取材

若手アニメーターを育てる「あにめたまご2017」完成披露上映会レポート


日本のアニメ業界の将来を担う優れたアニメーター等を育成するために行われている文化庁委託事業「若手アニメーター等育成事業」、通称「あにめたまご2017」の完成披露上映会が行われました。まずは「プロジェクトA」、続いて「アニメミライ」を名前を改めた事業も7年目。今年は「ちゃらんぽ島(ランド)の冒険」「RedAsh -GEARWORLD-」「げんばのじょう-玄蕃之丞-」「ずんだホライずん」の4作品が制作されました。

あにめたまご2017
https://animetamago.jp/

会場は池袋HUMAXシネマズ


サンシャイン通りには「東京が、アニメーションのハブになる。」という東京アニメアワードフェスティバル2017(TAAF2017)のバナーがかかっていました。


映画館の中にあったポスター


「あにめたまご2017 完成披露上映会」はTAAF2017のプログラムの1つとして開催されたもの。


上映される4作品「ちゃらんぽ島(ランド)の冒険」「RedAsh -GEARWORLD-」「げんばのじょう-玄蕃之丞-」「ずんだホライずん」


イベントの司会進行は声優の園崎未恵さんと近藤孝行さんが担当。


まずは文化庁の内丸氏があいさつを行いました。

文化庁 文化部長 内丸幸喜氏:
アニメ業界を発展させていくには人材の力が一番だと考えています。「あにめたまご」は若手アニメーターと業界をこれまで支えてきた諸先輩が一緒にがんばる場で、日本のアニメーションに関するノウハウ、技術が伝わっていきます。諸先輩方も、若手とともに作業をする中で「なるほど」と思うことがあるかもしれず、世代を超えた交流の中でいい作品が生まれ、日本のアニメーションの伝統、文化も生まれてくるのかなと思います。

事業は今回で第7回目、今年度は27名の若手アニメーターが参加しました。いろいろな苦労もあったかと思いますが、その中で熟練の先輩方の技術を学ぶいい機会になったのではないでしょうか。ご多忙な中でご支援・ご協力いただいた諸先輩方にはお礼申し上げます。本日は一般の方も見に来ているということで、今後の皆さんのサポートこそが日本のアニメを進めていく力となりますので、今後ともアニメへの支援をお願いできればと思います。

最後に1つ、文化庁のPRです。文化庁では様々な文化、芸術を生みだしていくところを支援していますが、それだけではなく、文化の力をいろいろな形で社会に伝えて貢献していこうということもやっています。国として文化が新たな起爆剤とならないか、文化の力を社会に活かせないかということを、文化庁としても進めていきたいと考えています。今後の最大の区切りとして、目標は東京オリンピック・パラリンピックです。。もちろんスポーツの祭典だが、同時に、文化の祭典でもあります。オリンピック憲章の中にも「オリンピックを開催する国では、それにふさわしい文化プログラムを開催する」という規定があります。文化庁でも進めていますが、アニメーションについても、これから津々浦々に開花させていきたいと考えているので、よろしくお願いします。


続いては日本動画協会の松本悟専務理事によるあいさつ。

日本動画協会 専務理事/事務局長 松本悟氏:
今年で事業は7年目、日本動画協会受託事業としては3年目です。オリジナル作品を作ることをベースに、若手アニメーターの技量を向上させ、それだけではなくクリエイターになるための勉強をいろいろな形でしていただきました。なかなか体験できないような、いろいろな指導者のもとで助言を受けつつ作業をするという経験もしてもらいました。次の制作にかかったときに、横の繋がりも含めて、これからの人生で身につくことだったのではないかと期待しています。声優の方はよくご存じかと思いますが、アフレコ現場では線画で、カラーがついているなんて目にしたことがないという人もいるかと思いますが、今回はアフレコ時にはオールカラーという形になるように、スケジュールをきっちり組み立てながら行いました。一つ屋根の下でやるということの重要性も学んでいただいたのではないかと思います。完成した4作品をみなさんと見ることを楽しみにしておりますが、本日は楽しんでいただけると思います。


各作品の上映前にはそれぞれの作品の制作を担当したプロデューサー、監督とアニメーターのみなさんが登壇してトークを行いました。

◆「ちゃらんぽ島(ランド)の冒険」:スタジオコメット


清野一道 エグゼクティブプロデューサー:
今回の事業は私も(スタジオコメット)オーナーの茂垣も重要なものだと考えています。その理由の1つは「オリジナル作品を作れる」というところです。この機会を与えてもらえるというのは重要な点です。日本のアニメのビジネスモデルは原作主体で、それがビジネスを成功させるシステムになっています。そのため、オリジナルを作れる機会は非常に少なく、最後までオリジナル作品を作れない人もいます。もう1つは「オリジナルで音楽をつけられる」という点です。音楽とアニメの一体化もビジネスを成功させるシステムなので、オリジナル音楽をつけられる機会は少ないです。今回はスタジオコメットとして三沢伸監督、キーボーディスト・長池秀明さんとともに、テーマに沿った音楽をどう構築するか厳密に計算して作りました。当然、脚本も重要なポイントです。ここはコメットと長く付き合いのある山田隆司さん、山下憲一さんにお願いしました。若手人材育成事業ですが、ベテランと強力なタッグを組んだスタイルでいい映像ができあがったのではないかと思います。

小竿俊一 プロデューサー:
参加当初は手探りでしたが、3~4カ月かけてじっくりと1つの作品に全員で取り組んで完成を目指すのはとても貴重な体験でした。朝から夜の早い時間までで仕事が終わるというのも、とても新鮮な体験でした(笑)

園崎:
定時が決められていたんですよね。

小竿:
テレビシリーズだとスピード勝負というところがありますが、今回は若手中心に丁寧な作品作りができたというのが嬉しいところです。

近藤:
作品のこだわりや見どころはいかがですか?

三沢伸 監督:
キャラクターですね。なかなか現状のテレビシリーズだと、こういうキャラは通りにくいんです。かわいいキャラクターがいっぱい出てきて、目なんかにすごく特徴があり、なかなか見たこともないような描き方をしていると思います。

園崎:
瞳が特徴的ですよね

三沢:
芝居の基本は「視線を合わせる」というところから始まるんですが、その点では演技が難しかったのではないかと思います。あと、ほぼ人が出てきません。ぜんぶ動物です。モチーフの動物かどうかも分からない不思議な生き物ですが、みなさんの頭の中でいろいろと育てていただければと思います。

キャラクターデザイン 下地なるみさん:
今回、キャラクターデザインと原画をさせていただきました。目については「落書きっぽい感じを活かしたい」と思ってデザインしたのですが、いざ描くとなると確かに難しいなと思いました。参加した原画マンの1人が立体を作ってくれて「ああ、こんな感じなんだな」と思いました。

若手アニメーター:
原画は初めてだったのでわからないことづくしで、学びながら本番作業をするので、考えることが多くて大変でした。

若手アニメーター:
動物に似たキャラクターをどう動かすのか考えるのに苦労しましたが、『キャラクターを潰してしまう』など、人間のキャラクターではできないようなことを学ぶことができました。

三沢監督、小竿プロデューサー、清野エグゼクティブプロデューサー。


・作品情報
誰も行ったことのない南の海の果てに、『ちゃらんぽランド』という島があった。島の真ん中には、毎日たくさんの卵を産む巨大なバオバブの樹が生えている。卵の中身は、何と食べ物や衣類などの生活必需品。おかげで島の住民は卵を頼りに生活するようになり、いつしかちゃらんぽらんな日常を送るようになっていた。しかし、最近は中身が空っぽの卵が増えてきて、みんな不安に駆られてきているようだ。そんなある日の夜、虹をまき散らすような光と轟音とともに、バオバブの樹から不思議な模様をした卵が産み落とされた。翌朝、村長の「ぽんちょ」はなぜかその卵を見つけなければならないと、住民たちに訴える。やがてトラの「こめとら」をはじめとする子どもたちが、卵を森で発見するのだが……。

監督:三沢伸
プロデューサー:小竿俊一
脚本:山田隆司、山下憲一
作画監督:本田辰雄
キャラクターデザイン:下地なるみ
作画監督補佐:福地和浩
指導原画:福地和浩、一川孝久
色彩設計:津守裕子
美術監督:春日礼児
音楽:長池秀明
音響制作:神南スタジオ
制作担当:反町和宏
若手アニメーター:下地なるみ、福田瑞穂、福田瑠奈、永野千絵、松本丘、池田彩乃、高野友稀、石黒愛美

コメトラ:坂本千夏
ぴょん:大和田仁美
ぐんま:落合福嗣
アカン博士:野瀬育二
ぽんちょ:武虎
バオバブの樹の精:大原さやか
コメトラの父:丹沢晃之
コメトラの母:根本圭子
カバさん:後藤ヒロキ
おじぎヘビ:塾一久
トンガリ:奈良徹
ハラマキ:津久井裕子
あーちゃん:湯浅かえで
うーちゃん:佐藤千秋
© スタジオコメット/文化庁あにめたまご2017

◆「RedAsh -GEARWORLD-」:STUDIO4℃


久江由華プロデューサー:
監督はじめ若手アニメーターも経験の浅い中で挑んだ作品で、仕事をするときの体力がつくようなタフな経験になったのではないかと思います。6人の若手アニメーターがそれぞれ30~40カットほどを担当しました。後半は作品の特徴でもあるテクスチャ、撮影まで協力して、自分たちでこの作品を完成させようという姿勢が見えていい事業になりました。ほとんど、自分たちの担当したカットを最後まで仕上げられたのではないかと思います。

佐野雄太監督:
この作品はキャラクターがフル3Dのアニメーション作品です。フル3Dの場合はソフトの使い方がかなり複雑ということもあり、技術習得に時間がかかるので、学校で学ぶ段階だとソフトの使い方を学ぶまでしか勉強していないこともあります。「アニメーションを作る」というのは、ただ動かせばいいのではなく「キャラクターに命を吹き込む」ということですので、3Dにこそ、こうした事業があればいいのではないかという思いがあります。

原画にはだいたい動画である程度経験を積んでからなるものですが、3Dだとツールの都合上「動画で経験を積む」という過程があまりなく、いきなり原画になるので、3Dでいう「若手」というのは「初心者」にあたります。今回、みんな経験が浅くて、ソフトを触って間もないという子たちだったので、どう教えていくかというところではかなり試行錯誤して、カリキュラムを一生懸命作りました。ことで、アニメーションというのは感覚を伝えるものなので修行のように繰り返しやっていく必要があるのですが、短い期間でちゃんとしたアニメーターに育てなければいけないということで、何度も繰り返す時間はなかったので、理論と感覚を適度なバランスで教えていきました。実際に作ってもらって、チェックするときには「ここが悪いから直して」ではなく、「こういう理由だからこうなっている」「この動きはこういう理由だからよく動いている」と教えるように心がけました。理論を教えて、作って、おさらいとしてまた理論に戻るというキャッチボールです。プロジェクトは1フロアで行うということで、監督である自分も若手アニメーターと同じ場所で作業をしていたので、よくキャッチボールができていたのではないかと思います。

若手アニメーター:
ソフトの使い方はわかっていても、どうアニメーションをつけていくかわからない部分がありましたが、すぐ隣に監督がいる状態だったので「わからなかったらすぐ聞きに行く」ということが、最初は100回ぐらいは監督のところに聞きに行きました。後半になると、キャラクターの体格を考えて「このキャラならどういうアニメーションになるかな」と自分の中で考えてつけられるようになったので、成長できたのではないかと思います。

若手アニメーター:
自分は経験が浅い方だったので、監督に手取り足取り教わり、同期のみんなにもいろいろ助けてもらいました。監督にすごく聞きやすい環境で、成長できました。

佐野監督:
作品にもよりますが、最初の打ち合わせのあとはもう(監督とアニメーターは)顔を合わせることがないということもあります。今回のように横に席を並べて四六時中話を聞くということはないですから、自分としても朝から晩まで質問攻めに遭ったりして大変でした。みんなが帰ったら「よかった、ようやく自分の仕事ができる」ということもありましたが(笑)、でも幸せな時間でした。

若手アニメーター:
私は3Dでのアニメーション制作が初めてで戸惑いました。やっているときは楽しくなかったのですが、撮影になってようやく自分がやったカットを客観的に見られて「いい、悪い」が見えるようになって良かったかなと思います。あと、フェイシャル、キャラクターに表情をつけるところはすごく苦手だと思っていたのですが、監督から総評をいただいたときに「フェイシャルがよかった」と言ってもらえて、自分の強みかなと思いました。

若手アニメーター:
これだけじっくりと教えていただく機会はなかなかないことだと思うので、すごくありがたかったです。自分はCGなので、作画の方にアニメーションを教わることもないですし、指導で作画の方に入っていただけたのは貴重な機会だったと思います。「絵を描く」という宿題があったのですが、普段はCGなので「週に1枚絵を描く」というのがすごく過酷でした。テーマを表現するための、ものの配置や要素みたいなものは3Dでも重要なことだと思うので、やれてよかったと思います。

若手アニメーター:
今回、「あにめたまご」に参加して、若手原画がこんなにもプロジェクトの中で大きな役割を担うという作品作りに対する責任感、自分の立ち位置の重要性を自覚して作業できたのは、CGアニメーターとして仕事をする中で重要な経験ができたと感じました。

久江プロデューサー:
注目して見ていただきたいのは、主人公のベックとタイガーがいるところへヒロインのコールが飛び込んでくるところです。日常芝居はアニメーションの中でも難しいところだと思いますが、原画6名が頑張ったところなので注目して下さい。また、作品を盛り上げる音楽も映像展開に合わせてついているので、こちらも見ていただけたらと思います。

青いシャツの男性が佐野監督、その右隣が久江プロデューサー。


・作品情報
遺伝子にナノマシンが組み込まれ、特殊能力を擁する“ナノ種”(ナノレース)が、普通の人間“ピュア種”(ピュアレース)に管理、差別されている未来社会。その中で、赤い灰に変わる“レッドアッシュ”の能力を持つ、伝説のハンターでもあるナノ種の少年ベックは、ピュア種になる手術費用を稼ぐため、メカニックの気弱な大男タイガーとともに、パラレルマシンで旧世界へ跳ぶ危険な仕事に従事していた。そんなある日、謎の二人組サファリ&ストライプに追われる少女コールがベックらの前に突然押しかけてきて、一緒に歯車世界へ跳ぶ羽目に。しかし二人組とそのリーダー、ディナイは執拗にコールを追い求め、ついにベックたちに攻撃を仕掛けてきた……!

監督:佐野雄太
プロデューサー:久江由華
脚本:大河内一楼
作画監督:清水保行
3D作画監督・キャラクターデザイン:今中千亜季
指導原画:平野浩太郎
指導中堅原画:大森祐紀、細山伸雄
動画検査:梶谷睦子、加来由加里
制作担当:関根彩子
色彩設計:成毛久美子
美術監督:金子雄司
編集:松原理恵
音響効果:野口透
音楽:Koji Nakamura
若手アニメーター:海老原優、中島隆紀、吉川由衣菜、長島瑠、鈴木このは、江上柚布子

ベック:梶裕貴
タイガー:森脇陸三
コール:内村史子
ディナイ:浜田洋平
サファリ:安部憲人
ストライプ:竹田雅則
ルーシー:楠原志乃
ロッキー:林大地
ダニエル:初村健矢
© Beyond C./文化庁あにめたまご2017

◆「げんばのじょう-玄蕃之丞-」:日本アニメーション


古久保悠プロデューサー:
現場としてはありがたいプロジェクトでした。アニメーターが企画から携わるというのはなかなか作れない機会なので、キャラクターデザインから仕上げ、撮影まで含めて、みんなで作り上げた作品です。「時間がある」というところはいい面もあり悪い面もあって、時間があるとそれだけこだわりが出てくるので、制作側としては苦労したとこも多少はありますが、その分、いいものになったかなと思っています。

堂山卓見監督:
今回は「ロトスコープ」のように、みんながカットをそれぞれ自分で演じたり、古久保プロデューサーに実際に玄蕃之丞になってもらってその姿を撮影したりと、いろいろ試してみました。そのあたりの詳しい話は……。

キャラクターデザイン 武本心さん:
玄蕃之丞は狐が人間に化けているキャラクターなのですが、古久保さんには自分が作画を担当したところで、玄蕃之丞が人間のときを演じてもらって、踊ってもらったり。見得を切ったりするシーンもあって。

古久保:
そこまではやってない(笑)

武本:
実際にマントをつけてもらったりしました。時代が明治後期でみんな和服ということで、実際にみんなで来てみて、それを撮影して参考にしたりしました。

若手アニメーター:
動物が好きなのですが最近は描く機会がなく、今回はいっぱいでてきて楽しく描くと同時に大変だなと痛感して、課題も感じました。今後も、動物をまた描いてみたいと思います。狐は周囲にはなかなかいかったので、実際に宮城に見にいこうかという話もあったのですがスケジュールが合わず、動画サイトを参考にしたりしました。次があればぜひ行きたいと思います。

若手アニメーター:
企画の段階からみんなで意見を出し合って、自分からもいろいろ意見を出したりしました。こういうのはいいねと採用されたり、見送られたりして、この作品で自分がどう役に立つか、作品にとって自分がどういう役割で参加できるのかを勉強させてもらいました。作画のあとは撮影に参加したり、アフレコを見学させていただきました。

若手アニメーター:
自分はあまりにも描けなくて、辛くて、辛いを通り越して楽しくなりました。人物の描写で「本当にいそうだな」「こういうのいるな」というのを自分の技術では表現しきれなかったと感じる部分があったので、今後、さらに頑張っていきたいと思います。

若手アニメーター:
私は浴衣を着てモーションを撮ってもらった側ですが、貴重な体験でした。

若手アニメーター:
僕は韓国人で、20代すべてを日本で送ったので「日本についてわかったかな」と思っていたら、この仕事でまた日本の文化や伝統についてわかっていないなと感じました。指導原画さんにも苦労をかけた部分があり、作画として力不足を感じ、日本をもっと勉強しなければいけないと思いました。

若手アニメーター:
今回はじめて原画作業をやることになり、一からアニメーションを作るということに携われて学ぶことが多かったです。「自分で動いてみる」という部分では監督にも手伝っていただいたりして、すごく勉強になりました。動いてみないとわからないこと、気付くこともたくさんありました。

武内さん、堂山監督、古久保プロデューサー。


・作品情報
信州の塩尻、桔梗ヶ原と呼ばれる土地に、はなという女の子が住んでいた。はなは家族思いの優しい女の子で、曾祖母である千代のことを特に慕っていた。 ある日、はなの村に“夏川玄左衛門一座”という旅芸人がやってくる。村人は大喝采で彼らを迎え、祝儀をはずむ。興行を終え、祝儀の中身を確認していた彼らのリーダーは、好物の“おやき”を見つけたことで興奮し、キツネの姿になってしまう。実は彼らの正体は、辺り一帯のキツネを束ねる、玄蕃之丞(げんばのじょう)とその仲間、お夏と新左衛門だったのだ。偶然その場に居合わせたはなに正体がばれたと思い、焦った玄蕃之丞は、「正体を秘密にしてもらう代わりに一つだけ願いを聞いてやる」と提案するのだが……

監督・脚本:堂山卓見
プロデューサー:古久保悠
キャラクターデザイン:武本心
作画監督:中田博文
指導原画:五味裕子
中堅原画:金子昌司
動画チェック :矢地久子
音響監督:早瀬博雪
音楽:高梨康治(Team-MAX)、片山修志(Team-MAX)
音響効果:松田昭彦、神保直史
美術監督:稲葉邦彦
色彩設計:小森谷初
撮影監督:山口高志
編集:宮崎満里奈
設定制作・演出助手:渡邉龍之介
制作進行:田中里咲
若手アニメーター:武本心、元豪燦、髙橋彩、篠田美咲、松村亜沙子、西田朋代、清水伸太郎
© 日本アニメーション/文化庁あにめたまご2017

◆「ずんだホライずん」:SSS合同会社スタジオ・ライブワオ・コーポレーション


ワオ・コーポレーション 青木清光プロデューサー:
この作品はSSSさんが原作で、スタジオ・ライブとワオ・コーポレーションが作画を担当させてもらいました。なかなか時間をかけて作品を作るということができていなかったのですが、このプロジェクトでは1カット1カット時間をかけて仕上げることができて、貴重な経験ができたのではないかと思います。

SSS 小田恭央代表:
「東北ずん子」は東日本大震災をきっかけに、東北を盛り上げていこうということで作られたキャラクターです。この作品も東北が元気になるためにお届けできればと思います

スタジオ・ライブ 奥津咲子プロデューサー:
完成披露上映会が11日に行われると聞き、東北ずん子をテーマにしたアニメを発表する場がこの日(3月11日)というのには驚きました。みんなが頑張った作品を皆さんに伝えて、東北の元気、みなさんの元気に繋がればいいなと思います

試みとしては若手アニメーターさんを育てるということで、みなさん経験が浅い中でやられていて、大変なこともあったと思いますが、一カ所に集まって1つのものを作り上げる機会はなかなかないので、制作サイドとしても、関わったスタッフとしても、いい経験になったと思います。

若手アニメーター:
ふだんは自分の机にかじりついて外の会社からお仕事をもらったり、手元から素材が離れたら演出さん監督さんのチェックが入って戻ってくるという、人任せになりがちなのですが、今回はみんなが机を並べているので、カットの内容を自分でしっかり管理をして、どのような絵に仕上げたいのか一から十まで考え、それをやらせてもらえる、許される環境であったというのがよい点だったと思います。他人の作業状況も同時に見られることで勉強になりました。

園崎:
他の人と比較してみてどうだったというのはありますか?

若手アニメーター:
自分だったらこうするかもしれないというのもあるし、他人の素材を見て、こういうやり方もあるのかということをいろいろ吸収させてもらえたというのは大きな点だと思います。

若手アニメーター:
自分は原画歴半年ぐらいで参加しました。右も左も分からない状況で、国からのお仕事(文化庁委託事業)ということでお金も出ているわけで、プレッシャーがものすごくて、何を描いても納得できず、自分の絵が徹頭徹尾信用できないので、そこが辛かったですね。

園崎:
その点は最後には克服できましたか?

若手アニメーター:
克服はできていないと思いますが、今後に生かせればと思います。かわいい女の子を描くのが好きなのですが、出てくるキャラクターが女の子ばかりで、モチベーションが崩れることなく描ききれたかなと思います。

若手アニメーター:
ほかの会社の方もおっしゃっていましたが、監督や上の方とスムーズにやりとりできて、長い時間同じところにいたからこそ、みんなの考えややり方を知ることができたなと思います。忙しいときはもちろん大変でしたが、全体を通してステップアップできましたし、キャラに愛着を持てて、すごくよかったと思います

若手アニメーター:
参加前は描くことだけに必死で「動かす」ということが機械的というかあまりできていなかったのですが、参加させていただいて「キャラに感情を乗せる、演技させる」「命を吹き込む」ということをどうすればできるのかということを教えていただきました。最初、コンテの意図を読み取ったり、レイアウトの配置とかを考えたりするのは難しかったです。

若手アニメーター:
全体的に大変だった思い出しか残っていないです。いままで苦手だった部分があったのですが、期間が長かったことで嫌でも向き合うことになって、そのおかげですごく勉強になったと思います。

園崎:
楽しかったこと、ためになったことはありましたか?

若手アニメーター:
「ずんだもん」というゆるキャラを描くのは楽しかったです

竹内浩志監督:
一番楽しかったのはこちらの想像を超える描き込み、「ここまでやってくるんだな」というものが上がってきたとき、すごく嬉しかったです。いろいろと悩みながら描いて、こういう風にしたいんだという上がりが来ていたので、それをなるべく殺さずに活かしていこうとやっていきました。見どころはどこか一部ではなく、全体的にみんな頑張っています。なるべく見ている人たちが退屈しないようテンポ良く作ったつもりですので、ご覧いただければと思います。

村濱章司氏:
「ずんだ」は枝豆をつぶして砂糖を混ぜたもので、もちにしたりして食べます。この作品は、その「ずんだ」のキャラクターが歌うミュージカルアニメで、歌はボーカルシンセサイザーが担当しています。歌っているところを作画するのはとても大変なんですが、ライブさん、ワオさんの力が集まってすごくいいアニメになったと思いますので、楽しんでいただければと思います。

竹内浩志監督


・作品情報
「ずんだアロー」で矢を放ち、どんな餅でもおいしいずんだ餅にすることができる東北ずん子は、 東北きりたん、東北イタコ、中国うさぎ、四国めたん、九州そららとともに、 ずんだ餅を食べながら幸せに浸っていた。 一方、大江戸ちゃんこ総帥率いる「納豆ファクトリー」の面々、中部つるぎ、関西しのび、 沖縄あわも、北海道めろんらは、ずんだの原料の枝豆と納豆の原料の大豆が、 収穫時期が違うだけで、実は同じ豆であることから、納豆に使う大豆の量が減ることを恐れていた。 ずん子の家に刺客として送られる沖縄あわもと北海道めろん、 そして第3の勢力とは!?

監督:竹内浩志
プロデューサー:青木清光、奥津咲子
キャラクター原案:江戸村ににこ
脚本:横手美智子
作画監督・キャラクターデザイン:鈴木理彩
育成責任担当:神志那弘志
指導原画:真壁誠
中堅原画:中島絵理、阿比留隆彦
動画チェック :服部照美
音楽:多田彰文
音響制作:スタジオマウス
制作担当:曽布川雅也
若手アニメーター:坂口実穂、若狭賢史、川口百合恵、井上修一、小川純央、中山照幸

東北ずん子:佐藤聡美
東北きりたん:茜屋日海夏
東北イタコ:木戸衣吹
中国うさぎ:桃河りか
四国めたん:田中小雪
九州そら:西田望見
大江戸ちゃんこ:指出毬亜
中部つるぎ:濱口綾乃
関西しのび:今村彩夏
沖縄あわも:古賀葵
北海道めろん:清水彩香
ずんだもん:伊藤ゆいな
第3勢力「謎の黒いヤツ」:豊口めぐみ
餅神様:折笠富美子
© SSS・STL・WAO/文化庁あにめたまご2017

各作品の上映後にはプロジェクトリーダーの石川光久さんによるあいさつが行われました。

あにめたまご2017 プロジェクトリーダー 石川光久氏:
この事業に携われたことを誇りに思います。いま、アニメーション業界の昨今の作り方はどうしても結果を追い求めています。「作った作品がすべて」といえばすべてなのですが、緻密なアニメーションを求められ、アニメーターにとっては過酷な時代です。しかし、結果だけではなく過程の大変さ、面白さや先輩が後輩に教えるという環境を文化庁さんの事業で作っていただきました。参加した若手アニメーターの皆さんには、どうかこれを後輩にもバトンタッチしていって欲しいと思います。日本動画協会としては大きな問題として、今後どうしたらアニメ業界はよりよい環境でやっていけるかということを考えています。この作品を作ったことが種となるように、実践していかなければならないと思います。ぜひ、みなさんで業界を盛り上げ、温かい気持ちで見守っていただきたいと思います。


◆今後の展開
「あにめたまご2017」については今後、MBSとアニマックスで4作品一挙放送が予定されていて、4月22日から28日にはテアトル新宿でレイトショー上映が行われます。3月25日・26日のAnimeJapan 2017では「あにめたまご2017展」が行われ、JALでは機内上映も予定されています。

完成披露上映会に参加した皆さん。後列は司会のお二人とプロデューサー・監督陣、前2列が若手アニメーターの方々。だいたい左側から「ちゃらんぽ島(ランド)の冒険」「RedAsh -GEARWORLD-」「げんばのじょう-玄蕃之丞-」「ずんだホライずん」と作品ごとに並んでいます。


ちなみに、過去にこの「若手アニメーター等育成事業」から生まれた作品としては、「アニメミライ2013」で生まれた「リトルウィッチアカデミア」が映画「リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード」として劇場公開され、さらに2017年1月からテレビアニメになって放送されています。

同じく「アニメミライ2013」で制作された「デス・ビリヤード」も、続編としてテレビアニメ「デス・パレード」が制作・放送されました。

「あにめたまご2016」で制作されたカラフル忍者いろまきもディレクターズカット版が劇場公開されました。

ひょっとすると今回の4作品が将来的にそうした展開につながっていくかもしれないので、どうか楽しみに見守ってください。

「あにめたまご2017」第2弾PV(Long Ver.) - YouTube

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