サイエンス

北極海が淡水で満たされていた時期が少なくとも2回ある


ブレーメン大学のアルフレッド・ヴェゲナー研究所ヘルムホルツ極地海洋研究センター(AWI)海洋環境科学センター(MARUM)による長期研究で、北極海はかつて厚さ900mの氷床に覆われ、過去15万年のあいだに少なくとも2回は淡水で満たされていたことが示されました。

Glacial episodes of a freshwater Arctic Ocean covered by a thick ice shelf | Nature
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03186-y


AWI - The Arctic Ocean was covered by a shelf ice and filled with freshwater
https://www.awi.de/en/about-us/service/press/single-view/arktischer-ozean-bedeckt-von-schelfeisen-und-voller-suesswasser.html

約7万年前から約1万年前まで続いた最終氷期の中でも特に寒い時期、北ヨーロッパの広い範囲や北アメリカには巨大な氷床が存在しました。以下の地図の灰色部分が氷床を示しています。このことは氷河地形などからわかっています。


一方、北極海がどうであったかは、痕跡が少なくあまりわかっていませんでした。

AWIとMARUMの研究者は、フラム海峡をはじめとした北極海の10カ所で堆積物コアを採集し、組成を詳細に分析しました。


その結果、北極海は過去15万年の間、氷床の浮遊部分に覆われる状態にあったことがわかりました。また、15万年前~13万年前に1度と7万年~6万年前に1度、それぞれ氷床に完全に覆われる時期があり、このときは淡水がたまり、完全に北極海は淡水の海になっていたとのこと。北極海に供給された淡水の量は少なくとも年間1200km³に上ったと考えられます。

淡水化する北極海を示した図。海面が氷床に覆われた状態で淡水が供給され、どんどん塩分を含んだ海水が北太平洋などへ抜けています。しかし、塩分は重いので、すべて排出されるわけではなく、底の方に残ります。


氷床が後退すると、北極海に流れ込む重い海水の上を淡水が出て行くようになります。また、北大西洋の水は温かいため、氷はさらに解けていきます。


そして氷床は割れて小さくなっていく……という流れがあったと考えられます。


こうした仕組みによって大量の淡水が短期間に北大西洋に流れ込むような動きがあったということは、過去の研究で堆積速度と年代測定の結果の間に生まれていた矛盾の理由付けになるとも考えられており、さらなる研究の進展が期待されます。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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