取材

「NEXT」を感じさせる熱気の「TIGER&BUNNY」最終回上映会レポート


9月18日の0時から朝5時にかけて行われたオールナイトイベント「TIGER & BUNNY 最終回上映会イベント『TIGER & BUNNY~ありがとう!そして、ありがとう!!~』」のイベントレポートをお送りします。

深夜の開催となったにもかかわらず、全国の会場あわせて2万3千人以上が来場。しかも会場外のUstreamでの視聴数は7万7000強と過去最高記録をたたき出すなど、作品の人気を裏付ける結果となりました。また、数字の面だけではなく、製作者やキャストが作品やキャラにかける思いも存分に語られ、それをファンが温かく受け止めるという、非常に熱のこもった内容となっています。


イベントは大きく分けて3部構成となっていて、第一部は出演キャストのトーク。ワイルドタイガー/鏑木・T・虎徹役・平田広明さんと、ルナティック/ユーリ・ペトロフ役・遊佐浩二さんのナレーションからイベントは始まりました。「どうも!TIGER & BUNNYの12時を過ぎると眠くなる方、虎徹です!」と、本編次回予告でおなじみのフレーズから始まったやりとりに、本会場のバルト9・シアター9の観客席からは歓声が上がっていましたが、中でも遊佐さんがユーリの声で「あなたへの協力は、惜しみませんよ」と作中のセリフを読み上げたところ、ひときわ大きな声が上がっていました。

その後、虎徹とユーリのナレーションにいざなわれ、壇上にサンライズの尾崎雅之エグゼクティブプロデューサー(以下、尾崎EP)が登場。「プロデューサー陣の中で失言の多い方、尾崎です」と次回予告ネタで自己紹介をした上で、メイン会場を基点として45スクリーンもの映画館が会場となり、2万3千人以上が会場に足を運んでいるということを報告。観客席に対して感謝の気持ちを伝えていました。


その後、虎徹が「今からヒーローが助けに行くぜ!」と声を上げ、平田さんと遊佐さんも檀上へ。平田さんはうさぎのぬいぐるみを抱きしめて登場。「Blu-ray第2巻発売記念イベント」でもうさぎのぬいぐるみを抱いていましたが、今回は本編5話に登場するものそっくりに作られた商品を持っていました。


登壇した2人は、「どうも!TIGER & BUNNYのまつげが短い方、虎徹です!」「前半よりも後半(2クール目)の方が出番が少ない方、ユーリ・ペトロフ役の遊佐浩二です」と、改めて次回予告風にあいさつ。収録もあっという間に終わってしまい、これから上映される最終回の25話もあっという間に終わってしまうと、作品に対する名残惜しさを語ります。


キャスト2名に「印象に残ったエピソードは?」という質問が投げかけられ、平田さんはバーナビーの誕生日を祝おうと虎徹はじめヒーローたちが奮闘する第5話を挙げました。2クール目の話の中では?という質問に対しては「最終回の話はできないのかあ」と笑いながらも、全体として駆け上がり方がすごい作品だったと語っていました。


遊佐さんは全体的に大好きな作品だったとした上で、ルナティックの過去が垣間見えた第16話を挙げました。遊佐さんが最初に受け取ったキャラクター設定にルナティックの過去は書かれていたため、視聴者はもちろん共演者にもひた隠しにして演じていた部分があり、第16話の収録を迎えた時は肩の荷が下りたような気持ちになったそうです。


別の仕事で高知にいるため、イベントに参加できなかった森田成一さんからの特別メッセージが上映されました。自前のうさぎの耳のカチューシャとバーナビーTシャツ、手首にはヒーローのPDAを模したグッズのリストバンドを身につけた森田さんは、「今日は会場にいないで高知にいる方、バーナビーです!」と颯爽登場。作品に対する思いを語った後、締めにはバーナビーの声で「高知で坂本龍馬像が動き出した?虎徹さん、先に行ってます。ルナティックは出てこないように押さえててください!」と演じたのち、「See ya!!!」と言いながらウインク。会場にいる2名よりもある意味大きな存在感を残していきました。

映像が流れた後、尾崎EPが「森田さんにも『ありがとう!そして、ありがとう!』ですね」とコメントすると、「そのセリフ、私が言いたかったのに!」と叫び、サプライズゲストのスカイハイ/キース・グッドマン役・井上剛さんが壇上に登場。大きな歓声につつまれながら、スカイハイの声で「ここは私に任せなさい!スカーイ……ハイハハーイ!!」と叫び、会場の視線を独り占めにしていました。


そして、「後半に行くほどやらかしちゃったスカイハイの、井上剛です!」とあいさつ。井上さんの出演は急きょ決定したとのことですが、Twitter上では普段どおりUstreamにチェックインして、まるでゲストには来ないかのようなそぶりを見せるなど、サプライズの演出には余念がありませんでした。


井上さんにも「印象に残ったエピソード」が尋ねられたのですが、「やはり」と前置きをした上で、スカイハイの恋模様が描かれた第15話だと回答。この回は平田さんも第5話の次に気に入っている話だといいます。井上さんは「スカイハイがおいしいから、いい話だって言っているのは否定しません」と語っていました。

スカイハイは人気の高いキャラクターですが、その大きな要素となっているのは、「ありがとう!そして、ありがとう!」に代表される名言の数々。井上さんはアフレコについて、「第5話をきっかけに遊びすぎました、反省はしています」とコメント。普通のセリフしかない回は「いけない、これでは怒られる」と必死にアドリブを探していたことを、なぜかしんみりとしたトーンで語っていました。

ここで時間の関係でキャストトークは終了。井上さんはキャスト全員が演じるキャラに思い入れを強くもって演じていた現場だと語り、平田さんが虎徹をいかに大事に演じていたかということを熱弁。そして最後には「スカイハイのS.H.Figuartsを1番欲しがっているのは僕です。予約戦争がんばりましょう!」と語り、Twitterを通じて視聴者と一体となって作品を盛り上げた井上さんらしい締めのあいさつとなりました。


遊佐さんは、「作り手の熱意を感じながら、それに負けないように演じていました」として、「(出番は少なかったと言ったものの)おいしいところは演じさせていただいたので、タイバニにはこれからも関わっていきたい」と今後の展開にも意欲を示しました。


トリは平田さんが、「本当にあっという間、駆け抜けてきた感じがします」と半年間虎徹を演じ抜いた感想を語り、「監督にお会いした時、この作品はヒットするだろうという確かなものはありましたが、ここまでになるとは正直思っていませんでしたし、監督もそう言っていました。ものすごい盛り上がりにびっくりしています」と、作品の人気の高まりに驚きと感謝を示していました。


今回のイベント会場は多数にわたったものの、四国・沖縄の会場は用意することがかなわなかったため、「次回は何らかの形で、四国と沖縄でイベントやろうぜ!」と呼びかけるなど、「NEXT」を感じさせるあいさつとなりました。


出演後の記念写真。これはすましたポーズの3名。


ルナティックはダークヒーローなので他のヒーローのように腕にPDAをつけていないため、当然グッズ化もされていません。各自の役のリストバンドを腕にまいているキャストの中で、唯一遊佐さんだけリストバンドがないため、腕時計をPDAよろしく掲げておどけている1枚。


こちらは気合い十分な表情のショット。


第24話上映後の第二部では、制作陣が「TIGER & BUNNY」の裏話を展開。第一部から引き続き司会進行を担当した尾崎EPは虎徹風の服装に加えて、休憩中にトイレでヒゲを剃って虎徹のヒゲを再現し、客席の注目を集めていました。


トークに参加した制作陣は、さとうけいいち監督、シリーズ構成の西田征史さん、キャラクター原案・ヒーローデザインの桂正和さん、サンライズから尾崎雅之EPと田村一彦プロデューサー、バンダイビジュアルの松井千夏プロデューサーです。

左から尾崎EP、さとう監督、西田さん、桂さん、田村プロデューサー、松井プロデューサー


スタッフトークは最初から勢いよく展開。桂さんがキャラクターデザインをした段階では詳しい議論含めて設定を知らされておらず、既婚者であることも知らなかったため、結婚指輪も描いていなかったという裏話が披露されました。実は娘がいるべきか否かについても議論が闘わされていた段階だったのですが、自分のあずかり知らぬところで設定が作られていた状況に、桂さんは冗談めかしながらもブーイングしていました。


作中には8人のヒーローと、ダークヒーローのルナティックが登場しますが、田村プロデューサーから、実は10人目のヒーロー「禅ビースト」が存在したことが明かされました。日本の禅を意識したヒーローだったものの、折紙サイクロンとややかぶった存在であったことを理由にお蔵入りに。

桂さんは、ヒーローのキャラクターデザインをする中で、1番悩んだのは虎徹だったと発言。発注の段階で設定がほぼ白紙であったため、手がかりが少ない中、膨大な数のラフスケッチを提出。10月28日に通常版から発売される桂さんの「TIGER & BUNNY」画集には、虎徹のアイデアスケッチの段階からのラフ画がすべて掲載され、虎徹の能力の別候補についても書かれているとのことなので、気になる人は今のうちに予約注文してみてください。

事前にTwitterを通じて視聴者から集めた質問に答えるQ&Aコーナーでは、さまざまな新事実が明かされました。「主人公のイニシャルが鏑木・T・虎徹(K・K)、バーナビー・ブルックス Jr.(B・B)と統一されていることに何か意図があるのでしょうか?」という質問に対して、実は当初は虎徹は「バスティ(Busty)」というキャラ名だったことが語られました。番組名の候補にも2人のイニシャルを取って「THE BB」といったものがあったとか。また、ヒーロー達のことを「犯罪者を追跡する者」という意味の「シーカーズ(Seekers)」と呼んでいたため、それがそのままタイトル候補となっていたという話も。

名前は「バスティ」でほぼ本決まりとなっていたのですが、「Busty」には「巨乳」という意味があることを松井プロデューサーが指摘。そこで刀の名前を使おうという別のアイデアを採用し、現在の虎徹という名前になったそうです。

このエピソードからも垣間見えるように、「TIGER & BUNNY」は海外に対しても展開する作品と当初から決まっていたため、他の言語で放映した際にキャラ名などに問題がないように配慮されています。何かの名称を決める度に、松井プロデューサーがその意味を詳細に調べていたのだとか。各ヒーローの本名は国籍のイメージで名前を決めていて、例えばカリーナ(ブルーローズ)は、氷を操る能力から連想して、北欧の人の名前から取ったということです。


「放送開始後にどんどん人気が出てきた『タイバニ』ですが、途中で当初の予定とは変わったことは?」という質問には、ロックバイソンの存在が挙げられました。1話登場の段階でも、どのヒーローよりもスポンサーロゴが印象的で、視聴者にもキャラ名よりスポンサー名で呼ばれるほど話題になったため、ラスト付近にセリフを足していったとのこと。また、2月頭には脚本は書き上がっていて、大筋はしっかり決まっていたため、特に放送開始後に大きな変更はなかったそうです。


また、最後までキャラクターデザインが決まっていなかったイワンは、松井プロデューサーたっての希望でイケメンキャラとなり、現在の姿に。桂さんは「見切れ」などイワンの設定については聞いていたものの、あえて主人公を食ってしまうくらいのイケメンを目指して描き直し。その設定画があまりにイケメンに仕上がったため、イワンが主役となる第8話が設定され、その分ジェイク編は予定よりやや遅れて展開されることになりました。


主人公は2人とも「ハンドレッドパワー(5分間だけすべての身体能力が100倍になる能力)」の持ち主という設定ですが、これは西田さんの希望によって決定したもので、当初は別々の能力でした。バーナビーは身軽なうさぎのイメージから、時空を移動できる「瞬間移動」という能力だったとか。しかし鉄板を越えられないなどの制限があり、さとう監督は「制限をもうけないと面白くならないし、万能になってしまう」と語っていました。


「以前インタビューにて『海外の反応も日本と同じで……』と回答されていましたが、海外での放送は吹き替えなのでしょうか?また、次回予告で虎徹が英語をしゃべれないという場面は、英語圏などでどう再現しているのでしょうか?」という質問には、尾崎EPから回答。海外の放送は北米がメイン、それ以外にイギリス、オーストラリア、フランスで実施していて、8月末には北米で100万PVを突破するほどの人気を見せています。海外放送は字幕版で、日本とはわずか数時間しかズレのない同日に放送。次回予告について、北米の放送では何も字幕はつけておらず、虎徹が英語でしゃべろうとして、途中から日本語にシフトするので、海外の方にもおもしろがってもらえていると語りました。


西田さんは第7話を印象に残っているエピソードとして挙げ、田村プロデューサーは、この回だけで制作に10ヶ月もの時間がかかったことを明かしました。


アクションシーンが特に多く、非常に格好良く仕上がっていた回だったため、西田さんだけでなく桂さんもそのできばえには満足し、田村さんに感想のメールを送るほど感激したそうです。桂さんはストーリー展開については楽しんでいたとしながらも、1番思い入れのある虎徹のアクションシーンが思ったより少なく、もっと活躍してほしかったとももらしていました。


桂さんは当初ヒーロースーツのデザインのみを担当するはずでしたが、最終的には生身のヒーローたちもデザインすることに。各回である意味折紙サイクロン以上の見切れを発揮していた脇役の女の子、通称「モブ子」も桂さんのデザインで、桂さんが描く美少女のイメージそのままで、というオファーにより誕生したキャラクターだということです。

ここでスタッフトークは終了。スタートまでのカウントダウンはやや不発に終わったものの、最終話となる第25話が、劇場の大スクリーンでTwitterの「#tigerbunny」タグのタイムラインと同時に流されました。その最後に「「『TIGER & BUNNY』NEXT PROJECT」第1弾となるイベント「『TIGER & BUNNY』HERO AWARDS 2011」の開催告知が画面に映され、尾崎EPからは、本会場のほかにも、このイベントのように劇場でライブビューイングできるよう、調整が現在進行中であることも明かされました。

最終回はもちろん見てのお楽しみですが、観客席からは場面ごとに拍手が起こり、歓声も上がるなど、客席が一体となって虎徹とバーナビーの戦いの行方を見守っていました。そしてイベントに2万人以上の動員があったにもかかわらず、この日のUstreamの最大PV数は減るどころかむしろ急増し、7万7000強という過去最高の記録をたたき出す結果に。

最後に、トークに登場したスタッフが再び登壇。


田村プロデューサーは「今日こうやってみなさんに会えて嬉しいです。また(「TIGER & BUNNY」を)作りたいなと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします」と、これから発売されるバーナビーのジャケットを着てコメントしていました。

さとう監督は、「世の中を元気にしようと思ってこの作品を作ろうと集まったメンバーです。震災に遭われた方々からも、Twitterなどで『日々強い力をもらっています』というようなお言葉をいただけて、僕はめげないでこの作品を最後まで持っていこうと思ったんです。だから最後まで完走できたので一段落というか、うれしいです。みなさん、半年間どうもありがとうございました。これからもタイバニをよろしくおねがいします。これからのスタッフの活躍にも期待してあげてください」と語り、明るく振る舞いながらも、感極まって涙を浮かべる場面もありました。

西田さんは「僕にとって初のアニメ脚本だったのですが、それが『TIGER & BUNNY』でよかった。製作期間は1年以上、本作りの段階で楽しかったです。今はこんな時代ですけど、きれい過ぎない感じで作ってみようと突き進んでみた作品です。また虎徹・バーナビーのセリフを書いてみたいです」と笑顔で話していました。

桂さんは第一部で平田さんが持っていたうさぎを持って登壇。「どういうものを描いているかも分からずに始めましたが、一ファンとしてずっと楽しんできました」としつつも、他のスタッフが一段落と言う中で、Blu-ray(初回限定版)ならびにDVDの最終巻特典として描き下ろしの全巻収納ボックスの原画を描くお仕事が残っているとのことで、「僕はまだまだ居残り当番させられてるような気分です」と笑っていました。


松井プロデューサーは「本編は終わってしまいましたがこれからもBlu-rayやDVDは発売されますので、よろしくお願いします。まだまだパッケージ化もあるかもしれません」と今後の展開を期待させる発言も。12月7日にはキャラクターソングアルバムも発売されるとのことです。松井プロデューサーならびに田村プロデューサーは、テレビアニメのプロデューサーを務めたのは初とのことで、「これからもがんばりますので、応援よろしくおねがいします」と締めくくりました。

尾崎EPは、一足早くプロジェクトを進めていることを再び話したのち、「ありがとう!そして、ありがとう!」と客席とコール&レスポンスを交わして一旦閉幕。その後は過去回から厳選した内容を上映する「セレクション上映」が行われ、第3話、第5話、第15話、第21話、そして最終回の第25話が再び上映されました。


ラストには、タイガーのTシャツを着た平田さんと、バーナビーTシャツを着た森田さんの特別メッセージが流され、名残惜しいのでまたやりたいという意欲を見せていました。そして本当の締めとして再び尾崎EPが登場し「タイバニはまだまだ続きます!最終話25話のタイトルにもあるように、タイバニは永久不滅(Eternal immortality)です」とコメント、朝5時20分までずっと「TIGER & BUNNY」を見守ったファンたちに感謝の意を示し、今度こそ閉幕しました。

実際に参加してみたところ、最終回を迎えたさみしさよりも、作品が好きな人同士集まって鑑賞したことによる熱量を強く感じるイベントとなっていました。制作陣のコメントにも「ココデオワルハズガナイノニ」という意志がありありと感じられるものが多数あったため、次回以降のプロジェクトの展開に期待したいところです。

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in 取材,   アニメ, Posted by darkhorse_log

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