人のグループ」の3つに分け、それぞれのグループの学生に対し、ランダムに母国語か外国語かを割り当てていき、上記の問題に対してAの薬かBの薬かを選んでもらいました。

その結果、母国語で答えた学生は損失に対する嫌悪感を明らかにしたのに対し、外国語で答えた学生からは損失に対する嫌悪感が薄れ、安全な選択肢とリスクの高い選択肢をほぼ同じ割合で選ぶようになったのです。


この結果をもとに、研究チームは「外国語を使うと問題に対して心理的距離を取ることができ、慎重になる」と結論づけています。外国語は私たちの感情と強く結びついていないため、例え一定の言葉に焦点が当てられていても、冷静に考えて論理的に結論を出すことが可能なのです。

別の角度からも外国語効果は研究されています。700人の被験者を対象とした実験では、外国語を使う場合、人は直感的な選択を行いにくくなる傾向があることが判明。さらに「感情が重要な要素となってくる時に外国語効果が現れる」ということも分かりました。感情的な部分や情緒的な部分が含まれない問題の場合、外国語効果は発揮されないのです。

マンデラ氏の話に戻ると、アパルトヘイトの問題はマンデラ氏とデクラーク元大統領の2人にとっての「感情的な問題」でした。では、どちらがより冷静で、分析的で、合理的な考えを持つことができたのか?というと、この時「外国語」を使っていたマンデラ氏のはず。会談にその他多くの要素が含まれていたことは間違いないのですが、「外国語効果」はこの時、マンデラ氏の側に働いていたのです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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