サイエンス

新しいテクノロジーを使う高齢者は認知症や認知機能低下のリスクが低いという研究結果


検索エンジンやSNSなどの便利なテクノロジーが発達する中で、「テクノロジーに依存しすぎると脳を使わなくなって認知機能が低下する」と主張する人もたびたび見られます。ところが、50歳以上の中高年を対象にした新たな研究では、スマートフォンやSNSといったテクノロジーを使用する高齢者ほど、認知症や認知機能低下のリスクが低いことが示されました。

A meta-analysis of technology use and cognitive aging | Nature Human Behaviour
https://www.nature.com/articles/s41562-025-02159-9


Digital Dementia: Does Technology Use by ‘Digital Pioneers’ Correlate to Cognitive Decline? | Media and Public Relations | Baylor University
https://news.web.baylor.edu/news/story/2025/digital-dementia-does-technology-use-digital-pioneers-correlate-cognitive-decline

Technology Use Linked to Better Brain Health in Older Adults - UT Austin News - The University of Texas at Austin
https://news.utexas.edu/2025/04/14/technology-use-linked-to-better-brain-health-in-older-adults/

Using Tech as You Get Older Could Reduce Your Risk of Dementia : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/using-tech-as-you-get-older-could-help-reduce-your-risk-of-dementia

青年期にコンピューターやインターネットといったデジタル技術が普及した世代も、記事作成時点では50~60代にさしかかり認知症リスクが高まりつつあります。そんな中、科学者らは「デジタル技術の使用と認知症リスクの増加に関連性はあるのか」という疑問を投げかけているとのこと。


現代社会では、さまざまな事柄や言葉についてわからないことがあっても、インターネットで検索すればすぐに答えが得られます。また、SNSや動画サイトを見ればいつでも多種多様なコンテンツが流れてきて、簡単に刺激や快楽を得ることが可能となっています。これらのテクノロジーに依存した状態が続くと、認知能力が低下してしまうのではないかと懸念する人もいます。

アメリカのベイラー大学で心理学および神経科学の准教授を務めるマイケル・スカリン氏は、「どの日のニュースを見ても、テクノロジーがいかに私たちに害を及ぼしているのかが語られています。人々はよく『brain drain(頭脳流出)』や『brain rot(ブレインロット・脳腐れ)』といった言葉を使いますが、今では『digital dementia(デジタル認知症)』という言葉も現れました。研究者として、私たちはこれが真実かどうかを知りたかったのです」と語っています。


そこでスカリン氏と、テキサス大学オースティン校の神経心理学者であるジャレッド・ベンジ博士の研究チームは、50歳以上の中高年41万1000人以上を対象にした合計57件の先行研究データを分析し、デジタルテクノロジーの使用と認知症や認知機能の低下についての関連性を調査しました。

統計分析の結果、テクノロジーを活用する人は認知障害リスクが58%低いという相関関係がみられることがわかりました。また、テクノロジーを使う50歳以上の人々は、時間経過と共に生じる認知機能の低下率が26~34%も低いことが示されました。

今回の研究はあくまで関連性を調べたものであり、直接的な因果関係を示したものではありません。さらに対象となった各研究では異なるアプローチが使用されており、テクノロジーの使用としてスマートフォンに着目したものもあれば、SNSの使用に着目したものもあったとのこと。それでも、テクノロジーの使用と認知機能低下のリスク軽減の関連性は、職業・教育・社会経済的地位といった要因を考慮しても維持されたと報告されています。

テクノロジーが認知機能を維持するメカニズムとしては、「社会的なつながりの維持」にテクノロジーが役立っている可能性が挙げられています。ビデオ通話やメール、メッセージングアプリなどのテクノロジーは、人々のコミュニケーションやエンゲージメントを促進するため、高齢者が社会や家族とつながるのをサポートして孤独感や孤立を減らしてくれるというわけです。

また、認知症の診断は認知機能の低下によって日常生活が困難になった場合に下されますが、スマートフォンやPCのリマインダー機能、GPSナビゲーション、オンラインバンキングといったテクノロジーにより、高齢者の認知機能が多少低下しても自立して暮らしやすくなっている可能性もあります。研究チームはテクノロジーが果たすこの役割を、「digital scaffolding(デジタル足場)」と呼んでいます。


ベンジ氏は、「一部の人々が恐れていたような『デジタル認知症』を引き起こすどころか、教育・収入・身体的健康を考慮した後でも、テクノロジーへの関与は一貫して脳の健康改善に関連していました」「私たちのデータは特に認知的な問題に挑戦し、つながり、補うことをサポートするような方法で、高齢者にテクノロジーとの関わりを推奨することが、認知的健康を促進する強力なアプローチになり得ることを示唆しています」と述べています。

スカリン氏は、「テクノロジーから遠ざかっている親や祖父母がいるなら、もう一度見直してみてはいかがでしょう。スマートフォンやタブレットで写真やメッセージ、カレンダーのアプリを使えるようにはならないでしょうか。簡単なものから始め、辛抱強く教えてあげましょう」とアドバイスしました。

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in モバイル,   ネットサービス,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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