KDDIがAndroidとiPhone、Windows Phoneを扱う唯一のキャリアになるまでの戦略を振り返ってみた
今回のiPhone 4S獲得でGoogleの「Android」とAppleの「iPhone」、そしてマイクロソフトの最新プラットフォーム「Windows Phone 7.5」を揃えた国内唯一のキャリアとなったKDDI。
これによりユーザーが好きなプラットフォームを同じキャリア内で自由に選べるようになったわけですが、同社のスマートフォン戦略を振り返ってみました。
◆「Android au」がすべての始まり
「IS01」CMキャラクターにレディ・ガガを採用し、「Android au」というキャッチコピーで2010年11月26日に「日本人が求める最良のスマートフォン」こと「IS03」を大々的に売り出したのがKDDIのスマートフォン戦略の始まり。なお、同社は「IS03」発売前にAndroidスマートブック「IS01」で手痛い失敗を経験しており、この時点ではiPhoneで先行するソフトバンクモバイルや2010年4月に初代XperiaをリリースしたNTTドコモに大きく遅れを取っていました。
◆海外製本格スマートフォン「HTC EVO WiMAX ISW11HT」を導入、WiMAX回線の活用も
スマートフォン市場の先駆者で、快適な動作を実現する独自UI「HTC Sence」を開発するなど、技術力にも定評のあるHTC製の本格スマートフォン「HTC EVO WiMAX ISW11HT」を2011年春モデルとしてリリース。
KDDI子会社のUQコミュニケーションズが展開する下り最大40Mbpsの高速通信サービス「モバイルWiMAX」に対応しただけでなく、「HTC EVO WiMAX ISW11HT」をルーターとして利用し、無線LAN対応機器をインターネット接続できる「テザリング」を安価に実現するなど、端末だけでなくサービス面で他社に一歩先んじたサービスを展開し始めました。
◆他社に無い個性派スマートフォンをリリース、さらに無料のWi-Fiスポットも
かつて高い人気を誇ったデザインケータイ「INFOBAR」をベースにした「INFOBAR A01」や耐久性に優れた「G'z One IS11CA」など、他社には無い個性的なAndroidスマートフォンに加えて、NTTドコモで人気のXperiaシリーズの国内向けモデル「Xperia acro IS11S」を2011年夏モデルとして投入。「Android au」面目躍如といったラインナップになりました。
さらにスマートフォン普及による3G回線のトラフィック増を避ける意味合いなども含めて、無料で利用できる公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」を展開。子会社となったワイヤ・アンド・ワイヤレスと共同で、UQコミュニケーションズが提供するWiMAXなども活用し、2011年度末までに全国10万ヵ所にネットワークを構築する予定。同様のサービスは他社が先行していましたが、IDやパスの設定不要で3Gと自動切り替えできるなど、利便性を大きく高めているのが特徴です。
◆世界初となるWindows Phone 7.5スマートフォンを発売
マイクロソフトのモバイル向け最新OSを採用した「Windows Phone IS12T」を世界に先駆けて7月27日に発表。同プラットフォームはAndroidスマートフォンやフィーチャーフォンのようにキャリア側が用意したサービスを組み込めないなど、キャリアにとってうまみがあるプラットフォームとは言いづらい部分もあります。
しかしKDDIの田中社長は発表会で「Androidだけではいけない」という認識を示し、「選ぶのはユーザーであると考えており、形やプラットフォームにとどまらず、いろいろなものを揃えていく必要があると考えている」とコメント。iモードを組み込めないことをiPhone発売に踏み切らない理由とするNTTドコモとは対称的に、キャリアのサービスを組み込むことにこだわらない姿勢を見せました。おそらくこの姿勢が今回のiPhone獲得へとつながったと思われます。
◆「未来は選べる」がキャッチコピーとなった2011年秋冬モデル発表会
日経新聞に端を発したKDDI版iPhone販売報道が過熱する中、先日行われた2011年秋冬モデル発表会ではデュアルコアCPU搭載の「HTC EVO 3D ISW12HT」「MOTOROLA PHOTON ISW11M」「ARROWS Z ISW11F」などのWiMAX対応スマートフォンを発表。高速駆動、高速通信、テザリング対応のハイエンドモデルが中心となりました。
さらに対ソフトバンクとみられる料金プラン「プランZシンプル」も発表。3000万人以上のauユーザー間で無料通話が可能になるというプランです。
発表会場では「auのこれから」として、ユーザーが欲しい未来を選べる自由を提供することを表明。
「未来は選べる」が新たなキャッチコピーとなりました。
◆iPhone獲得で気になるAndroidスマートフォンの「未来」
今回のiPhone獲得でユーザーが一気にiPhoneに流れ込み、今までKDDIが注力してきたAndroidスマートフォンは冷え切ってしまうのではないか……といった懸念も生まれそうですが、非常に気になるのが「先日発表されたのはあくまで2011年12月までに発売される2011年秋冬モデルで、2012年春モデルはまだ発表されていない」という点。
Google傘下となったことで今後Android陣営の中心的な存在になることが見込まれるMotorolaや、Android陣営にもWindows Phone陣営にもハイエンドなスマートフォンを供給するHTCといった現在KDDIに端末を供給している海外メーカー各社が2012年初頭に開催される家電業界の見本市「CES 2012」などでiPhone 4S対抗の新端末を発表する可能性があるだけに、今後もKDDIの動向から目が離せません。
未来は、選べる。 | au by KDDI
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