取材

若い作家たちを資金面・プロデュース面から支援する「動画革命東京」とは一体何なのか



機兵戦記レガシーズ一輪者、そして2009年に劇場公開されたセンコロールに共通して見られるのが「動画革命東京」という名前。名前だけだと東京にあるアニメーション制作会社の1つのようにも思えますが、その実態はクリエイターを世界へ送り出すことを目的とした壮大なプロジェクトでした。

東京国際アニメフェア2010では、この動画革命東京の活動や支援作品についてのカンファレンスとシンポジウムが開かれ、どんな作品が世に送り出されつつあるのかを知ることができました。新作テレビアニメだけ追いかけていると原作付きのアニメが多いような印象を持ちますが、世のクリエイターたちはあちらこちらでオリジナル作品を日夜作り上げているのだと実感します。

「動画革命東京」は、映像プロデュースなどを行う株式会社シンクの子会社・有限会社アニメイノベーション東京が運営しているプロジェクトで、その目的は新鋭アニメクリエイターを支援し、世界へ送り出すという壮大なもの。

クリエイターは頭の中にいろいろなアイデアを持っているものの、それを形にするための資本がなかったり、制作環境がなかったり、作り上げたとしても営業の仕方がわからずに作品が埋もれてしまったりしてしまいます。動画革命東京では、そんなクリエイターに対して資金や制作環境の支援を行ってまずパイロット映像を制作してもらい、その映像をプロデュースしています。こういった形の事業は欧米では一般的だそうで、パイロット版を見てスポンサーがつけば大規模作品の制作にかかり、世界へ展開していくというモデルになっています。


動画革命東京は2008年12月までに全12期の募集を終えました。全応募作品は166作品で、そのうち約1割にあたる14作品が支援対象になりした。これらの応募作品は67%が個人の手によるもので、法人からの応募はほとんどが制作会社の人からのもので、社内企画として考えられたものなどがあったそうです。一方、学生や教員からの応募も多く、中には一般企業で働きながらクリエイティブな仕事がしたいという人もいたとのこと。「動画革命東京」という名前で、実際に東京都からの支援を受けているものの応募は東京以外、それこそ海外でもOKだったそうですが、フタを開けてみるとほとんどが東京。数でいえば多そうな関西は5%にとどまったそうです。


これまでに第1期「センコロール」「コルボッコロ」などから始まって全14作品を支援。


特に「センコロール」は2009年に劇場公開されるなどの大ヒット作品となりました。同作は宇木敦哉さんの手によるもので、アニプレックスが買い上げて動画革命東京の手を離れた作品。


動画革命東京の支援作品からは「センコロール」と「虫歯鉄道」が文化庁メディア芸術祭2010の審査委員会推薦作品に選ばれたほか、「タロピカーナ」がJapan Film Festival2009の招待上映作品となっています。


このほかに動画革命東京が支援してきた作品の一部を紹介します。

第1期作品「コルボッコロ」は糸曽賢志さんの作品。文化と科学の発展を優先したことで自然が失われた街、その街の姫でありながら自分の居場所を失い始めている14歳の少女・鈴は、ある日偶然自然の精霊コルボッコロと出会います。街の秘密やコルボッコロの正体、そして鈴が背負った運命はそれぞれに絡み合い、一つの真実を紡いでいきます。主演は「化物語」八九寺真宵役や「らき☆すた」柊かがみ役の加藤英美里さん。


コルボッコロが完成した2007年のフライヤーによると、動画の枚数はテレビアニメの3倍にあたる1万枚超。動画本来の温かさを追求するため、背景も動画もほぼ手描きで制作されているそうです。2009年10月15日からは「みんなのシアターWii」にて配信が行われています。


同じく第1期作品、堀江弘昌さんによる「Love Roller Coaster」。死んだ母からのメッセージで、大切な宝物がロケットに積まれていると知った10歳の小熊・ジョンが友達とともにロケットを探すドタバタ冒険劇。


2008年12月と2009年11月にNHKにて放送が行われたほか、「みんなのシアターWii」で配信されています。


TAILENDERS(テイルエンダーズ)」は企画・監督・企画・アニメーション制作をピコグラフが担当。北海道教育大学卒業生で構成されたグループで、かつてワンダーフェスティバルに変形玩具を出品したところ7分で完売という逸話を持ちます。


将来を期待されたレーサーだった巴士郎は、大事故に巻き込まれて生死の境をさまようことになる。心臓を「トモエドライブ」という専用新型エンジンに置き換えたことで無事生還はしたものの、レギュレーション上そのエンジンのせいで車の部品として見なされる士郎は、全てのレースに出る資格を失ってしまった。唯一、未開の土地を切り開くルール無用の惑星再開拓レースには参加を許されるということで、己のプライドのためや賞金狙いで集まってきた個性豊かなレーサーたちと士郎との奇想天外なラリーが始まる……というストーリー。


こちらはTAF2010用に作られた新ポストカードのイラスト。


「TAILENDERS」はSAPPOROショートフェスト2009で上映されたほか、「みんなのシアターWii」でも視聴可能です。


三上浩司さんが企画した「Yokai」。日本の妖怪の秘密を探るべく、アメリカの妖怪帝国から妖怪一家が日本の霊地に送り込まれた。そこでは日本妖怪が人間にとりついて普通に生活を送っており、一家はすぐに人気者になる。なんとか任務を果たそうとする一家の父・ハンクだったが、邪魔者の出現や文化の違いのせいでなかなかうまくいかず……。


文化や宗教、考え方の違いでなかなか世界は仲良くなれないけれど、そんなのは妖怪のせいにしてみんなで笑い飛ばし仲良くなれれば…という思いが込められているようです。


山下裕智さんの「SUPER STRINGS」は”あやとりアクション””ネイチャーパンク”という、これまでにない新しいSFの形を提示しています。


全ての生物が子孫を残せなくなった未来、砂漠のオアシスに最後の人類である3人の子どもたちとわずかに生き残った動植物が暮らしていた。彼らは地球上の全ての生命体を不死化させるための研究を続けていた……というお話。パイロット映像は7分ですが、作品としては約100分の映画を想定しているそうです。


エグゼクティブプロデューサーの竹内宏彰さんによれば、すでにあちこちから話が来ている作品もあり、作品を見てイイと思った人はどんどん連絡して欲しいとのことでした。

「機兵戦記レガシーズ」をはじめ、このままパイロット映像だけにしておくには惜しい作品ばかり。テレビアニメ化、映画化といろいろな方法はあると思いますが、「センコロール」のように完成した作品がどんどん生まれるといいですね。

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in 取材,   アニメ, Posted by logc_nt

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