なぜ金星は月の次に明るく見えるのか?

夜明け前や夕暮れの空で、月の次に強い光として目に入りやすいのが金星です。科学系メディアのLive Scienceは、金星が月を除けば夜空で最も明るい天体として目立つ背景には複数の要因が重なっていると説明しています。
Why is Venus so bright? | Live Science
https://www.livescience.com/space/venus/why-is-venus-so-bright

国際天文学連合(IAU)の「暗く静かな空間保護センター」の研究者であるアンソニー・マラマ氏はLive Scienceに対し、「金星は1等星より約100倍明るい」と述べました。天文学で使う等級は数値がより負になるほど明るく、1等星の中でも明るいシリウスの視等級は-1.47、金星は-4.14です。この2.67等の差は、明るさにすると約12倍に相当します。また、1等星の中で最も暗いとされるレグルスの視等級は1.35。レグルスと金星の明るさを比較すると約157倍となります。
「なぜ金星はこれほど明るく見えるのか?」という点について、Live Scienceは主な理由として以下の5点を挙げています。
1つ目は「金星の反射率が非常に高い」ことです。アメリカ・ウィスコンシン大学マディソン校の宇宙科学工学センターに所属する科学者であるサンジャイ・リマイ氏の説明によると、金星のアルベド(反射率)は0.76で、受け取った太陽光の約76%を反射するとのこと。なお、完全な鏡は太陽光を100%反射し、地球は約30%、月面は約7%しか反射しないそうです。

2つ目は「反射率の高さを生む厚い雲がある」ことです。金星が高い反射率を持つ背景には地表から約48km~70km上空に広がる雲の層の存在があります。リマイ氏によるとこの雲は主に硫酸の微小な液滴で構成されており、液滴は細菌ほどのサイズとのこと。こうした液滴が太陽光を効率よく散乱させるため、金星は強く輝いて見えるそうです。
3つ目は「地球に比較的近いことと距離が大きく変わること」です。金星と地球の平均距離は約1億7000万kmであり、平均距離だけで見ると水星が地球に最も近い惑星になる場合もあります。それでも金星は水星より大きく、同じ距離ならより多くの光を反射して明るく見えるとのことです。
ただし、金星と地球の距離は一定ではありません。金星が地球と太陽の間に入る「内合」では地球からの距離が約3800万kmまで縮まるとNASAは説明していますが、内合付近の金星は極端に暗く見える場合があるとされ、国立天文台も内合の頃の見え方に触れています。

4つ目は「位置関係によって照らされた面の見え方が変わること」です。Live Scienceはその理由として、内側惑星は地球から見ると月のように満ち欠けして見えるためだと説明しています。リマイ氏によれば、内合では金星の照らされた面が地球から完全に見えなくなる一方で、地球と金星が太陽を挟んで反対側に並ぶ「外合」では照らされた面の多くが見えるものの、その時の金星は地球から非常に遠く、見かけのサイズが最小になって暗く見えるとのことです。
5つ目は「雲が光を地球方向へ散乱させて明るさを押し上げる可能性があること」です。Live Scienceは、マラマ氏が共同執筆した2006年の研究を取り上げ、金星の雲にある硫酸の液滴が太陽光を地球方向へ散乱させる可能性に触れています。マラマ氏はこの雲が光を地球方向へ散乱させる現象を「グローリー」と呼び、虹と同じ光学効果の一種だと説明しました。
なお、金星より土星の衛星であるエンケラドゥスの方がアルベドが高いのですが、金星の方が太陽に近く受ける光が強くなるため、地球から見れば金星の方がはるかに明るいとのこと。

こうした反射率・距離・位相の変化が組み合わさることで、金星の視等級は-4.92から-2.98の範囲で変化する可能性があるが、それでも都市部からでも年間を通して観測できるほどの明るさだとLive Scienceはまとめています。
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in サイエンス, Posted by log1b_ok
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