サイエンス

「退職して年金生活に入ると認知機能が急激に低下する」という研究報告

by sabinevanerp

少子高齢化が進む社会では従業員の定年引き上げが進んでいて、日本政府は65歳定年制を超えた「70歳定年制」も視野に入れていることが報じられています。定年退職した後は国民年金や企業年金を受給しながら生活を送るのが一般的ですが、「仕事を辞めて年金生活に入ると認知機能が急激に低下する」という研究が報告されています。

Do Pension Benefits Accelerate Cognitive Decline? Evidence from Rural China | IZA - Institute of Labor Economics
https://www.iza.org/en/publications/dp/12524/do-pension-benefits-accelerate-cognitive-decline-evidence-from-rural-china


If You Rest, You Rust? Study Finds Early Retirement May Speed Up Cognitive Decline
https://www.studyfinds.org/if-you-rest-you-rust-study-finds-early-retirement-may-speed-up-cognitive-decline/


中国では平均寿命が過去数十年で着実に伸びており、出生率も低下していることから、中国社会は少子高齢化が急速に進んでいると指摘されています。そこで、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の研究チームは、早期退職と年金給付が60歳以上の成人の認知能力に与える影響を調査するため、中国の新しい農村年金制度とそれによって増加する高齢層の退職についての縦断調査を分析しました。


研究チームによると、仕事を引退して年金給付を受けている人は、60歳を超えても仕事を続けている人よりも急速に認知能力が衰退する傾向が見られたとのこと。また、男性よりも早期に退職する傾向のある女性にも急激な認知能力の衰退がみられたと研究チームは報告しています。結果として「精神活動の減少が認知機能の低下を加速させる」という仮説を、研究チームは支持しています。

論文著者で経済学者のプラメン・ニコロフ准教授は「年金受給プログラムが提供されている地域の住民は、提供されていない地域の住民よりも認知機能がかなり低下していました」と報告し、「年金受給プログラムが実施されてから10年間で、住民の記憶力や認知能力は標準偏差のおよそ5分の1も低下しました」と主張しました。

また、ニコロフ准教授は退職することで睡眠や栄養状態が向上することは認めながらも、「高齢者の認知については、社会的関与に対するマイナスの影響が、栄養や睡眠の向上によるプラスの影響よりもはるかに大きいように思われます」「社会的関与は、老年期の認知能力にとって最も重要なものの1つかもしれません」と述べました。

by FuSuSu

研究チームは「今回の研究結果が、個人にとって退職を考える時の参考になればいい」と述べていますが、科学系メディアのStudy Findsは「この研究結果は、発展途上国の政策立案者が新しい年金制度を策定する際に重要視されるべきだ」としています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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