高齢者がスマホを使いこなせるようになるには一体どうすればいいのか?
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スマートフォンの普及に伴い、いまや高齢者も当たり前のようにスマートフォンを所持しています。しかし、高齢者の多くがテクノロジーを使いこなすのに悪戦苦闘しているというのが現状です。そこで、「高齢者がテクノロジーを使いこなせるようになるにはどうすればいいのか?」を、ロイヤルメルボルン工科大学の専門家がまとめました。
Seniors struggle with technology, and often their kids won't help
https://theconversation.com/seniors-struggle-with-technology-and-often-their-kids-wont-help-130464
スマートフォンの普及率に焦点を当てた(PDFファイル)2016年~2017年の調査によると、オーストラリアの中高年がスマートフォンを所持している割合は、55~64歳では82%、65~75歳では78%に上ることが判明しています。しかし、高齢者らのスマートフォンの習熟度を調べた別の研究では、多くの高齢者が「デジタル機器の使用に自信がない」ことが判明しました。
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そこで、ロイヤルメルボルン工科大学でマーケティングについて研究しているTorgeir Aleti氏は、高齢者がデジタル機器の使用中に困った際、誰に助けを求めるかを尋ねるアンケートを実施しました。その結果、高齢者のうち44%が「まずは成人した子どもに助けを求める」と答えたとのこと。しかし、子どもにデジタル機器の使い方を尋ねた高齢者の多くが、「子どもは忍耐強く使い方を教えてくれないし、そもそも教える意欲もないと感じる」と答えたそうです。
また、高齢者の一部は「1人ではなにもできない機械音痴だと思われたくない」という理由や、子どもとけんかしてしまって家族間に不和を生じさせたくないとの考えから、子どもにデジタル機器の使い方を尋ねるのを避けていました。こうした結果についてAleti氏は「デジタルネイティブではない人が、日進月歩の技術や新しいアプリの使い方を教わるのは、多くの気苦労を伴うようです」とコメントしました。
子ども以外の選択肢としては、高齢者の15%が「プロのアドバイザー」、13%が「配偶者」、8%が「友人」と回答しましたが、配偶者や友人もまた高齢な場合が多いので、大抵のアドバイスはあまり役立たなかったとのこと。また、電気店などにいるアドバイザーは隙あらば商品を買わせようとするため、高齢者はアドバイザーに教えてもらうことをあまり快く思っていませんでした。
高齢者が頼った人の中で、最も満足度が高かったのが「孫」でした。アンケートで「孫にデジタル機器の使い方を尋ねる」と答えたのはわずか7%でしたが、実際に孫を頼った高齢者は「孫は喜んで使い方を教えてくれる」「『泳ぎ方をレッスンする』などの交換条件でデジタル機器の使い方を教えてくれる」とコメント。デジタル機器の使い方を身に付けられる上に、孫ともふれあえて一石二鳥とのことでした。
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しかし、実態を詳しく掘り下げると、「孫は祖父母が使い方を覚える間もなく、勝手にデバイスを操作して問題を解決してしまう」という傾向があることも判明。Aleti氏の調査は結局、「高齢者にデジタル機器の使い方を教えるのに適任な人はいない」という結論に落ち着きました。
そこで、Aleti氏は高齢者を身近に持つ人に対して、次のようなアドバイスを送っています。
◆YouTubeのリンクを送る
Aleti氏によると、YouTubeの解説ムービーは、高齢者にデジタル機器の使い方をレクチャーするのに最適だとのこと。アンケートに答えた77歳のピーターさんは「YouTubeアプリだけあればYouTubeを観られるし、一時停止したり巻き戻したりもできるので、自分のペースで勉強するのにピッタリです」と答えています。
◆パソコン教室を勧める
地域の図書館や教育機関では、定期的に高齢者向けのパソコン教室が開催されています。Aleti氏は「パソコン教室などでの授業は、高齢者にオープンで社会的な環境でスキルを身に付ける良い機会となります。そのため、高齢者の自立心を維持しつつ、学習に対するプレッシャーを取り除くのに役立つでしょう」と述べました。
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Aleti氏は「私たちが恩恵を享受している最新のテクノロジーデバイスが存在するのは、元はと言えば今の高齢者が情報革命をけん引したおかげです。しかし、急激な技術の進歩は、高齢化社会と相まって、今や深刻な問題となりつつあります」と述べて、高齢者の自立した生活を守るためには、ITスキルを身に付けてもらうことが必要不可欠だとの見方を示しました。
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