サイエンス

100万年間データを保存するために作られたサファイア製データストレージ

By Sim75 (Simon Lane Photography)

核廃棄物の保管場所を後の世代に伝えるため、100万年というとてつもなく長い時間データを保管しておけるというストレージが開発されました。

A Million-Year Hard Disk - ScienceNOW
http://news.sciencemag.org/sciencenow/2012/07/a-million-year-hard-disk.html


ソニーのメモリースティックの例を持ち出すまでも無く、記録メディアの規格というのは移り変わりが激しいもの。 これは、高レベル放射性廃棄物貯蔵施設を建設して、その情報を数万年にも渡って記録しておかなければならない人々にとっては困った問題です。そこで、フランスの核廃棄物の管理機関ANDRAに勤めるPatrick Charton氏は長期間データが保存できる特殊なサファイア製のディスクを開発しました。

サファイアと言えば指輪やネックレスに付いている青く輝く宝石を想像しがちですが、このディスクに使用されているのは人工的に作られたサファイア。

By Kevin H.

このディスクは工業用サファイアの上にプラチナでデータを彫り込む仕組みなっており100万年間利用可能な状態を保てるとのこと。なお、プロトタイプを作成するためかかった費用は2万5000ユーロ(約242万円)だったそうです。

ちなみに、工業用サファイアというのは以下のような感じのもので、宝石とは別もののガラスっぽい見た目。


しかし、100万年先となれば人類が存在しているかどうかも定かではなく、存在しているにしても言語は文化は全く別物になっているハズなので、Charton氏は「一体どの言語でデータを書き込むべきなのかはまったくわからない」と述べています。

似たような事例としてはかつてボイジャー探査機が地球外知的生命体や未来の人類が見つけて解読してくれることを期待して収めた「ゴールデンレコード」が知られています。


放射性廃棄物を貯蔵(廃棄)するための施設を地下500メートルほどの穴を掘って建設する試みはフィンランド、フランス、スウェーデンでは既に実行に移されており、政府の許可が降り次第実際に投棄が始まる見込みです。しかし、これらの施設の設計者が懸念するところによれば「未来の考古学者」たちによる「発掘」によってこの貯蔵庫が破壊されて有害な物質が持ち出されてしまう危険性があるとのこと。幅1メートルの石版に「危険、掘るな」と英語で書いたとしてもこの言語を未来の考古学者たちが理解できる保証はありません。

By Samat Jain

実際にフィンランドに存在する世界初となる高レベル放射性廃棄物むけ地層処理場「オンカロ」では、「最も危惧されているのは、今の人類が姿を消したあとの未来の知的生物が処分場に侵入し、放射線が漏れ出してしまうシナリオだという。そうならないよう、近づくと危険だという警告を伝えた方がいいのか?しかし、どうやって?」ということで直面した問題の解決に今も奮戦している状態で、2010年にデンマークで制作された「Into Eternity」というドキュメンタリー内でそのことをどのようなアプローチで解決しようとしたかが描かれています。

Into Eternity - Trailer - YouTube


ANDRAはこういった危険性に対処するべく考古学者や文化人類学者、言語学者など幅広い分野の専門家を集め2014、15年をメドに実現の可能性があるアプローチを絞り込むことを目標にしています。

そして、今回のサファイアディスクもその成果の1つというわけ。このディスクには約20センチの円盤で、写真やテキストを微細なエッチングとして書き込むようになっています。将来この中身を見るためには顕微鏡を使って文字などを読み取る必要があるとのことで、厳密に言えばPCのハードディスクのようなものとは異なるもの。また、ディスクは経年劣化をテストするために酸につけ込む試験が行われており、研究者たちは約1000万年の製品寿命を実現したいと考えているとのことです。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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