サイエンス

誰もいないのに大勢の子どもが遊んだあとのようにドーナツ型の雪が転がる不思議な自然現象「Snow Roller」

Photo by ilarib (ancora sotto effetto panettone!)

雪や氷の層、気温や湿度や風などの複雑な気象条件が重なった時のみに起きる自然現象「Snow Roller」は、その形状から「Snow Doughnuts(雪のドーナツ)」や「Snow Bales(雪俵)」とも呼ばれ、主に北米のプレーリーで見られます。日本語では「雪まくり」と呼ばれるとおり、地面に積もった雪が風によりシート状にまくりあげられドーナツ型やロールケーキ型の雪玉を形成するのですが、この珍しい現象の写真を集めてみました。

Rare self-rolling giant snow balls found in UK
https://www.telegraph.co.uk/news/weather/6950788/Snow-stories-rare-self-rolling-snow-balls-found-in-UK.html

30年ぶりの大寒波に襲われたイギリスで観測されたSnow Roller。

Photo: Ron Trevett

サマセット州Yeovilの自宅近くで犬の散歩中にこの光景を目にしたTrevett夫妻は、初めは子どもたちが大きな雪玉を転がして遊んだ跡だと思ったそうですが、近づいてみると足跡がまったく無いことや、あまりにも数が多すぎることに気付き、風の仕業だろうという結論に至ったそうです。

Photo: Ron Trevett

National Weather Service - NWS Spokane

2009年3月31日にアイダホ州北部Craigmont近郊で仕事帰りのTim Tevebaugh氏が車から観測したもの。翌朝通勤で同じ道を通った際にはすでに消えていたとのことです。


Tevebaugh氏の目測や草の高さとの比較から、ここに映ったSnow Rollの多くは直径18インチ(約45cm)程度、最も大きなもので2フィート(約60cm)程度とのことです。


Snow Donuts - A Natural Weather Phenomena

こちらはオンタリオ州Ajaxで2008年1月に観測されたもの。大規模な雪合戦の跡のようにも見えます。


Ajaxはトロント近郊、奥に映る水面はオンタリオ湖です。


NWS Central Illinois -- 2/12/2003 Snow Roller Event

Snow Rollerはほぼ円筒形で、小さいものはこぶし大、大きいものでは直径70cm・長さ1.2m程度にまで成長するそうです。典型的なものは直径10~12インチ(約25~30cm)程度とのこと。

イリノイ州Petersburg近郊で2003年2月に観測されたこのSnow Rollerは直径11インチ(約28cm)。


イリノイ州Buffaloで同時期に観測されたSnow Rollersは、雪がまくられた部分の地面が露出しています。この時の積雪は1~4インチ(約2.5~10cm)とのこと。


本当に子どもが遊んだ跡のようです。


A snowball's chance rolls around

オハイオ州シンシナティのBond HillにあるWoodward High Schoolの校庭で2003年2月に観測された直径約25cmのSnow Roller。内側の巻き始めの層は外側の層と比べ薄く、吹き飛ばされて空洞となる場合が多いそうです。

Photo by Glenn Hartong

ペンシルベニア州立大学の気象学者Paul Pastelok氏によると、雪がまくられるには時速60km以上の強風が必要だが、強すぎる風だと吹き飛ばされてしまうとのことです。また、特に転がり始めは下り坂だと転がりやすいため、山岳地帯でよく見られるそうです。

Local News | A rare treat from nature: Perfect snow doughnuts | Seattle Times Newspaper

これは強風ではなく、主に重力によって形成されたと思われるもの。2003年3月にワシントン州のNorth Cascades(カスケード山脈の一部)を通る道路Washington Passで観測されました。大きい方は直径24インチ(約60cm)程度で、ドーナツの穴の部分に人の頭がすっぽり入るほどだったそうです。

Photo by Mike Stanford

ユタ州で観測された見渡す限りのSnow Rollers。

Photo by Leigh Huggins

Ilm - Piltuudis: tuul veeretab lumepalle - Ilmajaam.ee

こちらは2008年11月にエストニアで観測されたもの。

Photo: Olev Mihkelmaa

以上のようにSnow Rollersは主にアメリカ北部からカナダで見られるのですが、日本でも東北や北陸などではまれに観測されているようです。屋根の斜面で小さなSnow Rollerが生じる場合もあるようなので、雪が積もった翌朝には屋根をチェックしてから出かける習慣をつけるとよいかもしれません。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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