サイエンス

脳に電気刺激を与える治療法がわずか10日間でうつ病治療に著しい効果をもたらしたとの研究結果


「脳に電気刺激を与える」と聞くとぎょっとするかもしれませんが、パーキンソン病やうつ病、強迫性障害といった疾患に対し、脳に磁気を利用して電気刺激を与える治療法が実際に行われています。新たな臨床試験では、脳に電気刺激を与える治療法がわずか10日間でうつ病(大うつ病性障害)の治療に大きな効果をもたらすことが示されました。

Intermittent Theta-Burst Stimulation and Depressive Symptoms in Major Depressive Disorder: A Randomized Clinical Trial | Medical Devices and Equipment | JAMA Network Open | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2851350

Non-Invasive Brain Stimulation 'Significantly' Improves Depression in Just 10 Days, Trial Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/non-invasive-brain-zapping-improves-depression-in-just-10-days-trial-finds

経頭蓋磁気刺激治療(TMS)」は磁場をパルス状に連続発生させるコイル装置を患者の頭部に当て、頭蓋骨内部まで磁場を到達させ、発生した電流で脳神経細胞に働きかけるという治療法です。TMSは標準的な標準的な治療での効果がみられないうつ病患者に対し、迅速な治療効果をもたらすとされています。

TMSで刺激されるのは、背外側前頭前野(DLPFC)というワーキングメモリ・認知的柔軟性・計画・抑制・抽象的推論などの実行機能にかかわる部位です。脳の血流や酸素代謝の解析から、うつ病患者様の多くでは脳の左前方のDLPFCの活動性が低下し、右前方のDLPFCの活性は増加していることが知られています。

TMSではうつ病患者の脳で抑制されている左側のDLPFCを活性化するか、異常に興奮している右側のDLPFCを抑制することで脳のネットワークを整えるとのこと。また、TMSの手法にも複数あり、1秒間に10回(10Hz)の頻度で規則正しく刺激する「rTMS(反復経頭蓋磁気刺激法)」や、1秒間に50回(50Hz)の高頻度で不規則に行う「iTBS(間欠的シーターバースト刺激法)」などがあります。


今回、ノルウェー北極大学(トロムソ大学)の研究者が率いる研究チームは、1日1回のiTBSがうつ病患者に与える効果について調べる臨床試験を行いました。すでにiTBSはうつ病患者の治療に使われていますが、今回の臨床試験では「本人はiTBSを受けたと思っているが実はそうではない対照群」を用意し、治療効果より正確に測定したとのこと。

実験には22~65歳のうつ病患者73人が参加し、このうち41人は標準的なiTBS装置による治療を受け、残る32人は見た目は同じですが磁場が脳に到達しない「偽の装置」を装着しました。偽の装置は磁場を発生させるコイルの巻き方が異なっているほか、内部シールドによって磁場が弱められていましたが、頭部に感じる圧力やノック音は実際のiTBS治療と同じでした。


5日間および10日間の治療を受けた後、本物のiTBS治療を受けた被験者は対照群と比較して、臨床医との面談に基づくうつ病スコアが著しく改善したことが判明。しかし、自己申告による症状にはほとんど差が見られなかったそうです。

また、治療開始から4週間後に行われた追跡調査では、本物のiTBS治療を受けた実験群の臨床的なうつ病スコアは横ばいを維持しており、対照群も平均して同程度の改善を示したことがわかりました。

以下のグラフは縦軸がうつ病スコア、横軸が実験開始からの期間を示しており、濃い赤色がiTBSの治療群を、ピンク色が偽の装置を使った対照群を表しています。治療開始から10日後の時点では明らかに対照群の方がうつ病スコアが高くなっていますが、実験開始から4週間後の時点ではスコアの改善が収束していることが見て取れます。


研究チームは今回の結果について、「偽刺激群における症状の大幅な軽減は、偽TMSが生理学的に不活性ではなく、期待感・感覚・状況的影響などの非特異的な要因が、症状の改善に寄与している可能性があるというこれまでの証拠と一致します」と説明しています。科学系メディアのScienceAlertは、「今回の改善の要因は明らかではありませんが、治療を受けているという心理的な安心感が被験者にいい影響を与えた可能性があります」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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