富士ソフトを巡るTOBでPEファンド大手・ベインキャピタルが「これ以上の買い付け価格の引き上げは行わずTOBは実施しない」と表明

年賀状印刷の「筆ぐるめ」や業務管理システムなどの法人向けサービスなどで知られる富士ソフトでは非公開化に向けた株式公開買い付け(TOB)が進められており、アメリカの投資ファンド・ベインキャピタルとKKRが激しい買収合戦を繰り広げていました。しかし、2025年2月17日にベインキャピタルが富士ソフトへのTOBを断念することを発表しました。
富士ソフト株式会社株式(証券コード:9749)に対する公開買付けの不実施に関するお知らせ
(PDFファイル)https://www.fsi.co.jp/company/news/2025/20250217_1.pdf

株式会社BCJ-88による当社株券等に対する公開買付けの不実施に関するお知らせ
(PDFファイル)https://www.fsi.co.jp/company/news/2025/20250217_2.pdf
Notice Regarding Non-implementation of Tender Offer for the Shares of FUJI SOFT INCORPORATED (Securities Code: 9749)
(PDFファイル)https://www.baincapital.co.jp/sites/default/files/2025-02/BCP_%209749_17022025-En.pdf
Bain Capital ends acquisition battle with KKR for Fuji Soft | Reuters
https://www.reuters.com/markets/deals/bain-capital-ends-acquisition-battle-with-kkr-fuji-soft-2025-02-17/
2022年6月に取締役会出席者で構成される企業価値向上委員会を設置した富士ソフトは、企業価値の最大化に向けた施策の検討を進める中で、価値向上策の1つとしてプライベートエクイティファンド大手・KKRを含む複数社と協議を開始しました。このとき、株式の非公開化も経営上の選択肢として含まれていたとのこと。2024年8月には、富士ソフトとKKRが株式取得を目指したTOBを1株当たり8800円で実施することに合意。2024年9月4日にTOBがスタートしました。
KKRによるTOBは2024年10月21日に終了する予定でしたが、2024年10月11日に同じくプライベートエクイティファンドのベインキャピタルが1株当たり9450円でのTOB開始を予告しました。一方で富士ソフトの取締役会は金銭的な条件で上回るベインキャピタルによるTOBではなく、KKRによる非公開化提案に賛同し、KKRのTOBへの応募を推奨していました。
富士ソフトを巡るTOBで取締役会はPEファンド大手・KKRの提案を受け入れる方針も創業者は反対し価格の高いベインキャピタル案に賛同 - GIGAZINE

こうしてKKRとベインキャピタルによる富士ソフトをめぐる買収競争が始まりました。2024年11月にはKKRがTOB価格を1株当たり8800円からベインキャピタルの提示額を上回る(PDFファイル)9451円に引き上げたことを受け、富士ソフト側はKKR案への賛同意見を改めて表明し、株主に応募を推奨。対照的にベインキャピタル案に対しては反対意見を表明しました。
これに対し、ベインキャピタルは2024年12月11日に1株当たり9600円でのTOB実施案を提示。一方で富士ソフトの取締役会は「ベインキャピタル案にはKKRによる非公開化と比較して企業価値の向上に疑義が残る」としてベインキャピタル案に再度(PDFファイル)反対意見を提示しています。
2024年12月に提示されたベインキャピタル案は富士ソフトからの賛同を前提条件としない、いわば「同意なき買収」でした。そのためベインキャピタルは、2025年2月5日のTOB開始に向け資金の確保や公開買い付け代理人の決定などの準備を進めていました。
そんな中、2025年2月4日にKKRが買い付け価格を(PDFファイル)1株当たり9850円に引き上げました。これを受け、ベインキャピタルは「本TOBの実施を撤回することも選択肢に含め、今後の方針について慎重に検討を行う」との声明を発表。富士ソフトはベインキャピタルに対し、方針の決定時期を明確にすることを要請していました。
(追加)株式会社BCJ-88による当社株券等に対する公開買付けの状況に関するお知らせ
(PDFファイル)https://www.fsi.co.jp/company/news/2025/20250210.pdf

そして2025年2月17日にベインキャピタルは富士ソフトに対するTOBの不実施を発表しました。リリースの中でベインキャピタルは「富士ソフトの創業者である野澤宏氏と相談の上、富士ソフトおよび富士ソフトの株主の皆さまの利益も熟慮し、その後の対応方針を検討していましたが、本公開買い付けにおける株式買い付け価格のこれ以上の引き上げを行わず、本公開買い付けを実施しないとの結論に至りました」と述べています。
また、ベインキャピタルは「富士ソフトによる非公開化検討プロセスの公正性や本公開買い付けの検討体制を含む富士ソフト側の対応に対する疑念を抱いています」と指摘する一方で「今後新たな株主の主導により刷新されるガバナンスの下での、富士ソフトのさらなる成長を願っています」とコメントしました。
なお、記事作成時点で富士ソフトならびにKKRはコメントを発表していません。
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in メモ, Posted by log1r_ut
You can read the machine translated English article In a takeover bid for Fujisoft, Bain Cap….