サイエンス

622MbpsでNASAがレーザーを使った宇宙とのデータ通信に成功


NASA(アメリカ航空宇宙局)が次世代の宇宙通信技術となるレーザー通信の実験に成功しました。最大で622Mbpsの速度を記録しており、将来の高速・大容量のデータ通信への応用が期待されています。

NASA Laser Communication System Sets Record with Data Transmissions to and from Moon | NASA
http://www.nasa.gov/press/2013/october/nasa-laser-communication-system-sets-record-with-data-transmissions-to-and-from


NASA shoots lasers at the moon for new communication speed record | The Verge
http://www.theverge.com/2013/10/23/4946818/nasa-shoots-lasers-at-the-moon-for-622mbps-download-speed

「NASAのレーザー通信システムが月との双方向データ通信速度の記録を樹立」と題されたNASAの発表によると、NASAは地球から約38万5000キロ離れた月の周りを周回する月探査機LADEEとアメリカ・ニューメキシコ州の地上設備との間で実施されたレーザー通信実験で、622Mbpsという速度でのデータ受信に成功して新記録を樹立しました。また、より信頼性の高いエラーフリー通信においては20Mbpsのスピードが記録されました。これまでは、2013年初頭に実施された月周回衛星ルナー・リコネサンス・オービターを使った実験で、名画「モナ・リザ」の画像データを通信する際に記録された300bpsが最高でしたが、今回はそれを大幅に上回る記録となりました。

今回のLLCD(Lunar Laser Communication Demonstration)プログラムは、従来の高周波電波(RF)による通信をレーザービームに置き換えるための実験プログラムで、NASAが初めて宇宙に乗り出して以来使われてきた電波方式が直面している通信スピードの限界を押し上げるものとして期待を集めています。


このLADEEを使ったLLCDプログラムのムービーがYouTubeのNASA公式チャンネルで公開されています。

NASA | LLCD Downloads the Future - YouTube


1968年12月24日、アポロ8号は有名な地球の出を撮影しましたが、地上の人びとがその写真を目にするまでに数日かかりました。


しかし、現在では人工衛星を使ったデータ通信が実用化されており、短時間の間にデータを共有することができます。


地上からLADEEに向け、接続要求の電波信号(ビーコン)が発されると……


それを感知したLADEEが地上に向け、電波を返します。


双方が接続状態になりました。


この状態で、レーザーによるデータ通信が開始される仕組みです。


NASAのSCaN(Space Communications and Navigation)の副長官であるバドリ・ヨーナス氏はこの成功について「LLCDは、次世代の宇宙通信環境を構築するための最初の第一歩になります。近い将来、この技術を使った通信が実用化されていくと考えています」とコメントしています。NASAではこの高速・大容量のデータ通信技術を使い、従来よりも高解像度の画像データや深宇宙で撮影された3D動画データなどを取り扱っていきたいとしています。このLLCDプログラムは、これに続くLCRD(Laser Communications Relay Demonstration)プログラムに引き継がれ、過酷な宇宙空間で数年間にわたる実証実験が行われていく予定です。システム稼働開始は2017年が予定されています。

LADEEは今年9月6日に打ち上げられた月探査機で、10月6日に月を周回する軌道投入に成功しました。月の大気や塵の構成を観測し、将来の月探査へのデータ取得を目的としています。


このLADEEは、打ち上げの際にカエルが一緒に「打ち上がった」写真でも知られています。

Photo by nasa
http://instagram.com/p/eKfsSLIaB9

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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