金星の生命体は「雲の中」に住んでいるかもしれないとの主張、数年以内に生命体の存在がはっきりする可能性も
地球と大きさや密度が近いことから「地球の双子」と呼ばれる金星には、「酸性の雲を中和して住みやすい環境にしながら生きている生命体がいるかもしれない」との論文が、アメリカ科学アカデミーの機関誌であるPNASに掲載されました。
Production of ammonia makes Venusian clouds habitable and explains observed cloud-level chemical anomalies | PNAS
https://www.pnas.org/content/118/52/e2110889118
Alien Life? Acid-Neutralizing Life-Forms Could Make Habitable Pockets in Venus’ Clouds
https://scitechdaily.com/alien-life-acid-neutralizing-life-forms-could-make-habitable-pockets-in-venus-clouds/
マサチューセッツ工科大学の惑星科学者であるサラ・シーガー教授らの研究チームは2020年9月に、金星の大気にホスフィンと呼ばれるガスが存在しているとの研究結果を発表しました。地球にも存在するホスフィンは主に生物の活動によって合成されていることから、金星に生命が存在する可能性を一気に高めたこの発見は「地球外生命体探査の歴史の中で最も大きな進展」と評価されています。
地球外生命体探査史上「最大」の進展、金星の大気に生命の痕跡 - GIGAZINE
また、金星にはホスフィンと同様に生命活動によって合成される化学物質であるアンモニアが存在することも分かっています。金星のアンモニアは1970年代に発見されたものですが、金星で発生しうる既知の化学的プロセスでは説明がつかないことから、生命によって生み出されたものだとする説もあるとのこと。
しかし、金星は400度以上にもなる高温の地表や硫酸でできた強酸の雲に覆われた大気など、生命にとっては過酷な環境を持つため、金星に生命が存在する可能性には疑問の声も少なくありません。そこでシーガー教授らの研究チームは、過去の金星の観測記録を精査して、これまで見落とされてきた金星の生命の兆候を探す研究を行いました。その結果、金星には酸素や水などの物質が従来の想定より多く存在していることが分かりました。
こうした手がかりを元に、研究チームが一連の化学プロセスをモデル化したところ、「金星の大気にアンモニアを合成する生物がいる場合、自然と酸素も発生する」ことが判明しました。また、アンモニアが硫酸の液滴に溶けると酸が中和され、酸性の雲が比較的生命に適した状態になるとの結果も得られました。今回の研究結果は、金星に生命がいることを裏付けるものではありませんが、金星に生命がいると仮定すれば未解明の謎の多くを説明可能な上に、金星に生命が存在しやすい環境ができることを示すものです。
研究結果についてシーガー教授は、「地球上にも生命が存在する非常に酸性度が高い環境がありますが、金星はこれよりさらに厳しい場所です。しかし、生命がその酸性の環境を中和しているとすれば話は別です」「金星は本来アンモニアが存在するはずがないので、おのずと生命の存在が疑われます。このように、金星には未解明の謎がまだ残っており、生命が存在しうる可能性を秘めています」と話しました。
シーガー教授は、2023年から複数回に分けて金星に探査機を送り生命を探す民間プロジェクト「Venus Life Finder Missions」の主任研究員を務めており、早ければ今後数年以内に金星に生命がいるかどうかが分かると期待されています。
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