商品に適切な値段を付けるための4つの原則
by Matt Koenig
スタートアップで商品であるソフトウェアを開発・販売するにあたって非常に重要になってくるのが「価格はどのくらいに設定すればいいのか?」ということ。誰もが頭を悩ます点なのですが、参考となるべき講義や情報が少ない……ということで、Intercomが商品に適正な値段をつけるために守るべき4原則を示しています。
Four Pricing Principles to Never Forget | Inside Intercom
http://insideintercom.io/four-pricing-principals-to-never-forget/
価格を決定するにあたって、「誰もが自分の商品にお金を払うことで幸せになるべき」「全ての顧客から最大の収益を引き出す完璧な価格があるはず」「一度価格を決めたらもう二度と変更できない」「これらの考えによって値上げを無限に遅らせること」というのが、タブーとなる考え・行動であるとのこと。どの考えもおかしいところなどないように思えますが、実際にスタートアップが商品の値段をつける時はこれらの考えから離れる必要があるようです。
◆01:想定よりも早い段階で有料の商品を作る
この原則は商品開発の初期、あなたが顧客からフィードバックを得て試行錯誤している時において特に有用です。なぜなら、経験則として、お金を払わない顧客から得るフィードバックは商品に機能を加えるものが多く、お金を払っている顧客から得るフィードバックは製品の改良に焦点を当てる傾向が強いのです。ソフトウェアを購入しない顧客や月々の割引コードを求めるような顧客からフィードバックを得る価値はあまりありません。「もしこの商品がこうだったら買うのに……」と言う人は多くいますが、その多くはありもしない商品に期待を抱いている人々なのです。
なお、Googleで「こうなった時にアップグレードする」という言葉を検索すると、検索結果には約130万件が表示されます。
◆02:自分が十分だと思う以上の料金を設定する
4人で経営する会社は一般的に小さな会社だというイメージがあります。このような会社は小さな規模で商品を作ったり、時には無料プランのみだったりしますが、それにも関わらず支出は膨大です。年間で最低1万6000ドル(約160万円)は必要になります。
そのため、小規模のスタートアップの中にも毎月IBMのエンジニアチームに対し19ドル(約2000円)の使用料を請求しているところもあります。ソフトウェアにおいて月19ドルはかなり高額に聞こえますが、もしソフトウェアが会社にとって重要にも関わらず、朝のコーヒー以下の金額しか請求できないとしたら、何かがおかしいのです。
◆03:最低価格の料金プランは正当化するか取りやめる
月額5ドル(約500円)程度のものを含む安価なウェブ・アプリケーションの多くは「より人々にとって身近なものに」という耳触りのいい主張とともに提供されます。
コストの中には全ての顧客に等しくかかっていくものと、特定の顧客に対するものが存在します。しかし、お金を払っている人ほどコストがかかるか、と言えばそうではなく、月9ドル(約900円)のプランを利用している顧客に関するコストが49ドル(約5000円)のプランを利用している顧客と同じということもあります。スタートアップを運営するAdii Pienaarはこの問題を、料金を支払っていない顧客のサポートは行わない、という方法で解決。お金を払っていないならば顧客ではない、という考えです。
ここでの議論は「お金を払っていない人々は後々お金を払う顧客に変化するか」ということですが、実際のところ、最低価格があまりにも安すぎる場合、そのようなことは非常にまれです。また、底辺の価格の商品を販売すると乗り換えられることも多く、ビジネスを始めたばかりの小さな企業は大企業よりも失敗しやすい傾向にあります。多くの低価格商品はやがて消えていき、大抵それらの企業はお金を作り出せず、支出したコストも回収できないのです。
最低価格の商品を購入している顧客がアップグレードする見込みは少なく、小さな企業が高額を支払う顧客をゲットすることも時にはありますが、多くの場合、スタートアップは月々9ドルを支払う顧客層にとどまります。この場合、ビジネスは将来の可能性に投資するのではなく、日々の生活費を生み出すものとなります。
そして多くの企業はサポートの費用が減り、収入がアップしたときに初めて最低価格の商品を削るのです。スタートアップのJosh Pigfordさんは無料プランやお試しプラン、最低価格のプランを取りやめ、価格を倍にした結果収入が40%アップしたとのこと。
要するに、事業を営めなくするような価格を決して設定しないようにする、ということ。
ただし無料プランの提供については別です。無料プランは容量の制限であったり、一部の機能が異なったりと、アクティブユーザーとは別の制限を付与されています。無料プランはあくまでマーケティングの一環であり、口コミを得たり、反応を見たりするために行うのです。
◆04:価格の変更を考える
機能を追加したり、インターフェースを変えたりと、さまざまな方法で商品を改良していく過程で「我々は2年前よりも優れた価値を届けているだろうか?」「現在の顧客は以前よりも値段に寛容になっているのでは?」「マーケティングは成功しているのか?」など多くの疑問が頭をよぎります。もしこれらの質問に「はい」と答えられるならば、再度値段について考える時です。この点について、比較ができるように文書として視覚化して新しい価格の検討を行うべきです。
価格を変えると不平が出るのでは?という不安もありますが、現在の顧客も急に離れていってしまうことはなく、新しい人々はそもそも違いを知りません。研究によれば商品の価格を1%上げるだけで、他のどんな変化よりも大きな収益を会社にもたらすことが可能。要するに、あなたが調整する他のどんなことよりも価格の変更はリターンが大きいのです。
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