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リチウムイオンバッテリーを長持ちさせる方法


リチウムイオンバッテリーは、鉛蓄電池などの他の化学電池に比べて多くの面で優れており、衛星の動力源や電気自動車(EV)など幅広い分野で利用が広がっています。一方で、充放電の繰り返しや温度、経年によって性能は低下します。カナダの家電量販店・Cadex Electronicsが運営するバッテリーについての情報サイト「Battery University」、リチウム系バッテリーを長持ちさせるための考え方を、実測データを交えながら解説しています。

Battery University | BU-808: How to Prolong Lithium-based Batteries
https://www.batteryuniversity.com/article/bu-808-how-to-prolong-lithium-based-batteries/

メーカーは一般に消費者向け製品のリチウムイオンバッテリーの寿命を保守的に見積もっており、300〜500回程度の放電/充電サイクルを想定することが多いとされています。用途側の要求も幅があり、小型のウェアラブルデバイスでは約300サイクル、スマートフォンでは800サイクル以上が求められ、EVでは「100万マイル電池」が約5000サイクルに相当するという議論も紹介されています。

ただし、放電する量が一定とは限らず、何を1サイクルと数えるかの明確な標準もないため、サイクル回数だけで寿命を評価するのは決定的ではありません。使用状況を見ずに日付で交換を促す方式も、負荷や温度条件によっては早期に不具合が出たり、逆に長く使えたりするため、使用実態を反映しにくいとされています。


寿命を大きく左右する要因の1つが、1回の充放電サイクルで放電した容量の割合を示す「放電深度(DoD)」です。リチウムイオンバッテリーにはメモリー効果がないため、定期的に完全放電する必要はなく、むしろ高い放電深度を避けることが推奨されています。ただし例外として、スマートバッテリーやインテリジェントデバイスでは残量表示の精度を維持するために定期的なキャリブレーションが必要になる場合があるとのこと。

ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)を正極材料に用いたリチウムイオンバッテリーでは、100%DoDで約300サイクルですが、DoDを40%に抑えると約1000サイクル、20%で約2000サイクル、10%で約6000サイクルまで伸びる傾向が示されています。リン酸鉄リチウム(LiPO)バッテリーではさらに顕著な傾向が見られます。


温度と充電状態も重要です。Battery Universityは、30℃を超える環境を高温とし、また高い充電電圧での滞留もストレスになると説明しています。1年間の保管テスト例では、0℃で40%充電は容量維持率98%、100%充電は94%でした。25℃では40%充電が96%、100%充電が80%となり、40℃では40%充電が85%、100%充電は65%まで低下します。さらに60℃では40%充電でも1年後に75%となり、100%充電では3か月で60%まで低下したとされています。高温下で満充電状態を維持することは、充放電サイクルの繰り返しよりも大きな負荷になり得る、という指摘もあります。

充電電圧の設定も寿命とトレードオフになります。多くの消費者機器は稼働時間を最大化するため4.20V/cellまで充電しますが、安全上の理由から多くのリチウムイオンバッテリーは4.20V/cellを超えられないとされています。電圧を上げれば容量は増えますが、過電圧は寿命を縮め、安全性を損なう可能性もあります。たとえば、4.35Vでは通常のリチウムイオンバッテリーのサイクル数が半減するそうです。


一方で、ピーク充電電圧を下げると寿命は延びます。4.20V/cellで300〜500サイクル程度の条件が、4.10V/cellでは600〜1000サイクル、4.0V/cellでは1200〜2000サイクル、3.90V/cellでは2400〜4c000サイクルという目安が示されています。長寿命の観点で最適な充電電圧は3.92V/cellだとされ、電圧起因のストレスをほぼ排除できるとのこと。ただし、低いピーク電圧はバッテリーが蓄えられる容量を減らします。簡易的な目安として、充電電圧を70mV下げるごとに全体容量が約10%下がるとされ、次の充電でピーク電圧まで充電すればフル容量に戻ると説明されています。また、部分充電を重ねる運用は、リチウムイオンバッテリーの利点である高い比エネルギーという観点ではメリットを打ち消す側面があると注意されています。


電圧の扱いでは、満充電の上限に長時間置かないことも推奨されています。一般的なリチウムイオンバッテリーでは、用途に応じて適切な電圧しきい値を選ぶだけでなく、4.20V/cellの高電圧上限に長く留めない方がよいとされています。

運用上の帯域幅の考え方として、産業用機器やEVでは寿命を延ばすために充電を85%に制限し、放電を25%で止めるといった運用が行われるとのこと。この場合はおよそ60%分を使うことになり、利用可能なエネルギーと寿命のバランスを取る設計です。

結論としてBattery Universityは、寿命を延ばすには深い放電を避けること、高温と高い充電状態の組み合わせを避けること、用途に応じてピーク電圧と利用帯域を設計し、稼働時間と寿命のトレードオフを意識して運用することが重要だと示しました。

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in ハードウェア, Posted by log1i_yk

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