宇宙飛行士が最も忠実に宇宙空間を再現した映画として「ゼロ・グラビティ」を評価
第70回ヴェネツィア国際映画祭のオープニング作品に選ばれた映画「ゼロ・グラビティ(原題:Gravity)」は、クエンティン・タランティーノ監督が絶賛し、映画評論家による映画レビューをまとめてシビアな批評を下すRotten Tomatoesにおいても満点に近い評価を得ており、全米で大ヒットを記録中で早くも第86回アカデミー賞の本命とまで言われています。出演陣がサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーの2人しかいない、という異例のキャスティングも驚きですが、無重力である宇宙空間を描いた映像もゼロ・グラビティが高く評価されている理由の1つで、実際のNASAの宇宙飛行士が「最も忠実に宇宙空間を再現できている映画」と絶賛するレビューをQuoraに投稿しています。
Reviews of: Gravity (2013 movie) - Quora
http://www.quora.com/Reviews-of-Gravity-2013-movie
「ゼロ・グラビティ」が公開されてからというもの、多数の人に「ゼロ・グラビティの宇宙空間の描写は本物と比べてどうですか?」と質問されているというGarrett Reisman氏は、これまでに3回宇宙遊泳を経験したことのあるNASAの宇宙飛行士。Reisman氏によると、ゼロ・グラビティの宇宙遊泳のシーンは今までのどの映画よりも忠実に再現されており、また、宇宙空間でヘルメットごしに見える地球の姿も本物そっくりであったとのこと。
Reisman氏は、ゼロ・グラビティの宇宙遊泳描写、特に無重力空間における人間やモノの動きがかなり正確でとても驚いたそうです。映画中に登場するソユーズや国際宇宙ステーションも正確に再現されており、バルブやボタンの位置まで同じでした。
「僕が宇宙ステーションの外に出て作業している時に、パートナーのリックが機体に直径1mmの穴が空いていることに気づいたんです。穴の原因は小さなスペースデブリで、もし自分の体に当たっていたらと思うとぞっとしたことを覚えています」とReisman氏は語り、映画中でサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーを苦しめる危険なスペースデブリについても正確に表現されていることを評価しています。
ただし、宇宙飛行士の観点から見て「これはあり得ない」というシーンも映画中に存在したとのこと.
◆ここから先の内容には映画の核心に触れるネタバレを含んでいるので、これから映画を観覧するという人は注意が必要です
ゼロ・グラビティにおいて「いくらなんでもあり得ない」というシーンがあり、1つは「ジョージ・クルーニーとサンドラ・ブロックが軟着陸用のジェットを使って、壊れたスペースシャトルコロンビアから国際宇宙ステーションまで移動する」シーンです。Reisman氏によると、無重力の宇宙空間を軟着陸用のジェットだけで一定方向に進むことは物理学的に不可能であるとのこと。
また、Reisman氏は「宇宙空間に放り出されそうになったジョージ・クルーニーのワイヤーをサンドラ・ブロックが掴むものの、ブロックを救うためにクルーニーが自ら手を離す」シーンについても「ジョージ・クルーニーが自らワイヤーを外す必要は全くなかった」と指摘しています。
サンドラ・ブロックがジョージ・クルーニーを手で捕まえた時点で、クルーニーは荷重がゼロになり宇宙空間に浮遊している状態になるので、ブロックがちょっと引っ張るだけで助かったそうです。
先に挙げた間違いがあるにもかかわらずReisman氏は「もし私が、揚げ足取りになれば、細かいながら間違っている点は複数あります。でも、ゼロ・グラビティはエンターテイメントでありドキュメンタリーではないのです。エンターテイメント作品としては、ゼロ・グラビティは最も忠実に宇宙空間を再現できている映画だと思う」と語っています。
なお、2013年12月13日から日本でも公開されるゼロ・グラビティの予告編第1弾~5弾がYouTubeで公開されています。
ゼロ・グラビティの予告編第1弾は下記から確認できます。
映画『ゼロ・グラビティ』予告1【HD】 2013年12月13日公開 - YouTube
宇宙を漂う2人
「素晴らしい…」
完璧な世界
宇宙から見える地球は壮大。
何かを発見するサンドラ・ブロック。
次の瞬間、スペースシャトルが粉々に。
「隕石か?」
破片が周囲に飛び散ります
スペースシャトルのアームごとサンドラ・ブロックは宇宙空間に放り出されてしまいます。
アームに付けられているベルトを外すと……
真っ暗な宇宙空間に吹っ飛んでいきます。
何もつかまるものがない宇宙空間。
サンドラ・ブロックはパニックに陥ります。
「応答せよ!」
「息が…!」
「つかまれ!」と手を伸ばしますが……
無情にもつかむことはできませんでした。
「宇宙の」
「暗闇が」
ワイヤ1本で宙ぶらりん
「待っている」
爆発するスペースシャトル。
なんとかつかまろうとするサンドラ・ブロック。
ピンチの連続。
「誰か 答えて……」
第1弾の予告編の時点で相当衝撃的ですが、予告編の第2弾ではスペースシャトルがぶっ壊されていくところを詳しく見ることができます。
映画『ゼロ・グラビティ』予告2 衝突編【HD】 2013年12月13日公開 - YouTube
「衛星の破片が接近!」
「衝突するぞ!」
「急げ!」
「ここから離れろ!」
「破片がシャトルに!」
そして吹き飛ぶアームの先にはサンドラ・ブロック。
「急げ!戻れなくなるぞ!」
サンドラ・ブロックは宇宙のかなたへ飛ばされてしまうのか?
さらに、予告編第3弾は「漂流編」ということで、サンドラ・ブロックは宇宙を漂流することになってしまった模様。
映画『ゼロ・グラビティ』予告3 漂流編【HD】 2013年12月13日公開 - YouTube
「警告:低酸素」
サンドラ・ブロックは助けを求めている様子。
船体から離れて流されている状況です。
「誰か……」
「聞こえますか?」
「返事をして」
第4弾は絶望編。すでに絶望的な状況ですが、さらなる絶望が2人を襲います。
映画『ゼロ・グラビティ』予告4 絶望編【HD】 2013年12月13日公開 - YouTube
衝突してしまいそうな2人
吹っ飛ばされそうになりながらも船体になんとかつかまります。
安心したのもつかの間で、見上げると……
そこには落ちてくるジョージ・クルーニーの姿。
ぶつかった2人は船体から離れていきます。
「流される!」
「流されたら終わりだ!」
なんとか足だけワイヤに絡まって助かります。
宇宙で逆さまになった状態のサンドラ・ブロック
そして、現在公開されている最新のものが予告編第5弾。宇宙船内で起きる火災など、まだまだピンチが続くことがわかります。
映画『ゼロ・グラビティ』予告5【HD】 2013年12月13日公開 - YouTube
「地球の上空60万メートル 音のない世界 気圧もなく 酸素もない」
「宇宙で生命は存続できない」
「衛星の破片が衝突!」
ジョージ・クルーニーがサンドラ・ブロックに「地球に帰りを待つ人は?」と聞きます。
サンドラ・ブロックには娘がいました。
宇宙船内では火災も発生。
「娘に伝えて」
「私は諦めないと」
ワイヤにぶら下がるジョージ・クルーニー。
果たして2人は無事地球に帰り着けるのか?
映画「ゼロ・グラビティ」は12月13日から全国公開予定です。
映画『ゼロ・グラビティ』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/
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