有料会員制でありながら売り上げを伸ばし続けるコストコ成功の秘密とは？

By takako tominaga

コストコはウェアハウス・クラブと呼ばれるアメリカの会員制倉庫型スーパーマーケットであり、1999年に日本の福岡県に1号店をオープンして以来じわじわと店舗を増やし、2013年5月の時点では全国に15店舗を有しています。アメリカの小売り市場でも大手スーパーマーケットのウォルマートに続いて2番手に位置し、競合社がインターネットに顧客を奪われていく中で売り上げが2009年から39％上昇し株価も2倍になったコストコは、他の小売り業ではあまり見られない戦略をとっているとのことで、Bloomberg Businessweekがコストコの成功の秘密に迫っています。

Costco CEO Craig Jelinek Leads the Cheapest, Happiest Company in the World - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2013-06-06/costco-ceo-craig-jelinek-leads-the-cheapest-happiest-company-in-the-world

The secret of Costco’s success revealed! (hint: no MBAs need apply) | Washington Monthly
https://washingtonmonthly.com/2013/06/09/the-secret-of-costcos-success-revealed-hint-no-mbas-need-apply/

アメリカで最もケチな産業の1つである小売り業は労働者に対する劣悪な労働環境に関する問題が後を絶たず、2013年の5月には、マイアミ、ボストン、サンフランシスコで大手スーパーマーケットであるウォルマートの従業員が1週間にも及ぶストライキを敢行したばかり。また、通販サイトであるAmazon.comの従業員もドイツでストライキを起こしています。しかしながら、コストコには開業して以来30年間1度も労働紛争というものは起こりませんでした。

By OURWalmart

コストコで働く59歳のジョー・カルチェロさんは年収5万2700ドル(約520万)あり年間5週間の休みを取ることが可能で26年間コストコで勤務してきましたが、1度も解雇の心配をしたことがないとのこと。それどころか、景気が後退してきた2009年には賃金の増額を言い渡され、毎日コストコで働けることに感謝していると言います。

コストコの従業員の給料を時給で表すと約20ドル(約2000円)で、ウォルマートの従業員1時間当たりの給料約12ドル(1200円)を大きく上回っています。また、ウォルマートが半分以上の従業員に健康保険を与えていると発言している中、コストコの従業員の88％は会社の健康保険を所持しています。

By Froschmann

コストコのCEOであるクレイグ・イェリネク氏は、「私は従業員が幸せな労働環境で働くことが会社に利益をもたらすと信じています。従業員は生活する上で必要なお金を稼がなければならず健康保険も必要。従業員に十分な給料を支払えば、お金を循環させることができ健康な国を作ることができるんです。すごくシンプルなことですよ」と言います。

また、2009年に景気が後退し売り上げが下落、他企業が一時解雇と賃金カットでなんとか不景気を乗り越えようとしていた中、コストコのCFOであるリチャード・ギャランティ氏は従業員の給料を1時間当たり1.5ドル(150円)上げることを承認。もし平均賃金が2あるいは3ドル低ければ、コストコはより多くの利益を生み出すことができますか？という質問に対して、ギャランティ氏は「その質問の答えはYesですが、我々は平均賃金を下げるということはしません」と答えています。

By Thomas Guignard

MITスローン経営大学院の事業管理部のズィネップ・トン準教授よれば、ほとんどの小売り業者は、従業員の給料をコスト削減の対象としており、従業員に投資するということをしなくなってしまっているとのこと。反対にノードストローム、セフォラ、ホールフーズ・マーケットといった従業員に投資して優遇するコストコライクな経営哲学を持つ企業はぐんぐんと成長しているそうです。

またコストコはビジネススクール出身者やMBA取得者を雇用しないという特徴も持っています。The Washington Monthlyのキャスリン・ゲイヤー記者によると、このコストコの雇用方針はビジネススクールや大学院で学生が勉強するトレンディーなマネージメント理論やミクロ経済学などより、コストコが自社で培った経験から学んだ独自の経営理論を重視しているとのこと。ビジネススクールの教科書で学ぶような理論は、実際のビジネスに対してほとんど実用的ではないとゲイヤー記者は指摘します。

By John Liu

コストコのウェアハウスマネージャーのうち70％はレジ打ちやカートを整理することから仕事を始めた人たちであり、従業員が会社を辞めるといったことはめったにないようです。ゲイヤー記者によれば、コストコのビジネスモデルは自社の従業員に投資することでありMBAの教科書には載っていないとのことで、コストコがビジネススクール出身者やMBA取得者を雇わないことについて何も不思議なことではないとしています。

つまり、俗に言うところのブラック企業ではなく、その逆のホワイト企業として経営してもきちんと利益は出て、会社も大きくなるということをコストコは示しているわけです。