光がほとんど届かない海域で巨大な「昆布の森」はどのように育っているのか?

昆布などの海藻は光合成によって成長しますが、水深90mという太陽光がほとんど届かない深海にも巨大な昆布林が存在しています。深海で育つ昆布の謎について、教育系YouTubeチャンネルのTED-Edが解説しています。
The mystery of the giant kelp forest - Luka Seamus Wright and Salomé Buglass - YouTube

20世紀半ばに地中海でスキューバダイビング技術が発展したことで、人類はそれまで到達できなかった水深30~150mの「中有光層(メソフォティックゾーン)」と呼ばれる薄暗い海域を調査できるようになりました。そこで研究者たちが発見したのが、太陽光が地表のわずか0.1%しか届かない水深約90mにもかかわらず、高さ20mを超える巨大な昆布が密集する「昆布林」です。

19世紀後半には「深海から巨大な昆布が引き上げられた」という報告が存在していましたが、地中海での発見をきっかけにブラジル・オーストラリア・北アメリカ・フィリピン海など世界各地でも同様の昆布林が確認されるようになりました。中には水深150m付近から採取されたという報告もあります。光合成を行う植物は十分な太陽光を必要としますが、本来なら巨大な海藻が成長できる環境ではない深海に、浅瀬の昆布と同じか、それ以上の大きさまで成長した昆布が群生しています。この理由について研究者たちは現在も調査を進めていますが、正確なことは分かっていません。

有力な説の1つとして、深海の昆布は浅瀬の昆布よりも光合成効率が高く、葉の表面積を大きくしてわずかな光を効率良く利用するとともに、呼吸によるエネルギー消費を抑えている可能性が考えられています。しかし過去の研究では、それだけでは日照が最大である場合ですら成長に必要なエネルギーを十分に説明できないことも指摘されています。

別の研究では、深海昆布が「エネルギーを節約する能力」を身につけたことが最大の理由ではないかと指摘されています。光合成には太陽光・水・栄養分・二酸化炭素(CO2)が必要です。深海では太陽光は不足していますが、水・栄養分・CO2は豊富に存在しています。海洋中のCO2のほとんどは重炭酸塩の形で存在しており、それを変換するには多大なエネルギーを必要とするため、ほとんどの水生生物は、重炭酸塩を利用できるようにするための仕組みを進化させてきました。一方で深海に生息する昆布は、CO2が多く含まれている深層水をそのまま取り込むため、変換するためのエネルギーを節約できます。

また、浅瀬の植物が必要とする「強い日差しから身を守るための日焼け止めのような分子」を作る必要もないため、深海の昆布はその分のエネルギーも節約できます。さらに、冬には呼吸量そのものを抑え、夏に蓄えた炭素を利用して生き延びることも分かっています。

昆布林は生態系にも重要な役割を果たしています。深海は水温変化が小さいため、海洋熱波によって浅瀬が高温になった際の避難場所として機能し、昆布林はさまざまな生物の生息地になっています。また、昆布は大気中のCO2を吸収して成長するため、気候変動の抑制にも貢献している可能性があります。海を漂う昆布の破片も光合成を続けてCO2を吸収すると考えられていますが、その炭素循環への影響については現在も研究が進められています。

昆布林については現在も分からないことが多く、ほとんどの昆布林は人工衛星では観測できないため、海底のどれくらいの面積を覆っているのかさえ明らかになっていません。研究者たちはROV(遠隔操作型無人探査機)を使って調査を進めており、ガラパゴス諸島沖などでは新たな昆布林も発見されています。

・関連記事
ウニの大量繁殖によって「昆布の森」が失われている - GIGAZINE
地球上で最も孤独な環境である「深海」に隠れているものとは? - GIGAZINE
深海の熱水噴出孔周辺という超絶限界環境の地殻下にはチューブワームが暮らしている - GIGAZINE
深海の生物はなぜ巨大なのか? - GIGAZINE
なぜ巨大な木は周囲の環境を食べ尽くさないのか? - GIGAZINE
海を漂うプラスチックごみが海洋生物を運ぶ「イカダ」として機能している - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in 動画, サイエンス, 生き物, Posted by log1e_dh
You can read the machine translated English article How do these massive 'kelp forests' grow….







