将来の量子コンピューターに役立つ可能性を秘めた「量子スピン液体」の候補となる鉱物が廃鉱山から大量に見つかる

量子コンピューターは量子情報の最小単位である量子ビットを利用して計算するコンピューターで、従来のコンピューターでは不可能な計算を実行することが可能です。そんな量子コンピューターに役立つ可能性を秘めた「量子スピン液体」の候補となる鉱物が、南米・チリの廃鉱山で大量に見つかったと報告されています。
Ultra-Pure Quantum Crystals from an Abandoned Mine in the Atacama Desert | by Aaron Breidenbach | Medium
https://medium.com/@breid.at/ultra-pure-quantum-crystals-from-an-abandoned-mine-in-a-mysterious-desert-93cc87d12314
Why the “Silicon of Quantum Computing” is Being Destroyed en masse in the Atacama Desert | by Aaron Breidenbach | Medium
https://medium.com/@breid.at/why-the-silicon-of-quantum-computing-is-being-destroyed-en-masse-in-the-atacama-desert-41d3a9b823bf
アーロン・ブライデンバッハ博士はスタンフォード大学の博士課程で、ハーバートスミサイトや亜鉛バーロウ石という鉱物の結晶について研究していた人物です。これらの鉱物結晶は、素粒子や複合粒子のスピン角運動量(スピン)が量子液体の状態をとる「量子スピン液体」の候補材料だとのこと。
量子コンピューターの課題として挙げられるのが、熱や磁場といったノイズに弱く、計算中にエラーが起きやすいという点です。量子スピン液体はノイズへの耐性が高いことから、量子スピン液体の結晶を使用することで高い耐障害性を持つ量子コンピューターが実現できるのではないかと期待されています。
量子スピン液体の候補材料であるハーバートスミサイトの結晶は実験室で作成できますが、準備に丸1週間、完全に成長させるまで9カ月もかかるとのこと。また、作成プロセスの習得には多くの訓練が必要なほか、1万ドル(約160万円)を超える設備費や、1~2gのハーバートスミサイトを作成するのに約100ドル(約1万6000円)の化学物質が必要であり、成功確率も約45%に過ぎません。
しかし、ハーバートスミサイトはアメリカのアリゾナ州やチリ、イランなどに天然鉱物として存在していることもわかっています。そこでブライデンバッハ氏はチリの研究者らの助けを借りて、アンデス山脈と太平洋の間に広がるアタカマ砂漠にハーバートスミサイトを探しに行きました。
その結果、すでに廃鉱山となっているサンフランシスコ鉱山の廃棄された岩石から、大量のハーバートスミサイトが発見されました。以下の写真は、ブライデンバッハ氏らが天然のハーバートスミサイトを発見したサンフランシスコ鉱山。

1つの岩石から発見されたハーバートスミサイトを並べた写真が以下。ハーバートスミサイトは淡緑色~青緑色の結晶で、目視では少なくとも100gのハーバートスミサイトが含まれていると推定されています。これは、スタンフォード大学でブライデンバッハ氏が6年間かけて作成してきた量の少なくとも10倍はあるとのこと。

高品質なハーバートスミサイトをクローズアップした写真がこれ。なお、ブライデンバッハ氏らがこれらのハーバートスミサイトを掘るのに使ったのは、地元の鉱山用品店で買った15ドル(約2400円)のツルハシ2本だけだったそうです。

サンフランシスコ鉱山で見つかった結晶は、実験室で作成されたものよりも純度が高いことも判明しています。ブライデンバッハ氏が、ハーバートスミサイトの天然結晶が人工物よりも純度が高いことについて話すと、一部の人は懐疑的な表情を浮かべるとのこと。多くの人々は、「自然物が人工物より高い純度を示すなんて都合がいい話があるのだろうか?」と考えているのです。
自然界の結晶が人工物よりも高い純度を示す理由についてブライデンバッハ氏は、「自然は単に、私たちが実験室で行うよりもたくさんの試行錯誤を重ねてきたのです。まるで猿の群れがタイプライターを打っているようなものです」と述べました。
今回サンフランシスコ鉱山で見つかったハーバートスミサイトは、量子スピン液体や量子コンピューターに関する今後の研究において、非常に有用なものになる可能性を秘めています。しかし、付近の銅鉱山では大量のハーバートスミサイトが「低品位の銅鉱石」として廃棄され、スクラップにされてしまっている可能性があるとのこと。
ブライデンバッハ氏は、「実験室でこれらの結晶を人工的に作るには9カ月かかります。これほど残酷な皮肉は他にないでしょう。この結晶は低品位の鉱石などではありません!これは魔法のような量子材料であり、毎年数百万ドル(数億円)もの税金が研究に投じられているのです!それなのに、ただのスクラップとして廃棄されてしまうのです」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article Large quantities of minerals that could ….







