土星の衛星「エンケラドゥス」での水の存在が重力マップ調査でより確実に
By kleversonsilva
以前より土星の衛星の1つである「エンケラドゥス」には水が存在する可能性があるといわれてきましたが、新たに地表の重力分布を調査したところ、その地下には大量の水が存在していることがほぼ確実となりました。これは太陽系に地球外生命が存在することにつながる発見です。
The Gravity Field and Interior Structure of Enceladus
http://www.sciencemag.org/content/344/6179/78
Under Icy Surface of a Saturn Moon Lies a Sea of Water, Scientists Say - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2014/04/04/science/space/a-moon-of-saturn-has-a-sea-scientists-say.html?hp&_r=0
直径が約500kmあり、氷に覆われているために光を反射して明るく見える衛星エンケラドゥスは、2005年の土星探査機カッシーニによる調査で、表面にごく微量の大気が存在していることがわかっています。
By Miyem Supriyati
大気の主成分は水蒸気とみられていますが、エンケラドゥスは重力が弱く大気はすぐ宇宙に逃げてしまって留めておくことが不可能なので、微量の大気(水蒸気)があるということは常に供給し続けるための仕組みがあるのだろうと予想されていました。
2006年、カッシーニは氷で覆われているエンケラドゥスの表面に無数のひび割れが存在していることを発見します。「Tiger Stripes」と命名されたこのひび割れは継続的に生みだされていることから、何らかの仕組みで内部から氷が供給されているものと推測されていました。そして、このひび割れからは氷の粒子や水蒸気が噴出していることが確認されたことから、エンケラドゥスの内部には液体の水が存在していることが確実視されるようになりました。
By NASA
水の存在を確かにしたのもカッシーニでした。カッシーニには水の存在を観測する機器は搭載されていなかったのですが、衛星の重力マップを作成するために実施した3回のスイングバイにより、エンケラドゥスの南極部分の重力が予測されていたよりも弱かったことを発見。
天体が持つ重力は質量によって変化することから、エンケラドゥスの調査を行ってきたスティーブンソン博士は、「カッシーニの調査結果は、衛星表面の氷の下には氷よりも密度の高い物質、おそらく水が存在していることを示しています」とコメント。水は氷よりも密度が8%高く、氷の地下32km~40kmの間に水の層が存在すると仮定して計算すると実際の現象と一致するとのこと。予想される水の厚さは約9kmで、南極を中心に赤道付近にまで広がっており、その大きさは五大湖の一つであるスペリオル湖に匹敵すると考えられています。
エンケラドゥス内部の様子を示した想像図がこちら。衛星の直径は約500kmと、アリゾナ州と同じぐらいの規模。表面は氷の層で覆われ、岩石でできたコアとの摩擦によって溶けた水が、ひび割れから地表に噴出しているとみられています。
この発見により、新たに太陽系内における地球外生命の可能性が語られるようになっています。現時点で生命の可能性が考えられているのは火星、エンケラドゥス、木星の衛星エウロパ、そしてエンケラドゥスと同じ土星の衛星であるタイタンの4つ。生命が存在するために必要な要素は「液体の水」「エネルギー」「炭素」「窒素」といわれていますが、火星には窒素が不足しており、惑星表面は乾燥して非常に低温な状態。エウロパには未確認ながら氷の地下に水が存在していると考えられており、水の噴出は見られるものの規模が小さいものと観測されています。タイタンにも海が存在しているために生命の可能性はあると考えられていますが、その海はメタンでできており、仮に生命が存在するとしても地球のものとは別の形態をしていると考えられています。
エンケラドゥスに生命が存在するのか、あるいは生命が存在したという痕跡があるのか、確認する方法は「天体のサンプルを持ち帰ること」だとNASA・エイムズ宇宙センター研究員だったクリストファー・マッケイ博士は語っています。新たに探査機を衛星の近くまで飛ばして空間に漂う微量物質を採取して地球に持ち帰るというものですが、エンケラドゥスの重力に対応できるのであれば、かつて日本の「はやぶさ」が小惑星イトカワのサンプルを持ち帰ったような方法も可能になるのかもしれません。はたして、人類は地球外の生命体を見つけることができるのでしょうか。
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