ウニの大量繁殖によって「昆布の森」が失われている
生態系は絶妙なバランスで成り立っており、1種の絶滅が多くの種に影響を与えます。アメリカのカリフォルニア州北部では、ヒトデが数を減らした事によって、広範囲に及ぶ「昆布の森」が失われる事態が発生しています。
Large-scale shift in the structure of a kelp forest ecosystem co-occurs with an epizootic and marine heatwave | Communications Biology
https://www.nature.com/articles/s42003-021-01827-6
The collapse of Northern California kelp forests will be hard to reverse
https://news.ucsc.edu/2021/03/kelp-forests-norcal.html
カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究チームは、海水の温度が上昇する「エルニーニョ現象」とコンブ科コンブ目の生息面積の増減の関連性を明らかにするべく、1985年~2019年の衛星画像を用いて、カリフォルニア州北部沿岸部におけるコンブ目の生息面積の推移を調査しました。
調査結果はこんな感じ。縦軸が緯度、横軸が年を表し、緑色の濃淡はコンブ目の生息面積を示しています。2010年ごろまでは広い範囲に多くのコンブ目が生息していましたが、2015年ごろから急激に生息面積を減らしていることが確認できます。
衛星画像から得られたコンブ目の生息面積の推移と、過去に発生した大規模なエルニーニョ現象の発生年を照らし合わせた図が以下。エルニーニョ現象が発生した期間がオレンジ色や赤色で塗りつぶされています。図を確認すると、1997年~1998年のエルニーニョ現象が発生している時期は、コンブ目の生息面積が減少していますが、1999年には生息面積が回復しています。同じく、2014年~2016年にかけてエルニーニョ現象が発生した際も生息面積が減少していますが、今度は生息密度が回復していません。
次に、研究チームは、コンブ目を捕食するムラサキウニと、ムラサキウニを捕食するニチリンヒトデの生息密度の推移を調査しました。
以下の図は、緑色の線がコンブ目の生息面積、オレンジ色の線が海水温、紫色のバーがムラサキウニの生息密度、ピンク色のバーがニチリンヒトデの生息密度を示しています。2015年ごろからニチリンヒトデの生息密度の減少に伴い、ムラサキウニの生息密度が増加。ムラサキウニが増加した後は、コンブ目の生息面積が回復していないことが確認できます。
研究チームの一員であるメレディス・マクファーソン氏は、「コンブ目はエルニーニョ現象によって生息面積が減少しても、生息面積を回復することができます。しかし近年、ニチリンヒトデの生息密度が減少し、ムラサキウニの生息密度が増加したことで、エルニーニョ現象の影響に耐えられなくなったのです」と述べ、コンブ目を取り巻く生態系のバランスが崩壊していると主張しています。
また、別の研究によると、コンブ目の生息面積が減少したエリアに生息するムラサキウニは、栄養不足に陥っており餌としての価値がないとのこと。そのため、ムラサキウニの捕食者であるラッコも、コンブ目の生息面積が減少したエリアではムラサキウニを捕食しないため、ムラサキウニの生息密度を減らすことは難しい課題とされています。
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