取材

未来の傑作を支援する「クリエイターズワールド パイロット版作品 制作支援プロジェクト」


東京国際アニメフェアでは毎年「クリエイターズワールド」というブースが設けられ、オリジナルアニメーションを制作するクリエイターたちが自慢の作品を出展しています。問題は、そのオリジナルアニメをいかに商品化していくか、ということにあって、たとえば2009年に公開された映画「センコロール」は若い作家たちを資金面・プロデュース面から支援する「動画革命東京」のサポートを受けて作られた作品で、アニプレックスが買い上げて劇場公開されるに至りました。

つまり、ビジネスのためには作品の商品化協力者が必要になるわけです。これを実現するため、パイロット版映像の制作を支援し、クリエイターのキャリアアップ、そして作品アピールによる商品化協力者の獲得を目指すのが、今回行われた「アニメ・パイロット版作品 制作支援プロジェクト」というわけです。


今回、4作品がその対象に選出され、2011年3月の東京国際アニメフェア2011でパイロット版を上映することになりました。

一体、どのようなクリエイターがどのような作品を作っているのか、4作品の情報は以下から。
「アニメ・パイロット版作品 制作支援プロジェクト」選出4作品の発表ステージ。


「東京国際アニメ祭2010秋では、人材育成を目的としたオリジナル・アニメーションを制作するクリエイター支援のためのクリエイターズワールド アニメ・パイロット版作品 制作支援プロジェクトを新設しました。」


「オリジナル・アニメーションを制作する国内のトップ・クリエイターに自身の才能と作品をアピールするためのパイロット版作品の制作を支援するプロジェクトです。」


「クリエイターズワールド参加経験のある出身クリエイターを対象者とし、エントリーから審査通過上位4組に東京国際アニメフェア2011での発表に向けた自身の才能と作品をアピールするパイロット版作品制作を支援します。」


「東京国際アニメ祭2010秋でのプロジェクト参加者の発表から、東京国際アニメフェア2011会場でのパイロット版完成作品発表と作品アピールを行うことによって、商品化協力者の獲得や、自身のキャリア・アップを目指します。」


ということで、選出4作品が発表されました。


選出されたのはFrench curve/児玉徹郎さんの「INTERIOR インテリア」、スタジオアールエフ/ロマのフ比嘉さんの「カナイ」、市川量也さんの「モンスターになったドメリカ」、武藤健司さん/SUGARLESS FACTORY/ホネスタの「化石ドロボウと恐竜石」の4作品。


児玉さんは、普段は美術設定などをメインに活動しており、間もなく公開される映画「マルドゥック・スクランブル」ではCGIディレクターを担当しています。


そんな児玉さんの作品は「INTERIOR インテリア」。売れない画家のサム、売れない戯曲家のボーマン、その友人グレック、3人の共通点はお金がないこと。3人はコンクールで賞金を勝ち取るために作品を応募することにしますが、配送費が払えないために遠方の会場まで作品を持参することに……。


児玉:
作品はだいたい1話10分、1~2クールを想定しています。タイトルの「インテリア」は室内の家具かな?と思う人もいるかも知れませんが、まだ仮タイトルです。商業向けも念頭に置いていますが、それよりも作品性を重視しています。面白いところとしては、すべて3Dで制作しているところです。現在も3D制作のものはありますが、今回の映像では通常の(アニメではない)3D映像と同じような立体視という表現にチャレンジしています。ぺらぺらなものが何枚も動いているのとは違う、見た目として新しいものになります。

Q:
立体視に着目された理由は?

児玉:
昨今、アニメ業界が衰退していて売り込みづらい、実際売れていないというのを念頭に置いています。そして今は液晶テレビですが、年末には裸眼立体視テレビが出てきて、このメディアが普及しメガネレスの時代になれば、映画もゲームもアニメも立体視に移行していくのではないかと考えていて、そうなったとき付加価値になると考えました。また、ネットとかでは立体視は見えづらいので、DVD化したときのことも考慮しています。

Q:
まずは10分のパイロット版完成を目指すわけですが、アピール点はありますか?

児玉:
2D表現で立体視、というところですね。平面でなくキャラクターの顔が輪郭にそって丸まっているよ、みたいな。トイ・ストーリーとか3D版のシュレックとかみたいなもので、質感はこの映像のような手描き感のあるものになります。


次はロマのフ比嘉さん。15年ぐらい前からオリジナル作品を制作しており、最近はあんまりオリジナルをやっていないなーということで参加したそうです。


作品は「カナイ」。沖縄を舞台にしてロボットものをやりたい、とずっと温めていたものを今回やってみた、とのこと。痛快ロボットアクションで、沖縄でたくましく健やかに育つ女の子の物語です。


Q:
ストーリーは?

比嘉:
本土のみなさんからすると沖縄は南国で平和なイメージがあるかも知れませんが、沖縄の人間である私からすると、住んでいると米軍なり色々問題があって、戦後60年にも関わらず未だに月一で不発弾が見つかっては処理されている、戦争とつながっているような状況なんです。それを子どものころから感じていたので物語のベースにしつつ、説教臭くなるのはイヤなので「女の子3人がロボットを見つけちゃった、どうしよう!」みたいな明るい雰囲気のものにしました。世界でも共通で楽しめるような、大人向けというよりは中高生に見てもらえるような作品を作ろうと考えています。

Q:
監督は活動開始以来、海外に通じるオリジナル作品を作ってきたということですが、今回も意識しましたか?

比嘉:
そうですね。初期作品から海外が舞台で全編英語とか、そういう特殊なものを作り続けていたんですが、そろそろ飽きてきたというのもあって(笑)、舞台を日本に移したらどうなるかと考えて沖縄が一番適しているのではないかと思いました。ドンパチしても違和感がないのが沖縄だったんです。自分のルーツでもあるし、何か面白いことができればなと。僕が育ってきた80年代はグーニーズとかE.T.とか多くのキッズムービーが作られていた時代で、それをワクワクして見ていたんですが、アメリカ人が作って日本人をワクワクさせられるのなら、日本人が作った作品で世界の人をワクワクさせることもできるのではないかと思っています。

Q:
パイロット版4分の完成を目指すわけですが、アピール点は?

比嘉:
自分自身はあまり絵が描けないから制作を担当していて、作品としての完成度を大切に考えているので、今回もそこを大切にしたいですね。とにかく、一個でも面白いものができれば、他もついてくると考えているので、それを目指しています。


3番目は市川さん。もともとはゲーム業界に近かったそうですが、ドラマがあるものを目指していたので、フリーのゲームCG屋として仕事をするよりも作家性のある作品をやりたいとうことで、徐々にアニメにシフトしてきたそうです。


作品は「モンスターになったドメリカ」。「荒れ果てたスラムの世界!!それでも愛を訴えられるのか?!普通の人間からある日モンスターになってしまった主人公。暴力、無秩序、理不尽な世界に秩序を取り戻せるのか?主人公の運命に答えはあるのか?涙あり、迫力あり、愛と感動のアクション巨編。」とのこと。


市川:
今回のような企画は成立しづらいので、ちょっとしたパイロットでも作れる機会があるのは嬉しいです。CG出身ということで新しい映像、新しいアニメを求められて仕事をしてきましたが、最近はそういうのがこなれてきて、CGを使ったアニメが特別新しいというわけではなくなってきたので、今回は強さみたいなものを出せたらと考えています。

Q:
どのような強さですか?

市川:
映像的なハードルよりも、こういう物語を伝えなきゃとか、世の中の問題意識とかをどれだけ作品に詰め込めるかというモチベーションで作っています。

Q:
作品のアピールポイントは?

市川:
アクションものにしたいと考えていて、アクションで楽しめて、ハートフルな感じ、涙も誘うような作品に、と考えています。


最後は武藤さん。テレビの仕事が多く、最近は書籍の装丁イラストも手がけているそうで、幅広くオリジナル作品を作る機会をもらっているとのこと。


作品は「化石ドロボウと恐竜石」。「12歳の少年ユタと化石の相棒ゴビ。二人は化石ドロボウを追い、『盗まれた母親恐竜の化石』をさがす旅に出る。危険な海底都市を舞台に獰猛な『動く化石』を狩り、少年は精神的成長を遂げ、相棒ゴビとの絆を深める。ジュール・ヴェルヌ『地底旅行』、コナン・ドイル『失われた世界』からインスピレーションを受けた新感覚・恐竜ファンタジーである」とのこと。


武藤:
小学生の子どもたちに向けて、ドキドキワクワクできるストーリーを提供できたらと思っています。

Q:
冒険的要素のほかに、生物科学にも興味を持って欲しいとお考えのようですが?

武藤:
今、「理科離れ」とかよく言われていますが、そういった押しつけがましいエデュテイメントではなく、自然に作れればと思います。動物学者さんや化石バイヤーさんなどにも監修をお願いして、エンターテイメントでファンタジーだけれど、ちゃんとしたリアリティを持たせて、見ている子どもたちに伝えられればと思ってこの企画を出しました。

Q:
アピールポイントは?

武藤:
アニメ業界にはいろいろな作品がありますが、ここで王道に返ってみてはどうかという提案でもあります。少年達がワクワクドキドキする冒険譚を作れればと思っております。


完成作品の発表は東京国際アニメフェア2011にて行われます。


4人のクリエイターがどのようなパイロット版を仕上げてくるのか、3月がとても楽しみです。

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in 取材,   アニメ, Posted by logc_nt

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