コラム

アニメコンテンツエキスポと東京国際アニメフェアの来場者数比較検証、今後の両イベントの行方は?


アニメ業界が参加する大きなイベントといえばこれまでは「東京国際アニメフェア(TAF)」でしたが、今年からは幕張メッセで「アニメコンテンツエキスポ(ACE)」がスタートしました。両イベントとも3月下旬に実施されるということで、今回が初の“分裂開催”。その結果、TAFは来場者数が前回比75%の9万人台に減少しました。一方、ACEの来場者数は4万人強。TAFのパブリックデー2日間のみ(約7万人)と比較しても少なく、結局はTAFが動員力を見せつけた形となりました。

しかし、実際に現地に足を運んで受けた印象はこれとは180度異なるものでした。現地の写真を踏まえつつ、検証していきます。


東京国際アニメフェア(TAF)は、海外でも人気の日本のアニメーション産業の振興と発展を目的として国際的な商談の場を設けるべく、石原慎太郎東京都知事の提案によって2002年2月に初開催されました。

東京国際アニメフェア2012
http://www.tokyoanime.jp/



第1回は3日間の開催でしたが、第2回以降は現在まで4日間開催となっており、そのうち前半2日間は商談をメインとしたビジネスデー、後半2日間は一般人が来場してイベントを楽しめるパブリックデーと分けられています。

2012年の出展企業は前回(2010年)に比べると減りましたが、それでも216社が出展。そのうち89社が海外勢で、特に中国企業は前回比10社増の48社が参加しました。

一方のアニメコンテンツエキスポ(ACE)は、今年が初開催。本来は2011年にTAFのパブリックデーと同一日程で開催予定でしたが地震のために開催中止となり、今年は「ACEを支持して下さったファンの皆様への感謝」として開催が決まりました。

ANIME CONTENTS EXPO 2012 | アニメ コンテンツ エキスポ 2012
http://www.animecontentsexpo.jp/index.html



準備段階から角川書店、アニプレックス、アニメイト、キングレコード、ジェネオン・ユニバーサル、フロンティアワークス、マーベラスエンターテイメント、メディアファクトリーといったアニメ業界を支える大きな企業が参加。出展企業・団体は55社とアニメフェアよりは少ないものの、ステージイベントには現在放送中のアニメや今後放送されるアニメの出演者が出るということもあって、チケットは激しい争奪戦となりました。

発表された数字によるとTAF2012の来場者数は4日間合計で9万8923人。このうち、ACEと同じく一般入場者が来場したパブリックデーは3月24日が3万1391人、25日が4万2478人で、合計7万3869人ACE2012の来場者数は3月31日が2万780人、4月1日が2万848人、合計で4万1628人でした。ACEが開催された2日間は首都圏で強風が吹き荒れた日でもあり、3月31日は幕張メッセへの主要アクセス経路である京葉線が朝9時20分から夕方16時過ぎまでストップ、総武線や武蔵野線も大幅にダイヤが乱れて、参加者が足止めを食う事態になりました。一方、TAFのパブリックデー1日目も悪天候のために人足が伸びなかったと報じられました。

単純にこの数字を比較すると、TAFはACEよりも3万2241人多かったということになります。つまり、1日あたりの来場者数はTAFの方が1万6000人ほど多いというわけです。

しかし、実際に両方のイベントに行った人であればこの発表には首をかしげるはず。TAFでは一部の物販ブースを除けば比較的ゆるやかに見て回ることができたし買い物もできたのに対して、ACEの会場は通路が完全にふさがっている箇所が多く、物販では行列が長すぎて行列が会場外に出されていたほどです。

印象で語るのは簡単ですが、実際はどうだったのでしょうか。会場となっているのは、TAFが東京ビッグサイト、ACEが幕張メッセでした。

TAFは例年通り、東京ビッグサイトの東1ホールから3ホールの3つを連結して使用していました。ホールは1つが90m×90mで8100平方メートルあるので、合計すると2万4300平方メートルということになります。

この写真だと、東2ホールの半分(左手前)と東3ホールの半分(右奥)が映っています。


一方、ACEは幕張メッセの1ホールから3ホールを使用しました。ホールの大きさはビッグサイトよりも小さく1つ6750平方メートル3つ繋げると2万250平方メートルあります。

映っているのは3ホール(左)から2ホール(右)にかけての部分。


ということで、ホールの面積と来場者から計算を進めていきます。ACEの方が会場が狭いので人が多すぎるように感じたのかどうか、面積あたりの人数で考えてみます。

まずはACE。2万250平方メートルのスペースに、1日目は2万780人、2日目は2万848人が来場しました。1平方メートルあたりの人数でいうと、1日目は1.026人、2日目は1.030人。

一方のTAF。2万4300平方メートルのスペースに、パブリックデー1日目は3万1391人、パブリックデー2日目は4万2478人が来場しました。1平方メートルあたりの人数でいうと、1日目は1.292人、2日目が1.748人。

つまり、同一面積で考えてもTAFの方が来場者数は多かったというわけ。もちろん、入場者としてカウントされている人が全員同時に会場内にいるタイミングなどは存在しないため、この数字はあくまで参考値です。

改めて、会場の写真で比較してみます。

TAF2012のパブリックデー1日目(3月24日)、スタンプラリーを行ったブシロードブースは人気を集めたが、周辺通路までギッシリで動けないという事態にはなりませんでした。


このあとブースイベントが開催されるということで混み合っている日テレブース。


現役アニメスタッフから直々に絵の指導をしてもらえるというワークショップも開催され、親子連れが参加する姿も。


塗り絵にいそしむ子どもたち。


「スマイルプリキュア!」ステージショーは大人気で立見が続出。


パブリックデー1日目の開場ダッシュの様子はこんな感じ


一方、ACE2012の1日目、レジがはるかに遠くて見えないアニメイトブース。写真は2時間待ちのときの様子ですが、最長では5時間待ちだったそうです。


左側にフロンティアワークスやグッドスマイルカンパニー、右側に角川グループやアニプレックスのブースがあって、通路は人で埋め尽くされています。それぞれ、ブースよりには物販の待機行列もあったりしますが、人の流れにうまく乗れば目的地までふわふわと移動可能。


3ホールから2ホール方向にかけて。右奥に灰色の高い壁がありますが、あの向こう側がステージイベントの行われている1ホールです。


アニメコンテンツエキスポ2012 1日目の開場ダッシュはこんな感じ


はっきり言うと、人口密度は桁外れにACEの方が上。発表された数字の差がなんなのかは分かりませんが、TAFが再入場者を改めてカウントしているのに、ACEは再入場をカウントしていないなど、そういった事情でもないと、これだけの差はつかないはずです。

会場の人口構成でいうと、TAFは従来多かった男性層が減少。ファミリーは以前からそこそこ見かけたものの、人が減ったことでより姿を見るようになったという感じ。一方、ACEは若いお客さんの姿が多く、いわゆる「アニメファン」「声優ファン」の中核を担っているような層が数多く来場していたという印象でした。

TAFとACEは、いずれもアニメのことをアピールする場という点で共通しています。来年以降、ACEが開催されるのか、どういう形になるのかは不明ですが、2012年と同じような傾向になるのであれば、TAF(パブリックデー)はもっとファミリー向け、アニメのライトなファン向けに舵をとり、ACEは深夜アニメ系統、コアなアニメファン向けのイベントを充実させて、住み分けていくのがもっとも幸せな形となるはず。また、TAFがビッグサイトの東1~3ホールを使用するのであれば、向かいにある東4~6ホールでACEを実施すれば、両方に出展することになる出展者の負担も少しは軽減でき、「両方参加したい」「もう片方がどんな感じなのか、ちょっとみてみたい」という需要にも応えられるのではないでしょうか。

バイヤーとの商談もアニメファン向けのイベントも、業界にとっては大事なことのはず。どちらも損なわれることなく、うまくいく答えが見つかればよいのですが……。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
アニメ業界が本気を出したイベント「アニメコンテンツエキスポ2012」が開幕 - GIGAZINE

「NERV特別仕様スマートフォン」写真、ヱヴァンゲリヲン新劇場版:QとNTTドコモがコラボ - GIGAZINE

超巨大おっぱいマットに等身大まどかやロボット軍団、らき☆すた神輿などACE2012特別展示いろいろ - GIGAZINE

「もやしパーティー」や「禁断の合体ゼリー」などアニメコンテンツエキスポに出てきたコラボ食べ物いろいろ - GIGAZINE

これまでと事情が異なる「東京国際アニメフェア2012」開幕、今後の行方は? - GIGAZINE

アニメを日本での放送とほぼ同時配信することで違法ダウンロードが7割減少したクランチロールのビジネスモデル - GIGAZINE

東北ゆるキャラ特集や等身大アクエリオン、牙狼ミュージアムなどTAF2012を彩るブースいろいろ - GIGAZINE

トヨタが宇宙人と地球人の恋愛物語を描く「PES:Peace Eco Smile」でアニメ参入 - GIGAZINE

ufotableの社名の由来になった「ユーフォーテーブル」はコレ - GIGAZINE

メバチマグロの大トロ丼や仙台の牛タン丼など12店舗が出店した東京国際アニメフェア2012フードエリア - GIGAZINE

ほぼ実物大の小型飛行艇ヴェスパ - GIGAZINE

虚淵玄×水島精二×東映アニメーションのオリジナル新作映画「楽園追放」 - GIGAZINE

来場者数が減少気味な東京国際アニメフェア2012パブリックデーの様子 - GIGAZINE

東日本大震災チャリティアニメ、山本寛監督新作「blossom」ワールドプレミア - GIGAZINE

東京国際アニメフェア2012の来場者数は10万人を下回り前回比75%に - GIGAZINE

東京国際アニメフェア2012のメディア関連ブースに異変、出展しないキー局もあり - GIGAZINE

in 取材,   アニメ,   コラム, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.